せっかく誕生日なんだからお祝いに自分にうちよその現パロを贈ろうの回(タイトル未定)

2年前くらいからある設定をようやく書き起こしてみた。いつものうちよそオスラッテをベースにしていますが、がっつりとした現パロのため捏造多数あります、ご注意ください。





「社長、次の会議の前に一つよろしいでしょうか」
「ん、なんだ?」
「先程総務から社長宛てのお荷物を預かったのですが、この大量の唐辛子味のお菓子の数々は一体どういうことでしょうか」
「いやあ、新作のスナックが出たって聞いたからまとめ買いしちゃった」
「買わないでほしいとは言いませんが、先日の健康診断で胃が荒れ気味だとお医者様から注意を受けたばかりでしょう。私としてはもう少し自身を気遣ってくださると嬉しいのですが」
「大丈夫、合間合間でちょっとずつ食べるから。前みたいに一袋ガッと食べたりはしないって」
……そうですか」
 お菓子の入った段ボール箱を抱えながら少し不満そうに白い耳を伏せているのは、俺の自慢の秘書であるクルウ・ト・バスドーラだ。
 早期に隠居生活がしたいと希望した義理の叔父からこの会社を引き継いで随分と年月が流れたが、いつもスケジュール調整や来客や電話の対応などをテキパキとこなしてくれる彼のおかげで仕事はとても順調だった。かつて支社で働いていた彼の大変優秀な仕事ぶりに俺は一目惚れをしてしまい、ついあれこれと手を尽くして彼がこちらに来てくれるように強引にアプローチをしてしまった。その結果渋々ながらも彼は来てくれたし、ついでに支社に蔓延っていた悪い奴も成敗できた。あの時のことは本社内では有名で、社員からは俺が支社から人を攫ってきたと言われている始末である。その後は共に仕事をする中で改めて彼の能力を確認し、プライベートで食事に行くことも沢山あったがその後に彼は会話の内容を広めるようなことをしなかった。一度大きなプロジェクトを任せた時にも要領よく仕事をして、トラブルが発生した時にも率先して対処してくれた。そのおかげで業績も順調に伸びており今や彼はここになくてはならない存在となっていた。だからこそ自分が社長になる時に傍にいてほしい人として彼を指名した。最近は業務に関わること以外ではあまり会話をすることはないが、それでも手の届きにくいところまで気配りをして対応してくれる彼をとても信頼している。
「とりあえずその荷物は適当にそこら辺に置いていいから。あとは、そうだな……明日の来客に向けたお菓子も別に用意しないといけないか」
「そちらは既に準備をしてあります。甘いお菓子がお好きとのことでしたのでチョコレートケーキにしました。明日朝一でお店に受け取りに行く予定です」
……ああ、そういえば前回そんなこと言ってたなあ。仕方ない、俺の珈琲は思いっきり濃く淹れておいてくれ、砂糖なしでな」
「承知いたしました」
 彼は返事をしてからせっせと段ボールを社長室の部屋の隅へと運んでいく。その動きに合わせてふわふわと揺れ動く白い尻尾を眺めながら、いいビジネスパートナーを持ったものだとぼんやり思っていた。
 ここ最近は他社との合同プロジェクトが続いており、俺も彼も忙しい日々を過ごしていた。スケジュールは常に埋まっており、進捗に何かしら変化があればそれも大きく崩れていく。それでも彼は仕事や会議の合間を縫って各部署へ連絡をとってくれるし、突然の電話やメールの対応ももれなくこなしてくれる。そのおかげで俺は目の前にある仕事に集中が出来るので本当に助かっていた。そうした彼の行いに俺も社員たちも頼っていたから、いや、頼り過ぎていたからこそ彼が以前のようにオーバーワークになってしまっていることを見落としてしまっていた。



