「あれ?おかしいな
…?ない
…ないぞ!!」
シャスティルは先ほどから鞄の中を何度も覗きこんでいる。
「確かに鞄に入れてた筈なのに
…なんでにゃいんだっ
…?」
今にも泣き出しそうなシャスティルを、三騎士たちは心配そうに見つめていた。
「どうしたのですか?シャスティル殿?」
「荷物が
…なくなっていて。と、とても大事なものなのに」
「なんだって
…!?シャスティル殿、心当たりは?」
「い、家に忘れたのかなぁ
…」
三騎士たちは顔を見合わせ、そして静かに優しく微笑んだ。
「シャスティル殿、今日は本当はお休みを取る予定でしたよね?」
「警備は大丈夫ですから
…こちらのことは気にせず、探してきてください」
「家にあるかもしれませんぞ?そのままゆっくり過ごされるとよい」
「でも
…」
「お、お前たち
…ありがとう」
シャスティルの顔が少しほころんだのをみて、三騎士たちはほっとした。
「では、ちゃんと休むために申請書も提出しておかなければな
…
ん?あれ?申請書は
…確かこの引き出しに入れていたはずなんだが
…」
引き出しの中はいつも通り綺麗に整っているのに、ここのあるはずの書類だけがないーー
シャスティルは再び泣き出しそうな顔になり
…
三騎士たちもまた泣きそうな顔で彼女を見守るしかなかった
…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
男はキュアノエイデスの広場の片隅に立っていた。
警備の強化と言っても、街で特に事件が起きているわけではない。
警備が一人くらいいなくても仕事というのは回るもんさ、
そう思っていた彼は、今日の退屈をこの「面白いイタズラ」で紛らわせるつもりだった。
「クク
…おかげで退屈せずに済みそうだ」
キュアノエイデスの天気は晴れ。
魔術師と思われる奴らの姿はチラホラとは見かけるが、こちらに特に何かしてくる様子もない。
機嫌が悪ければそのまま魔術師に言いがかりをつけていたかもしれない。
だが、今の彼は気分が良かった。
「シャスティル
…あの女が今頃慌てふためいていると思うだけで、いい気味だ」
大事そうに入れていた荷物を数点、引き出しに入っていた書類まで抜きとってきた。
そしてそれらをそのまま広場の中に捨ててきたのだ。
書類を失くしてしまったとなれば、シャスティルの信用にも関わるはずだ。
「ざまあみろ
…!」
と大きく笑ったその瞬間ーーー
彼の足元から黒い影がジワリと広がった。
影の中から白く細い腕が現れ、その腕は真っすぐ迷いなく男の頭を掴んだ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「面白いことしてんな、お前
…」
影の中から姿を現したのは細い長身の男だった。目の下には濃いくまがあり、不敵に笑った顔は美しくも不気味だ。
影から出てきた男は聖騎士よりも背が高く、その身長に見合うほどの大きなローブをまとっている。
その存在感だけで彼が「やばいタイプの魔術師」であることは一目でわかった。
「お、お前はぁ
…〈煉獄〉バルバロス
…!!」
「へえ、俺のこと知ってんだ?」
バルバロスはゆっくりと屈んで男の顔を覗き込むように笑った。
じゃあ、これから何が起こるかわかってるよな?とでも言わんばかりに
…。
「お前のイタズラ、見過ごせねえんだわ」
一瞬で背筋が凍る。
これが〈煉獄〉バルバロス
…。絶対に関わってはいけないタイプの魔術師だ。
「ま、待ってくれ!返す!返せばいいだろう?」
「はあー?返したらなかったことになんてならねぇだろ?」
バルバロスはキョトンとする。
その表情は一瞬あどけなく見えるほどで、よく見れば20歳前後の若い男だ。
「お、俺を殺せばどうなるかわかっているのか
…!?」
「あん?わかんねぇけど関係ねぇし。つか殺さない理由なくねぇ?」
「えええーーーーーーーーーっ!!?」
全く交渉出来る気がしない!!このままでは本当に殺される!
仕方ない、大嘘でも何でもいい!この場を無事に切り抜けなければ
…っ!!
「失くしたものの在処がわからなくてもいいのか?俺が死ねば絶対にわからなくなるぞ?!」
バルバロスは一瞬沈黙し、そのあと深いため息をついた。
「
…めんどくせえな。もともとあいつの部下だからとか考えたけど
…
めんどくさくなってきたからやっぱ殺そうかな」
「そ、そんなぁ!!」
男の悲痛な叫びが街中に響いた。
15DAY PM →
https://privatter.me/page/6a499f5fe8dfe
←戻る 14DAY
https://privatter.me/page/6a490811968de
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.