ろく
2026-07-24 11:45:21
1880文字
Public 極光の流星・外伝
 

おしのびデート




「君は映画や劇場には興味はあるかね?それとも、ショッピングがいいかね?」

 コロニー、スイートウォーターをめぐるため、ハンドルを握るシャアに問われ、アムロは首をかしげる。

「映画は……一人で見に行くほど興味はないが。たしかにデートで行くことはあったな。」
「そう……か。君はたいそうモテていたと聞く。そうか。次回は映画を見よう。」
「どこ情報だよ。貴方が見たいなら構わないが。」

 情報源はブライトだ。かつてカラバでベルトーチカという女性に言い寄られていたのを、シャア自身知っている。彼女とはどうなったかは知らないが、アクシズ落としの際、アムロの恋人が戦死したこともブライトから聞き及んではいた。そしてそのことに関しては遠からずシャアに責任がある。これ以上口するのは憚られるが、その思い出をシャアが上書きして何が悪いというのだろう。

「私も映画を見る機会はなくてね。では映画館に行こう。」

 映画には連邦もジオンもない。上映期間に差があるとしても、映画は話題の一つになりえる。シャアとアムロにとっても。
 だがシャアも映画には疎い。映画館に着くなり、上映時間が間近い、なるべくコメディを、とチョイスした結果、ラブコメになった。

 上映中、客席が思わず忍び笑いが起こるほど面白い映画ではあったと思う。ただ、見終わって照明が点いた客席でアムロは笑ってはいなかった。

「楽しくはなかったかね?」
「ああ……面白かったよ。恋人になるまでのすれ違いとか、ポンコツ振りとか……。俺たちもあの程度で済めば……いや、いいんだ。」

 シャアは虚を突かれた。映画の中のように、片思いを失敗しながらすれ違いながら面白おかしく成就させていけたなら、戦うことなどなかったのだ。アムロはそう言いたかったに違いない。

「悪い。そんな顔するなよ。旨いもの食わせてくれるんだろ?行こう。」

 にこりとアムロは笑い、シャアの手を引いた。

「ああ、もちろんだ。リクエストはあるかね?」
「ホストにお任せするよ。笑っておなかすいたよ。」

 辛い思いばかりをさせてしまった白い悪魔、いや、シャアの憧れを集めた光の男は、やはり眩しかった。