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普賢のまわりの人たち
台風一過
嵐の夜に迷子になった天化くんと、心配するコーチ。一緒に探す太乙さんと普賢さんの話。
「天化、来ていないか」
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夜が明ける前、道徳は何も言わぬままふらりと出ていった。夜中ほどではないがまだ雨は収まっておらず、窓の外、うっすら暗がりの中に、どこかから吹き飛ばされてきたらしい木の枝や得体のしれないものが散乱しているのが見えた。その中を、吹き付ける雨風を避けもしないで駆け下りていく。一睡もしていないはずだが、それどころではないのだろう。昼過ぎにようやく戻ってきたが、隣にはやはり、彼の弟子の姿はなかった。
「普賢に捜索を頼んできた」
ずぶぬれの髪を布で適当に拭いながらぽつりと零した。
「あの子の宝貝なら探せるんじゃないかと」
「なるほど。それで?」
「やってみる、とは言ってくれたが」
難しいんじゃないかなと太乙は思ったが、口には出さなかった。確かにあの宝貝は高性能ではあるけれど、広範囲で生体反応を拾うには雨風が強すぎる。
それでも、思いつく限りの手は尽くしたい、という同僚の胸の内は理解できた。「私も探してみよう」とレーダーの準備をはじめる。
「ねえ、その子ってどんな子?」
耳障りな雨音を聞きながら、太乙は訊ねた。乾元山から青峰山へ、もっと広範囲へとその輪の範囲を広げるが、めぼしいものは写らない。せめて背格好などがわかればと思って訊ねたが、道徳はちらりとこちらを見ただけで、何も言わない。何か食べなよと用意した軽食にも、手を付けた形跡はなかった。
「そんなに心配しなくても。きみの山からここまで、落石の危険はないし、崩れそうな崖もない。どこかにじっとしていれば、明日には探しに行ける」
「
…………
」
「あ、そうそう!」
つとめてあかるく、太乙は言った。
「こないだ、捕獲宝貝が完成したんだけど、欲張っていろんな機能つけたら想定してたより大きくなっちゃってさ。あまりにでかいんでラボには入りきらなくなって、そのへんに放置してあるんだけど、性能には絶対の自信があるのに、でかすぎるという理由でだれも使ってくれなくて、」
「太乙」
低い声が遮った。
「
……
頼む。少し黙っていてくれ」
冷静を装おうとして失敗したひと言だった。これは後悔だ。保護者として、つねに一緒にいるべきなのに、一瞬目を離したすきに見失ってしまった。自分へのふがいなさと見つけられない苛立ち、雨がやまない焦りと、それでもなんとかできたのではないかというもどかしさ、そしてどこに持って行っていいかわからない感情を押さえつけて、それでも手の指からこぼれ出てしまうほどの心配。
「大丈夫。このレーダーは、普賢の宝貝より精度が高いんだ」とだけ付け加えた。
気休めにはならないだろうけれど、それでも何もせずにいられないなら、こちらもそれに付き合うだけだ。
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