【失笑の歌と蒼い月】二章/後編

一ページ目必読
※Ibパロ




青の部屋から出て、先の扉へ向かう。途端にとんでもない寒気が、カンジに襲い掛かる。

反射的に振り返れば、そこには異形の怪物がいる。


「────え」


合成獣というのが最も正しいような、間違っているような。大きな狼に鳥の翼が生えたような姿をしているそれ、何故か顔は黒くぼやけて見えない。全身が悍ましく、理解してはいけない恐怖で固めた顔のない怪物。


「■■■■……!」

「ひ、」

「■■■■。■! ■■■■■■■■!! ■■、■■■■■■!!」


泣き叫ぶような、怒り狂うような音が発せられる。悲鳴よりも先に、カンジは駆け出そうと足を踏み出し、足をもつれさせて転ぶ。その拍子に、貰い物の巾着袋がポシェットから飛び出す。勢いよく投げられた袋から、鮮やかな木苺が二、三粒転がる。立ち上がろうとして震えるカンジを、しかし〈ソレ〉は狙わずに素通りする。


「■■■■■、■■■■■……


何故か〈ソレ〉は木苺を拾い上げ、巾着袋ごと腕らしい部分で抱える。そのままズルズルと、元来た道を引き返していく。


バタンッ!

無意識のうちにその場から逃げて、意識的に扉を勢いよく閉める。扉に背を預け、大きく鳴る心臓を落ち着かせようと深く呼吸する。決定的な危険に出会った衝撃は、ここに来てから初めて得たもの。この場所には、異質で危険なものも居る。その事実は重く伸し掛かるが、ここで知れて良かったという安堵もある。


……はよヒーロー見つけて帰らんと


下へ続く階段を、一歩一歩降りていく。次の階層には、一体何が待ち受けているのだろう。不安と同時に湧き上がるのは、ほんの少しの安心感。自分でも気付きたくないそれに蓋をして、カンジは前に進むのだった。