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吾妻
2022-10-06 23:47:58
10884文字
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GOD EATER
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恋とは、斯くも
弊リーダーに遅れてきた思春期のはなし。いつものソマ主♀、GEB以降~RBぐらいの時期想定
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誰かを好きになるのは素晴らしいことだ。
ソーマを好きになって、私は心の底からそう思った。
見返りなんて要らなかった。
ただ幸せでいてくれたらそれでよかった。
……
よかった、はずなのに。
1.
「私、ソーマさんのことが
……
好きなんです」
眼前の扉の向こう側から、覚悟と不安で震える女の声が聞こえてきた。
ルイはインターホンに伸ばしかけた手を殆ど反射的に止めた。声が聞こえてくるのがあと数秒でも遅かったら、今頃室内には来客を告げる無慈悲なブザーが響き渡っていたことだろう。
(あ、あぶなかった
……
)
一拍遅れて冷や汗が流れる。
もう少しで要らぬ修羅場を生み出してしまうところだった。
(
……
相変わらず、モテてるんだなぁ)
“こういう”場面に出食わしたのは、別に初めてでもない。
遠征中も、親切な友人たちから「最近ソーマはやたらとモテている」と連絡をもらったりもするのだが、ソーマが誰かから想いを寄せられるのは今に始まったことではないのだ。
もちろん一番刺々しく他者を拒絶していた当時は近づく者もほとんどいなかったけれど、面倒見が良く生真面目な性格が知られるようになるにつれて、憧れを抱く者も増えていった。
ルイが長期遠征で極東を離れる以前も、幾度かこのような場面に遭遇して慌てて身を隠したりしたものだ。
(
……
どこかで時間潰してこようかな)
立ち聞きするのも悪い気がして、物音を立てないように踵を返そうとして。
ふと、奇妙な違和感が生まれた。
――
どうして私は、ソーマが断るって確信してるんだろう?
その違和感を自覚した瞬間、ぴたりと足が止まった。
体が自分の制御を外れて、フリーズしてしまった。
どうしてソーマが自分を選んでくれると、なんの疑いもなく信じているのだろう?
(い、いや
……
べつに、もしもソーマが他の子と一緒にいたほうが幸せだっていうなら、私はそれでもいいし
……
)
急に早くなる鼓動をなだめすかすように、自分に言い聞かせてみるものの、フリーズした足は一歩も動かない。
氷を飲んだように、冷たいものが胸から腹のほうへ滑り落ちてくる。
――
本当に?
自分ではない自分の声が、問いかけてくる。
――
本当にお前は、素直に身を引けるのか?
(だって
……
)
それが当然だと、ずっと思って生きてきたから。
誰かを好きになるって、そういうことじゃないのかな。
他の誰よりも、自分よりも、その人の幸福を願うこと。自分のすべてをなげうってでも、その人の願いを叶えたいと思うこと。
少なくとも、これまではそうだった。こんな引っかかりを覚えもしなかった。
ごく当たり前のように、相手の意志を、選択を、尊重できていたような気がするのだけれど。
(おかしいな
……
)
さっさと立ち去らなければ、いつ扉の向こう側から人が出てくるかわからない。
ひとまずここを離れて、別の場所でゆっくり考えればいい。
それなのに、体は全然動かないし、胸の奥や指先がかじかんだように冷たい。
端的にいえば、ひどく混乱していた。
当たり前のように顔を出した自分の傲慢さと、唐突にそれに気がついてショックを受けている事実に、天地も前後もわからなくなってしまった。
「
……
気持ちは有り難いが」
ラボの中から、申し訳無さそうに詫びる男の声が聞こえてきて、ようやく詰めていた呼吸を吐き出す。同時に、胸のあたりに支えていた冷たい塊が融け出していくのを感じた。
自分でもびっくりするくらい安堵してしまって、思わずその場にへたりこみそうになる。
しかし、息つく暇もなく、二言三言うまく聞き取れないやりとりがあったあとで、突然目の前の扉が開いた。
勢いよく飛び出して来た少女と、肩がぶつかる。オペレーターの制服だった。
少女は顔を伏せて、ぶつかった相手を確かめようともせずに走り去る。
エレベーターホールへ駆けてゆくその背中を見送っていると、開かれたままの扉の向こう側から視線を感じた。
正面に向き直れば、驚きに瞠られたソーマの瞳と目が合う。
扉の向こうに人がいるなんて、更にそれが自分の恋人だなんて、まったく想定していなかっただろう。元々突発的事項に強いほうではないのもあって、今度はソーマがフリーズしてしまっている。
ルイは、向こうが固まっているのをいいことに、「博士は相変わらずモテますね~」と茶化して流してしまおうとした。これまでも幾度となく交わしたやりとりでもあるし、この手の話題を下手に長引かせるのも、お互いのためによくないだろう。
……
そう、思っていたのだが。
「お前、いつからそこに
……
」
「ええと、また改めます!」
驚きから立ち直ったソーマが口を開いた瞬間、とっさに口から出たのはやけに他人行儀な逃げ口上だった。
「
……
? おい、待
――
」
入り口正面に据えられたマシンデスクからソーマが腰を浮かすが、スライドドアが都合よく目の前で閉まったのをいいことに、ルイはその場から逃げ出してしまった。
(えっ、待って
……
私、なんで逃げてるんだろ?)
ちょうどよく到着したエレベーターに滑り込み、居住区画行のボタンを押して、扉を閉ざす。自分以外誰も乗っていないがらんとした箱の中、背後の壁に背中を預けても、混乱は一向に収まらない。
逃げ出す理由なんて、ひとつもなかった。
あの場に居合わせてしまったのは偶然だし、ソーマが少女の告白に応じたわけでもなし、お互いに疚しいことは何もない。
(でも、あのとき私は、ソーマがあの子の告白を断って、心の底から安心して、それから
……
)
こう思ったのではなかったか。
“ソーマは、私のものだ”
――
と。
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