 あれから暫く経って合同プロジェクトは無事に成功のうちに終わることが出来た。社内ではバタバタしていた雰囲気から一変しすっかり落ち着きを取り戻していた。そんなある金曜日の事、いつものように社内全体の定期会議を終えて彼と共に社長室に戻ろうとすると、彼が少し小さな声で話しかけてきた。
「あの、すみません。ちょっと……大至急やらないといけない仕事があるので、少し席を外します」
 はて、大至急やるような仕事がはたして彼にあっただろうか。少なくとも俺はそんな指示はしていないはずだ。どこか気まずそうに俯き、そそくさと離れようとする彼の腕を俺は思わず無意識につかんでしまった。その腕はスーツ越しでも分かるほどに酷く熱く感じられて、思わず俺も驚いてしまう。
……バスドーラ、仕事はいいから今すぐこっちに来い」
「でもっ」
「いいから」
 そのまま強引に彼の腕を引っ張り社長室に連行する。先程まで会議に参加していた周りの社員たちから何事だと不安そうに囁きあう声が聞こえていたがそれは全て無視した。
 社長室に着いてすぐに彼をソファーに座らせた。よくよく彼の顔を見ればいつもよりも赤くなって目も潤んでうっすら隈も出来ている。呼吸も不安定で辛そうな表情をする彼をどうして今まで気づいてやることが出来なかったのだろうか、いや彼が器用に隠していたのか。忙しさにかまけて周りをしっかり見ることが出来ていなかった自分が悔しくて憎い。
「お前、ずっと具合悪いのを我慢していたのか?」
「我慢なんてそんな。私は平気ですよ」
「嘘をつくな、どう見たって発熱してるじゃないか。そんな状態で出勤して会議にも参加して、辛かっただろうに」
「いいえ、そんなことはありません。それに朝はまだ平気でしたし、そもそも体調管理すら出来ていない私の責任です。今日は終業時間まで働けますから」
「ダメだ、今日はもう帰って休め。今からちょうど病院の午後の診療時間も始まるし診てもらってこい」
「いや、嫌です。まだ働けます」
「ダメだと言ってるだろ!」
 彼が頑なに早退を拒むのでつい語気を荒げて怒鳴ってしまう。すると彼はビクリと身体を大きく跳ねさせ、その後にはボロボロと涙を溢しながら途切れ途切れに言葉を口にした。
「だって、おれが、やらなきゃ……っ! しゃ、ちょ、しごと……、まだ……ひうっ!」
「バスドーラ!? すまん言い過ぎた、とにかく一旦落ち着いてくれ……! 俺の声が聞こえるか?」
「う、ぐっ……ひっ!」
 そのまま更に呼吸が不安定になって、ついに過呼吸のようになってしまった。これはやってしまったと後悔しながらも、急いで彼に寄り添って背中を擦ったり呼吸を整えてるように声をかける。暫くしてなんとか一旦落ち着いてくれたが、彼は目を閉じてソファーの背もたれにぐったりと寄りかかる状態になってしまった。明らかに症状が悪化してしまっている。このまま自力で病院に行かせることはとてもじゃないが出来ない。そう判断してからの俺の行動は早かった。すぐにスマホを取り出していくつかの場所に連絡をとり、彼を一旦ソファーの上に寝かせておいた。社員たちにも事情を話してから彼と自分の荷物を自分の車に運び込んだ後に未だにソファーの上でぐったりとしたままの彼を背負って予めシートを倒しておいた助手席に座らせた。その後なるべく彼の体調を気遣いながらも急いで先程予約を入れた病院へと車を走らせた。
 診察中も身体がふらふらとして意識がはっきりとしない彼は医者の質問に少し答えるだけだった。きちんとしたスーツ姿の彼の様子を見た医者から何故仕事を休ませなかったのかと叱られてしまったが、全くもってその通りなので俺も反省しなくてはならない。診断は熱は高いが疲れからくる風邪だろうということだった。解熱剤などの薬を処方してもらってから再び彼を助手席に座らせる。シートを倒してあげると彼はすぐに眠ってしまったのかふうふうと辛そうな呼吸音だけが聞こえてきた。このまま彼の自宅まで送ることも考えたが、確か彼はこちらに来てから変わらずに会社の方で用意したアパートに一人で住み続けているはずだ。やはり今の状態の彼を放っておくわけにはいかないと彼の自宅とは別の方向に、俺の自宅へと車を走らせた。



