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普賢のまわりの人たち
台風一過
嵐の夜に迷子になった天化くんと、心配するコーチ。一緒に探す太乙さんと普賢さんの話。
「天化、来ていないか」
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昨日よりはあかるい朝だった。どうやら嵐は終わりに近づいているらしい。道徳はまた何も言わずに出ていった。道には、木から引きちぎられた葉が積もっているが、その上を跳ねるように駆けていく。
入れ替わりに普賢がやってきた。
「いろいろ試してみたけれど、宝貝にはなにも映らなかったんだ」と残念そうではあったが、小雨になるのを待って探しに来てくれたらしい。
風は生暖かく、それでも晴れのすがすがしさが混じっていた。峠は過ぎた。あとはその子がパニックになってやみくもに歩き回ったりしていないことを祈るだけだ。
道徳が天化を見失ったのは、乾元山に入って最初の坂道の三分の一あたりの場所だといった。
「こういうときは、坂を降りるんじゃなく、上へ行くと思うんだ」
厚い雲の隙間の青空に目を細めながら、普賢が言う。
「このあたりって雨が降ると、道幅いっぱいにすごい勢いで水が流れるでしょう。このまま押し流されちゃうんじゃないかって、怖くなるんだよね」
「へえ。そんなこと、よくわかるね」
そりゃあね、と普賢は苦笑した。
「昔、望ちゃんとよく遭難しかけたから」
さんざん道徳が探しただろう道を、何度も二人で上り下りした。水浸しの薮をかきわけ、泥に足を踏み入れ、木の根や岩場まで覗き込む。危険な場所は少ないが、あれだけの雨なのだから、下草に足を取られていないとも限らない。どこかで倒れていないか、うずくまっていないか、念入りに行き来する。最悪、風に吹き飛ばされていた場合にはどうにもならないけれど、それでも痕跡ぐらいは残っているはずだ。踏ん張った足跡、しがみついた木の幹に残った爪痕、そんな小さなものも見逃さぬよう、時間をかけて坂を辿る。
雲の切れ目からようやく顔を出した太陽が、水たまりに光を届かせた。
「太乙、」
嵐の雲がはるか東の空にわたっていくくらい時間が経った頃、すこし離れた繁みで普賢が呼ぶ声が聞こえた。探しはじめた場所のすぐそばで、大きな物体を眩しそうに見上げている。
「ねえ、これって
……
」
「あ、それは、こないだ完成した捕獲ぱおぺ、」
言いかけて、はっと顔を見合わせた。
欲張って機能をつけすぎたのだ。冷暖房完備。ふかふかのソファつき。敵に見つからないことを重視して最新のステルス性能を搭載した。素材にはレーダーには映らない特殊な合金をふんだんに使った。予算オーバーして元始天尊さまに渋い顔をされたのだ。おまけに大きすぎるから、誰にすすめても断られた。せっかく作ったのになあと思いながら、放置しておいた
——
嵐に洗われて、表面にはたくさんの水滴が滑る。やや上の部分に、太乙は両手を触れた。音もなくハッチが開き、その中に、すやすやと寝息を立てる子供がいた。
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