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りあ
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空白に餞
スグリ視点、番外編から少し時から経過した時。
交換留学を終えてパルデアに帰るアオイを見送ったスグリが、アオイの思い出の先に進む話。
モノローグかなりながい。
1
2
「──じゃあ、そろそろ」
「ん。
……
じゃあな。アオイ」
ここはイッシュ地方の海の孤島、ブルーベリー学園。
アオイは今日、ここでの交換留学を終え、パルデア地方のアカデミーに帰ろうとしていた。
アオイの向かう青い空に照らされた白い一本道の先には、アオイの学校へ向かうジェット機が帰りを待っている。
学校での最後の見送りのために、俺──スグリを始め、ゼイユや見知ったリーグ部のメンバーが学園の門の前に集まっていた。
「しっかし、チャンピオンがいなくなると寂しくなるねぃ、なぁ元チャンピオン?」
「カキツバタうるさい」
カキツバタは相変わらず弄りたくて仕方ないのか、こちらをツンツンつついてくる。流石にうっとおしくて指を弾いた。やりとりがおかしいのか、アオイはけらけら笑っている。
寂しくないかと言われれば嘘である。
でも、俺の中でその単語で片付けてしまうには、アオイとの間にあまりにも色々なことがありすぎた。
そもそも、出会うのは林間学校が最後だと思っていたのに、こちらではなくアオイが自ら交換留学生としてブルーベリー学園に来たことが、俺にとっては奇跡みたいなものだったのである。
交換留学は一時的なもの。いずれパルデアに戻ってしまう。ぼんやりと分かっていたはずなのに、いざ実際に合間見えると、どうしたって込み上げてくるものがある。
俺は誰にも悟られないように、そっと息を吐いた。
そんな様子は知る由もなく、ブルーベリー学園側の面子は思い思いに言葉をかける。
「
……
ネリネはアオイを応援しています。帰ってからも切磋琢磨されますように」
「アオイさんのおかげでリーグ部も活気づきましたし!いつでもまた遊びに来てください。あ、パルデアのかわいいポケモンも教えてくださいね!」
「帰ってからもそっちのこと、教えろよな!」
「あんた
……
あたしの舎弟なんだから着いたら即連絡しなさいよ!絶対!一番最初に!」
別れの言葉が頭の上でぼんやり飛び交っていく。俺を誰かが見たら上の空と言うのだろう。
「もちろん!帰ってからも連絡するね!
……
スグリも!」
「あ
……
うん。」
意識の外から突然自分に言葉を向けられ、現実に引き戻される。慌てて笑顔を取り繕った。
ここで喋ることができるのはきっと最後のはずなのに、どうしても言葉少なになってしまう。
皆はスマホロトムを持っているから、離れていても割とすぐ通話やメッセージができるが、俺はそうじゃない。持ってない以上、直接のやり取りは手紙という時間がかかる手段に限られる。
……
どうして俺はまだスマホロトムさ、持ってないんだろ。
自分の現状にやきもきが止まらない。気づかれないようにまた小さくため息をついた。
用意が整ったのかジェット機の方向から、遠くからアオイの名前を呼ぶ声がした。
「あ、もう行かなきゃ。
……
じゃあみんな、ありがとう!またね!」
「
……
うん。またな」
俺が見るのは最後かもしれない、ブルーベリー学園のリュックを背負い直したアオイは大きく手を振った。
見送りなんだから、と色々な言葉を呑み込んで、こちらも小さく手を振り返す。
アオイは最後まで笑顔だ。
俺は
……
ちゃんと笑顔を作れてっかな。
アオイの背中は揺れて小さくなっていく。
行かねえで、なんて言えなかった。
向こうでもけっぱれ、とも言えなかった。
アオイの居場所はここじゃない。
帰る場所は他にある。パルデアではネモやペパー、ボタンが待っている。
今じゃなくてもいつか会える、分かってる。
これは俺の我儘だ。それでも
……
アオイのひとつの旅の終わり。
それが来てしまったことが、言葉にならないほど寂しかった。
どうしたってアオイはパルデアの人で、俺はそうじゃない。
距離の差を嘆く心に蓋をしようにも、自分ではどうしようもなくて、苦くて悔しい。
小さくなっていくアオイの背中を最後まで見届けたくて、見続けるのが辛くて、振る手が次第に止まる。
背中から反射する太陽の光が眩しくて、じわりと視界が滲んだ。慌ててジャージで水を拭う。
泣かない。泣くのはアオイが空に旅立ってからだ。
堪えるために、一度大きく息を吸おうとした。
……
吸おうとした矢先、何かを思い出したようにアオイがくるりと踵を返してこちらに向かってきた。
「え?」
……
なんで?
