ボツネタ

シナリオネタバレなし

デ/ビサ/バ2オマージュの自探索者SS
文字リハビリに書いてたやつ

 不幸な日に幸福だった時を思い出すことほど、悲しいものはないらしい。ならば、幸福の中で不幸な事を思い出すのは……果たして、喜ばしいことなのだろうか。


【終日】



 20XX年11月。寒波が本格的に訪れ、人々を凍えさせる時期。毛布から出た男は、窓を開けて空を見上げた。体を撫でる冷たい風が、世界の息が続いている事実を伝えてくる。乾いた風が目から水分を奪い、僅かな痛みを得た。

 窓とカーテンを閉め、背を向ける。台所で湯を沸かしながら、朝食の準備を始めた。卵、牛乳、粉を混ぜ合わせ、早めに熱したフライパンに垂らす。ふつふつと泡が浮かび始めた頃合いで、くるりと生地の天地を逆さにした。爪楊枝で火の通りを確認してから、丸い皿に移し替える。

 パンケーキを乗せた皿をテーブルに置き、紅茶の粉末をカップに入れた。沸騰したお湯を注ぎ、軽く混ぜ合わせる。砂糖を加えるか少し悩んで、何となくやめて棚に戻した。


「いただきます」


 カトラリーを揃え、パンケーキと紅茶を前に手を合わせる。もはや何に対するモノなのか理解していない祈りを捧げ、パンケーキにシロップを馴染ませた。小さく切り分けて食めば、蜂蜜の優しい甘さが口全体に広がる。切って、食み、切って、食み。その合間に紅茶で舌と喉を湿らせ、何事もなく朝食を終えた。

 食器とフライパンなどを片付け、ゆらゆらと寝室へ戻る。適当な私服を引っ張り出し、寝間着を脱いでそれに着替えた。充電コードとスマホを離し、重要な通知がないかを確認する。よくある広告やゲームの通知を削除する中、彼は一通のメールを見つけた。

 件名は────……