kachosub29
2026-07-08 16:49:17
2690文字
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平成の利こま♀

学パロだあ…



「それさ、重くないの?」
「重くないですよ?」
 小松田の携帯電話につけたストラップは、軽く本体を超える大きさの塊となっていた。
 これは友達からの土産、こっちはゲームセンターで取ったもの、こっちはガチャガチャに飲み物のおまけ……。数えればキリがないほどだ。ちなみにあぶれたキーホルダーは彼女の鞄にこれまたジャラジャラとぷらさがっていた。
 そんなとてもじゃないが携帯に適していない携帯電話と化したものを、小松田は器用に片手で操作していた。一分も経たずに鳴る着信音に、カコカコと素早く文字を打ち込んで数秒程度で返している。一種の特殊技能だ。
「ふぅ、これで連絡は終わったので、もう大丈夫です。ごめんなさい利吉さん、おまたせして」
「大して待ってないからいいよ」
 ものの五分ほどで全てのメールを捌き切ったのか、小松田は携帯電話を閉じた。普段のんびりとしているくせに、メールの返信だけは異様に速い。利吉が十分はかけて送ったメールにも、即座に返信が来る。はじめはかなり、いや今も驚きが隠せなかった。
「それにしても、君にこんな特技があるとはね……
「別に普通ですよ? みんなこんな感じですし。あっでも利吉さんはいっこのメールにちゃんと書いてくれるから、なんだかお父さんのメールみたいで緊張しちゃいます」
……
 メールに慣れてないんだから仕方ないじゃないか! それに、一通送るだけでも通信料がかかるんだぞ?! そう言ってやりたいが、あまりにも情けないのでここはぐっと言葉を堪えた。両親とのやり取りは基本電話であるし、自宅だと電波状況が悪くメールが届きづらい。おのずとメールに触れる機会が少なかった利吉には、密かなコンプレックスとなっていた。
「でも、ぼくは特別な感じがして好きですよ。利吉さんのメール」
……ふーん」
 
 二人は連れ立って駐輪場へ向かう。利吉は家が遠く、また交通の便が悪いこともあり、原付バイクでの登校が許可されていた。親戚の兄貴分からお下がりでもらった原付は大型で、有難いことに二人乗りも可能である。
「ぼくとしてはやっぱり二人で電話し放題なケータイを契約したくてですね……
「いやうち電波入らないから無理だってば。ほら君の分のヘルメット……っと、そうだ。これ」
「ほへ?」
 利吉が小松田に握らせたのは、ジュースのおまけとしてついてきたストラップだった。小松田が好きだと言っていたキャラクターで、コンビニで見かけたとき自然と手に取っていた。全五種もあると気づいたのは学校で開封してからだったが、おそらくこの茶色いクマのキャラだったはずだ。
「わあ! 利吉さん、どうしたんですかこれ?!」
「たまたまね、飲みたかったやつについてたからさ。小松田くんこういうの好きだろ?」
「はい! これ、もらっていいんですか?」
「もちろん。じゃあはい、これ被って」
「えへへ、大切にしますね」
 
 利吉の背に捕まり原付に乗った小松田は、風を受けながらふと思った。利吉は甘いものが苦手なのに、ストラップがおまけとしてついていたのはたしかとても甘いジュースだった。利吉が間違えて買うはずもない。
「利吉さん、大好きですぅ」
 一番好きだったのは白いクマの方だけれど、この日から茶色のクマが小松田の一番になった。