小さかった影がどんどん大きくなり、三つ編みを左右に揺らしてそのままズンズンと近づいてくる。
「え?え?」
「
……
スグリ!」
「ッ
……
!!」
勢いのまま突撃を食らった。
うっすら滲んでいた涙も引っ込み、避ける暇もないままアオイを受け止め、その勢いで後ろによろめいてしまった。
「アオ
……
!?」
「これ、あげる!」
「これって
…
」
自分の手には小さな水色の封筒が握らされていた。
手紙にしては、ほんの少しだけ厚みがある。
「あ、ありがとう
…
?」
「あ!ここで開けちゃだめ!帰ってから!!」
「???」
「約束だよ!
……
待ってるから」
「え?うん??」
「っじゃあ!今度こそ!またね!」
「
……
???またな」
アオイは再びくるりと向き直り、帰りを待つジェット機に向かって走っていった。今度こそ影はすっかり小さくなって、もう俺の目には見えない。
「
……
なんか、すごい勢いだったな」
自分の寂しさなど暴風のような勢いで飛ばして去っていったアオイに小さく苦笑する。最後までアオイらしい。
──でも、「待ってる」ってなんだろう。
「ねえねえスグ、なあにそれ?」
アオイの言葉を反芻していると、姉がニマニマしながら近づいてきた。背中から似たような顔のカキツバタも顔を覗かせる。
……
うわぁ、どうせ「見せろ」という顔だ。
「ええ
……
」
「まだなにも言ってないじゃない。見せなさいよ!」
……
今まさに言ったべ。
これ命令ね、と言わんばかりにねーちゃんはニッコリと笑みを浮かべた。これがグラエナの威嚇になったら逆らえない。しぶしぶ背中に隠していた封筒を見せる。
「アオイさんからの手紙ですか?かわいいシールですね!」
姉に続いてタロや他のリーグ部メンバーも封筒をのぞき込む。
タロの言う通り、アオイからの水色の封筒に、カジッチュのシルエットに見えるシールで封がしてある。封筒のあちらこちらにモンスターボールや、パルデアのポケモンをかたどったシールでデコレーションしてある。なんともアオイらしい。
本当は一人で開けたいけれど、周りからの期待のまなざしが痛いので、そうっと封をしていたシールを剥がす。
中身からは数枚の紙束が出てきた。
「
……
写真?」
──それは、アオイと俺が写った写真の束だった。
「
……
これ、林間学校のじゃない?」
「
……
こっちは祭りの
……
ねーちゃんもいる。」
「甚兵衛のスグリくん、かわいい
……
!」
「おうおう、この時の元チャンピオン、キョーダイから距離取りすぎてやんのぉ」
「カキツバタ笑うな!
