Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
ムクロジカ
Public
文字/夜廻パロ
【可惜夜廻】序
『「すみません、よくわかりません。」』現行未通過×
※夜廻パロ
1
2
3
4
5
6
7
酔いもそこそこに、就寝の準備をすることになる。飲酒からしばらくして風呂から出たソウゲツは、廊下で空を見上げるカンジを見つける。空はすっかり夕暮れの赤から夜の黒へと変わり、小さな星たちが姿を見せ始めている。それらを惜しむように見つめるカンジは、宴での騒がしさが嘘のように静かである。
その姿に、ソウゲツは既視感を覚える。自分は以前にも、静かに夜空を見上げる彼を見た気がする。しかし、具体的なことが思い出せない。胸に引っかかった異物に、ソウゲツは考えるより先にカンジの名を呼ぶ。
「カンジ」
「ああ、ソージ。風呂あがったん?」
儚さすら宿した表情から一転、カンジはパッと花が咲いたように笑う。人懐こくソウゲツに駆け寄り、返答を待っている。ソウゲツはその姿に、先程の光景は夢幻だったのではないかとすら思う。
「
…
いい湯だった。オマエはもう寝るのか」
「おん。あ、もしかして一緒に寝たいんか? カッカッカッ! ソージは寂しがり屋やなぁ!」
特徴的な笑い声をあげながら、カンジはソウゲツの背中を叩く。しかし、ソウゲツは反応を返さない。ただまっすぐカンジの瞳を見つめ、真剣に何かを告げようとしている。その気配を察したカンジは、笑うのをやめ緊張した面持ちで問いかける。
「どしたん、ソウゲツ」
「大事な話があるんだ、カンジ」
真正面から向かい合って、ソウゲツはカンジの左手を右手で握る。カンジは拒まないが、僅かに身体を跳ねさせる。恐れているような、心待ちにしているような、そんな表情でカンジはソウゲツの言葉を待つ。一呼吸置いてから、ソウゲツは自らの心の内を暴露する。
「────好きだ。ずっと前から、オマエのことを愛してる」
「
……
え?」
間の抜けた声が、カンジの口から零れる。目を丸くし、意表を突かれたことを顔に浮かび上がらせる。
ソウゲツは故郷に帰った喜びより先に、カンジが無事なのかをずっと心配していた。自分と共に上京し、自分と違って夢を諦めた彼。諦めざるを得なかった諦めの悪い彼。きっと深く傷付いたと考えた時、他の人間にはおおよそ抱かない保護欲と独占欲が湧き出た。その瞬間に自覚したのだ。自分は彼を、特別に愛してるのだと。だから告げた。
「返事は今すぐしなくていい。でも、これだけは知っておいてほしかった」
ソウゲツは一切迷いのない表情で、言葉を続ける。今後の関係に支障がでようとも、この愛を圧し殺して生きられるほどソウゲツは愚かではない。だが突然過ぎる告白は、カンジにとって混乱の種になるだろう。だからソウゲツは、カンジが落ち着くまで自分は待てることも伝える。
「
……
わかった。返事、考えとく」
「待ってる」
カンジは馬鹿騒ぎが好きだが、酷く聡明だ。人の気持ちを蔑ろにしたり、軽んじたりはしない。この告白もしっかりと受け止め、そして真摯に返答してくれるだろう。ソウゲツにとってそれが了承か拒絶かは分からないが。
「おやすみ、ソージ」
「ああ、おやすみカンジ。また明日」
そう互いに挨拶を交わし、廊下で分かれる。ソウゲツは抱えていたものを曝け出した達成感と、今更湧いて出た緊張で心臓を大きく鳴らす。明日以降が恐ろしく、また楽しみでもある矛盾。ああ、この夜が過ぎるのが惜しい。胸を抑えながら、ソウゲツは自分に割り振られた部屋へと急いだ。
1
2
3
4
5
6
7
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内