大学芋
2026-06-15 00:26:23
3441文字
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傷心瘡痕

2026.6/14 原藤ワンドロ お題:傷跡

大学芋は恋愛は分からぬ 特に友人以上恋人未満の関係とかはどう表記すればいいかわからぬ
くっ付いてるくっついてないは読んでいる読者にお任せする。
空の境界の映画のEDが傷跡なので、そこから繋がった痛覚残留のオマージュ

今日の曲は Kalafina 『interlude 01』


冷蔵庫にモノを入れてる話
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雪の話
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魔法の話
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誘う話
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前回書いた 空の境界オマージュのワンドロ『苺』はこれ↓
https://privatter.me/page/6a1b20fe43a15

 あぁ、どうしようもないなと第三再臨の姿で藤堂平助は立ち上がった。

 シュミュレーションルームで疑似戦闘訓練。
 今回は毒を扱うサーヴァントと毒を無効化するサーヴァントの戦闘訓練で辛うじて藤堂は勝った。たがその後遺症として、全身の感覚がない、麻痺をしているというのではなく痛覚や物を触る感覚がない感覚だ。
 二時間後に治るということでほっといても問題はないが、無であるがゆえに外見ではなく内側の傷は分かりにくい為、一応医務室に行くことにしたことに、本当にどうしようもないとなってしまったのだ。

 足は歩ける。手も動かせる。話せる。音も拾える。
 だが、歩けど地面を踏んでいる感覚がない、手は触れられるけど、掴かめてる気がしない、喋っていて舌がふれてるかどうかもわからない、音が拾えても振動があるかもわからない。
 何もかも曖昧で宙ぶらりんだ。
 音を頼りにいつも通りに接するが、これが本当にあってるかどうか自分自身でもわからなかった。

 シュミュレーションルームから出て医務室まで歩いていこうと右足をだして歩き出すが、その距離がどうしても長く感じるのは何故だろうか。
 実は行きたくないとかではない、逆に早くたどり着きたいと思っているのに、全身が重く感じる。感覚はこんなにもないのに。

 何れたどり着くのだからと自分自身に言い聞かせながら歩き続ける、あぁ何も感じないというのはこれだけ不安になるものなんだなと、同時に何も感じないとは、こんなにも浮いている感覚で、あの人達は刀に手を出して京や周りを翻弄していったのだろうと思うと、なんとも言えない苦味が全身に広がってるきがした。


「平助!」

 遠くから短い赤髪がこっちに向かってくる。
 あの槍の大きさからして自分を呼び捨てするのは一人、原田左之助が走ってこちらにやってきた。


「原田さん? どうしました、今日は周回ですよね」

 行儀が悪いと思いながらも、叱るつもりはない、大体何か走ってくると彼がする場合は、何かあった時か、どうしようもない何かが起こった時だからだ。

「周回は一時間前に終わった、っじゃなくお前がどうした」
「どうしたも何も、模擬戦で毒で無感覚になったせいで体の内部に負傷したかどうか調べる為に今から医務室に」
「ばっっか!!!! お前それは先に言え!!! 背負ってやっから腕だせ」

 何故怒られたのかよくわからないが、外聞が悪い事でも気付かずやってしまったのだろうと、素直に背中にもたれかかる。
 こういう時の原田左之助は無理やりでも引きずって連れて行くと経験上わかっている、傷の悪化をさせないためにも言う事を聞くしかないだろうと自分自身を納得させる。
 正直に不服だといったとしても、悪化するのが目に見えるのなら言わないほうが楽なのを選んだだけだとも言える。
 原田はしっかりと藤堂を背負ったのを確認してゆっくりと医務室へ歩き出した。

「お前本当、調子が悪いなら、いたいとかちゃんと言え、何のために口があると思ってんだ」
「すみません、今痛覚も無いんで、いたいもよくわからないんですよね」
「それでもだ、足引きずって歩いてて普通におかしいと思うだろうが、普通に耐えるんじゃねぇ」

 ――――耐えるって何だろう。
 宙ぶらりんでよくわからない。歩けるから歩いただけなのだ。
 それが何がいけないんだろう。我慢した覚えもないし、ちゃんと医務室に行こうともしてる。
 今はサーヴァントだけれど人間としておかしくないはずだ、じゃあ何を自分は耐えてたのだろう。

「そんなに今の僕はおかしいですか?」
「おかしいとかじゃなくてだな……こういう感覚がないとか言う場合は、普通に側にいる人間を頼れっつってんの。毒が身体にまわって倒れたら周りが驚くし俺が心配するだろうが!」
「え、心配するんですか?」
 
 驚いた。真底驚いた。
 永倉新八や近藤勇が心配するのは想像できる、だが原田が自分をこんな事で心配するとは思ってもみなかった。

「なんだよ心配したらいけねぇってか」
「いいえ、そういう事ではなく、何を心配するのかと、カルデアの医療班は優秀です。例え僕の両手両足がなくなったとしても代替案や生命を維持する方法を確立させるぐらいの医師が粒ぞろいです。それが分かってるのに心配する事があるんですね」
「分かっていても、分からない事もあるだろうが、今でもお前の状態が本当に大丈夫かどうか正直気が気じゃねぇよ、医者に聞いても俺が納得できなければずっと心配し続けるとおもう」

 あぁそういう所は繊細なんだなと、妙な納得をしてしまう。
 逆に言えば新鮮だなともいえる。
 藤堂の中では大抵の人間は医師に状況を聞けば医師に任せるか距離感が近い人間程、心配で見舞いに来るかの二択であった。だから原田のような微妙に一定の距離を保ち続ける人間がこんな毒でさえも心配するのが意外だったのだ。

「池田屋みたいな危篤状態じゃないというのに……
「池田屋は池田屋で別だ!!」
「別なんだ

 人の心理的な傷の状況はよくわからない。
 形が見えないからこそ、推測するしかない、それは痛みという痛覚の感覚を呼び起こさなければいけない自傷行為とも言える。
 だからこそ、原田のが何処まで傷跡を残しているのか藤堂には何もわからなかった。
 藤堂自身の立ち位置が原田にとってどういうものなのかが分からないからこそともいえる。
 藤堂は自分の職業柄としての立ち位置、相手からの推定する距離感で心理を考えるからこそ、行ったり来たりするのに微妙に離れる奔放な原田の心理が分かりずらい。
 あれだけ心配しているというのであれば立ち位置は親友か友人あたりではあるのは推測はできるのに、行く方向は全部真逆でそれ以上に飛んでいくような感情を暴露するのだ。正直者であるからなお質が悪いといえる。


「僕は別に心配するほどじゃないと思うんですけど」
「まだ言うか、いいから素直に背負われてろ!」

 原田の声が妙に疲れているのを感じながら、触れているかどうかも暖かさえ分からない肩に支えてもらうしかなかったのだった。