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吾妻
2023-05-19 18:39:29
8011文字
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アークナイツ
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エル・ディアブロ
■ドッソレスにある事務局からロドス本艦へ向かう鉱石病の患者さんの護衛任務にきたテキーラくんの話。人畜無害で温厚そうな好青年の顔を見ていると、多分あんまり強そうには見えないんじゃないかと思って、外側からオンオフのギャップを書きたかった。ほぼほぼモブ視点で話が進みます。
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2
3
1.
窓からは強烈な午後の日差しが差し込み、天井のシーリングファンの影が床に踊る。
目の前に置かれたアイスカフェラテのグラスの中で、溶けた氷がからりと音を立てた。
「
……
あんまり気を落とさないでくださいね。ここだと適切な処置を行える設備がないだけなんです。住み慣れた街を離れるのは気が進まないかもしれませんが、ロドス本艦も悪いところではないですよ」
精一杯の笑顔を浮かべて励ましの言葉をくれるのは、ロドス・アイランド製薬ドッソレスシティ支部付きの駐在オペレーター。私よりも少し年上だろうが、顔立ちはやや幼いフェリーンだ。
「大丈夫です。私、悲観なんてしてません。専門の治療を受ける機会に恵まれただけでも幸運なんですから。この街にロドスの支部ができたのも、パパが治療費を出してくれたのも、ラッキーなことなんだわ。
……
でも」
強がりではない。私は人よりもポジティブで、それを長所だと自負している。
鉱石病に罹患したのは運が悪かったとしか言えないけれど、ちょうどいいタイミングで近くに専門機関の支部が開設されたのも、生まれが比較的裕福で治療費の心配が要らなかったのも、そもそも鉱石病への偏見がそこまで強くないドッソレスシティに住んでいたことも、なにもかもラッキーな巡り合せだ。
少々面倒な場所に源石結晶ができてしまって、簡易な設備しかない支部局では対応が難しくなったため、ロドス本艦への入院を打診された際も、正直ちょっとワクワクしたくらいだ。
物心ついた頃から身近だった様々な娯楽と離れるのは少々残念ではあるけれど、新生活がもたらしてくれる刺激が素直に楽しみだった。
むしろ、気がかりなのは
――
「
……
本当に大丈夫なんでしょうか? 近頃輸送車の襲撃が頻発してるって」
新生活に心を躍らせてはいるけれど、現地に辿り着けなかったら意味がない。
ドッソレスシティは娯楽の街ではあるが、なんだかんだ言ってボリバルの一部だ。年がら年中内戦をしている国なだけあって、治安が良いとは言い難い。
「大丈夫ですよ! ちゃんと現地までお連れできるように、ロドス本艦に応援を頼んでおきましたから。多分、もうすぐ着くと思いま
――
」
ドアに設置されたベルが涼やかな音を立て、通りに面した扉が押し開けられる。
「こんにちはー」
「噂をすれば。ちょっと待っててくださいね」
やたらと爽やかな声が、少々奥まった応接エリアにまで届いてきたのを合図に、向かいに座っていた駐在オペレーターが立ち上がった。
「あーあ、もうちょっと薄着で来れば良かったな。今が一番暑い時期だって、すっかり忘れてた」
呑気な声が、パーテーションの向こう側から近づいてきて、やがてその影からひょっこりと金髪碧眼の若者が顔を覗かせた。
「こんにちは、貴方がアドリアナさん?」
「
……
は、はぁ」
「約束の時間にはちょっと遅れちゃったよね、お待たせしちゃってごめんね」
申し訳無さそうな笑顔を浮かべて、覗き込む体勢からまっすぐに立ち上がった青年は、パーテーションよりも背が高かった。ぐるりと仕切りを回り込んで、応接エリアに踏み込んでくる。
シンプルな白いシャツに、ダークブラウンの細身のパンツ姿。右腕に、羽織ってきたであろうジャケットを抱えている。
やたらと顔の良い、絵に描いたような好青年だった。必要以上に開いた胸元や、耳にいくつも噛みつくピアス、そして腰にさげた妙な形の
……
剣? の物騒さを除けば、の話だが。
それに
――
(この人
……
どこかで
……
)
見たことがあるような?
柔らかそうな金髪とか、垂れた耳とか、ふわふわの尻尾とか。
めちゃくちゃ見覚えがある。どこで見たのかはすぐには思い出せなかったけれど。
「あっ、飲み物とかはお構いなく。あんまり遅くなっても良くないし、アドリアナさんさえよければ、すぐに出発しようかと思うんだけど」
飲み物を用意しようとする駐在オペレーターをやんわりと制して、こちらに視線を流す。私の同意を待っている様子だった。
何もかもそつがなく、パーフェクトな立ち居振る舞いだ。初対面の人間に、不快感を与えない物腰の柔らかさは、テラで最も忌避され、手酷い迫害にさらされやすい鉱石病患者の不安を取り除くには十分すぎる。
しかしそれらの素質はどれも、穏便な対面コミュニケーションの際に発揮されるものに思えた。つまり、
(
……
護衛の人、他にもいるのかな)
一応剣らしきものは携帯しているし、体つきもそこまで貧相ではないけれど、輸送路を狙って襲撃を仕掛けてくるような武装勢力たちと渡り合えるほどの腕前にはとても見えない。
「体調はどう? 出発できそう?」
優しく促されて、我に返った。ジロジロと相手を値踏みするのは失礼だ。とはいえこちらも命がかかっているのだけれど。
「だ、大丈夫です。いつでも」
「よかった。じゃあ行こうか。車は少し離れたところに停めてあるんだ。荷物、俺が持つよ」
「あ、あの
……
」
あれよあれよという間に手荷物を預かられてしまって、オロオロしたところで、気が付いた。そういえば、名前。向こうは私の名前を知っているみたいだけど、私はまだ目の前の青年が何者かまったく知らないのだ。
「ええと、何とお呼びすれば
……
?」
「
……
ああ、うっかりしてた。自己紹介がまだだったね。俺のことはテキーラって呼んで。ロドス本艦所属のオペレーターだよ」
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