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ムクロジカ
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文字/夜廻パロ
【可惜夜廻】序
『「すみません、よくわかりません。」』現行未通過×
※夜廻パロ
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「
…………
?」
客人用の個室。敷布団で微睡みと深い眠りの狭間を意識が揺らいでいたソウゲツの耳に、誰かが廊下を歩く気配が届く。静かに襖を空け気配のした方を見れば、愛しい金髪が普段着のまま廊下の奥へと歩いている。
時計を見れば、時刻は日付が変わる直前。こんな夜更けに、手洗いだろうか。ソウゲツはなんとなく気になって、手早く普段着に着替えて彼の後を追うことにする。ヒタヒタと歩く音を頼りに追跡すれば、なんとそのまま外へと出ていったようではないか。
「ちょ、カンジ
…
!?」
慌てたソウゲツは、音が鳴るのも構わず靴を履き外へ飛び出る。夜中の山奥は非常に不気味だったが、この中にカンジがいる事実のほうがソウゲツにとっては恐ろしい。暗闇の先で町へ向かう金色を見つけ、ソウゲツは山を降りる。
「カンジ! 何処へ行くんだカンジ!」
呼びかけるが、反応はない。聞こえていないのか、それとも無視しているのか。分からないが、このまま放置しては良くないとソウゲツは判断する。完全に整備されていない道を走るが、何故かカンジには追いつけない。息を荒げ山を抜ければ、そこにカンジは既にいない。夜の町が広がるのみだ。
「
……
カンジ」
嫌な予感に、身を震わせる。未知に対する恐怖が、ソウゲツに『帰還』を提案する。しかしそれを瞬時に却下して、ソウゲツはポケットを探る。やがて取り出したのは、幸運にも以前買っていたミニライトだ。新品同然のため、電池にも余裕がある。
道を照らす。間近で鳴っていてもおかしくない虫たちの合唱が、不思議と遠く聞こえる。それはまるで、今からでも引き返せと警告しているようにも思える。それでもソウゲツは小さく情けない光を頼りながら、夜の町を歩くことを選んだのだった。
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