 俺の家は一見するとどこかの組の建物かと思うほどに大きな日本家屋で、母屋は勿論のこと庭園も離れも存在している。だからといって住んでいるのは怖い人でも何でもなく、俺と義弟のシェイと義妹のウゲツの三人だけ。普段忙しい俺に代わって家の管理は二人がしてくれているので綺麗に整えられている。会社を出る前にウゲツに連絡をとって布団や着替えなど療養に必要なものを揃えてほしいとお願いをしていたが、到着してからそっと彼を再び背負いウゲツに離れの一室に案内されると全て綺麗に用意されていた。
「急だったのに用意してくれてありがとう。看病は俺がするからあとは大丈夫だ」
「でも……、なにかお手伝いすることがあれば言ってほしいです、兄さん」
「ああ、なら彼が起きた時に食べさせたいから粥を作っておいてほしい」
「分かりました、それでは作ってきますね」
 ウゲツが退室した後に俺は彼の着ていたスーツを脱がしてハンガーにかけておき、代わりに以前シェイのために買っておいたがサイズが大きすぎて一度も着ることがなかった服を彼に着せてあげた。一応同じミコッテなので体格的には大丈夫だったようだが、シェイよりも身長が高い彼の身体は心なしか少し痩せているように思えた。
 その後布団に寝かせてあげてから汗を拭いたり定期的に熱を測って様子を見ていたが、やはりすぐには体調は良くならない。熱も三十八度から三十九度の間を行ったり来たりするような状態で回復の兆しは見えていない。彼が起きたらせめて解熱剤を飲ませてあげたいと思って暫く看病を続けていると、ふと彼がうっすらと目を開けていることに気がついた。彼は視点が定まらないままボーっと天井を見ているようだったが、やがて突然身体を起こそうともぞもぞと動き始めた。
「こら、まだ寝てろ」
……なきゃ」
「ん?」
「いか……ないと」
 俺が制止しようとするのを嫌がり、ブツブツと何かを呟きながら彼はまだ動き続けている。先程のように体調が悪化する可能性があるのでなるべく穏便に対処しようと、彼の身体を一度ゆっくりと起こしてから軽く抱きしめて話を始めた。
「行かないとって、何処に行くつもりなんだ?」
「しゃちょ……まって、おれ、やらなきゃ」
「今はやることはないから大丈夫。まずは身体を休めることを最優先にしてくれ」
「でも……、できない。おれ、なにも、まだ……できてない……っ」
「バスドーラ、お前は充分に頑張ったんだから。だから今は休んでいいんだ」
……なら、おれ、すてられ、る?」
「え?」
「なんにも、しないから……やくに、たたなかったから……っ、もう……!」
 彼は再び涙を流してグズグズを鼻をすすりながら泣き始めてしまった。そんな彼を俺はより強く抱きしめながら浮かんだ言葉をそのまま口に出した。
「お前が役立たずなんて、そんなことあるわけない。俺はお前にすごく感謝してるんだ。お前がいなかったらここまで会社を引っ張ってくることなんて出来なかっただろうし、だからどうか、そんなに自分を蔑まないでくれ。今は人一倍頑張って頑張って、頑張り過ぎて疲れてしまっただけだから。それは当たり前のことなのだから、どうかゆっくり身体を休めてほしい。仕事のことは大丈夫だから」
「そう……か、なら……、どうか、おれを……みすて、ないで……っ」
 彼は暫くの間は俺の胸の中で泣きじゃくり続けていたが段々と泣き声は小さくなっていき、やがて規則正しい呼吸音だけに変化していた。先程より熱が上がってしまったのか顔が赤くなり耳を伏せたままだが、寝顔は穏やかだったのでこちらも安心してほっと息をついた。そして彼の言葉を頭の中で反芻しながら今後彼とどう向き合っていくべきかを真剣に考え始めていた。



 あれから数時間後に彼は今度はしっかりと目を覚ました。起きてすぐに辺りを見回した彼は状況をすぐに理解できず混乱した様子で、どうやら先程のことは熱に浮かされていたことによる言動で覚えていないようだった。俺はあえて何があったのか伝えることはせずに、ひとまずは会社で体調を崩して病院を受診しその後看病のためにこちらに連れてきたことだけを伝えておいた。彼は心底申し訳なさそうに何度も何度も頭を下げて謝ってきたが、それよりもまずは身体を治すことに集中してほしいということを繰り返し言い聞かせた。幸いこれで週末に入るので暫くはここでしっかり療養するようにと社長命令を下し、栄養も睡眠もたっぷり補給してもらった結果二日後の日曜日の朝には熱も下がって体調も回復していた。午後には彼の自宅であるアパートまで車で送り届けたが、車内では未だに彼は謝り続けていてこちらが申し訳なく思うほどだった。
「今回の事は配慮に欠けていた俺も悪いと思っている。けれどこれからは少しでも具合が悪いと思ったらしっかり休んでくれ。別に病欠で即クビにしたりするような会社じゃないって分かっているだろう?」
「ええ、それは理解しています。ですが私の体調管理が出来ていないことで社長を始めとして沢山の方にご迷惑をおかけしたことは事実です。家族の方にまで……
「んー……、迷惑だなんて思ってないんだけどな。とりあえず、これからも俺の傍で働いてくれるならそれが一番嬉しいよ。だからこれからもうちで働いてくれるか?」
「それは勿論です。今後はより一層気を引き締めて務めさせていただきます」
……あと、そうだな。俺と二人きりの時は『私』って言うのやめようか。いつまでも他人行儀な気がしてな、もっと互いに気を楽にしていきたいんだ」
「え? いや……えっと……っ。わ、わかりました」
 それから彼は今まで以上に一生懸命に働くようになり、社内全体での評価は非常に高くなっていった。それだけではなく俺との関わり方も少しずつ変化していくようになり、今まではたまに食事をするだけだったのが休日に買い物に行ったりもするようになった。彼は滅多に服などを買うようなことをはしないらしく、いつも俺が服を見繕って試着させるようなことばかりしていた。けれど彼は嫌がるような様子もなく付き合ってくれるし、二人きりの時には『私』から『俺』に変わったことで他愛のない世間話も気軽に出来るようになっていた。とはいえ年齢的にも結婚を考え始めてもいい頃合い、彼にももしかしたら想う人がいるのかもしれない。けれど今は性別関係なく関係を結べる時だ、そろそろ本格的に彼のことを手に入れたいと思ってもいいかもしれないと考えるようになっていた。