……
でもよくこんな態度でもアオイ平気だったなあ
……
。」
「スグリ!これは!?」
「ああ、これはエリアゼロの帰り
……
にへ、俺変な顔
……
」
どれもこれも、アオイとの忘れもしない思い出だった。スマホロトムを持っていないスグリのために、わざわざ現像してくれていたらしい。
1枚1枚が懐かしくて、ゆっくりとめくっていく。
次の写真からはアカマツとネリネも食いついてきた。
「お、ここからはオレたちもいるぞ!」
「
……
アオイはいつの間に撮ってたんですね」
リーグ部の全員でお茶をしている写真だ。アオイの隠し撮りだったのか、目線が合ってない人が多い。
キタカミの公民館で、チャンネル権を争った時の写真もある。ネモ、ペパー、ボタンも一緒に写っている。
こっちは自分が学園に復学してからバトルをした後に撮った写真。アオイと一緒にブルレクをした写真。サンドイッチを一緒に作った写真。
みんなでいる写真から、アオイと二人で撮った写真までたくさんある。
「そういえばアオイのサンドイッチ作り、毎回上から落とすもんだからよく食べ物を飛ばしてて大変だったなあ」
アオイとの思い出が蘇り、くすりと笑みがこぼれた。
期間はそう長くなかったはずなのに、どれもはるか昔のことのように懐かしく感じる景色ばかりだった。ここにある全てが宝物だ。
…
アオイも、そう思ってたのかな。
離れても、こうやって思い出を形にしてくれているアオイの優しさが嬉しくて、離れてしまったことを突きつけられた気がして、胸が込み上げる。別れ際は結局さみしくなかったはずなのに。
しかし、そんな中でも見覚えがない写真が1枚だけあった。
「これは
……
?」
最後の1枚は、荘厳で立派な建物に向かう階段の前に、アカデミーの制服に身を包んだアオイが1人、目を細めて笑っている写真だった。
どこだろう?キタカミでも学園でもない。
「パルデア地方のアカデミーじゃないかな?」
タロが零す。
俺が知らない場所だし多分そうなんだろう。
……
でも一体いつ撮ったんだ?
時間帯は分からないが、写真の中に人気はない。建物の後ろの空の色は、まるであの時の朝焼けの色によく似ていた。アオイの手元にはカジッチュがいる。
これだけは全く記憶にない。知らないはずなのに。アオイがわざわざ最後に、自分だけの写真を入れてきたのはなにか意味がある気がする。
……
なんとなくこれが一番大切な気がする。
じっと見入っていると、カサ、と手元から何かがこぼれ落ちた。
「なんか落ちたわね」
「なんだ?これ」
落ちた床から拾い上げるとそれは、小さな薄紫色の花弁だった。
不可解に思って、最後の写真を裏返す。
裏側には、先程の花弁の元であろう薄紫色の花と、薄桃色の丸い花弁が5枚重なっている花が2つ、押し花になっていた。横にはアオイの手書きであろう文字も書かれている。
「スグリへ! 月 日」
たったそれだけだった。
「空白の日付
……
?」
意味がよく分からない。
それ以外にも手紙はついているのか、封筒を再度漁ってみたものの、文字としての情報は本当にそれだけだった。
押し花に意味があるのだろうか。薄紫色の花はともかく、薄桃色の花の方はなんとなく見覚えがある気もするが、思い出せない。
「
……
俺、花は詳しくねんだよな
……
」
自然に囲まれて生まれ育った自分でも、残念ながら花にはそこまで詳しくない。
「
……
そのピンクい方、りんごの花じゃない」
「りんご?」
後ろからのぞき込んでいたねーちゃんが声を飛ばしてきた。
「あんたも見覚えあるでしょ?キタカミのりんごの実がなる白とピンクの花。毎年春から夏くらいに咲いてるやつ。これそうよ」
「え?これが?
……
確かに
……
?」
そう言われれば花に詳しくない自分でも見覚えがあることにも納得がいく。俺の知ってるりんごの花は木についているものだから、すぐに結びつかなかった。
「んだば、こっちの紫色の方は?」
「
……
うーん。わっかんないわね。さすがのあたしでも限度というものが
……
というか自分で考えなさいよ」
「ええ〜
……
分かんねえから聞いてんのに」
「言うわね!あんたのなんだから自分でどうにかしなさい!」
「まあまあ
……
」
売り言葉に買い言葉で言い合う俺たちとそれを止めるタロを尻目に、手紙の裏をじいっと見つめていたネリネがおもむろに手を挙げた。
「
……
ネリネ的にはシオンと予想」
「
……
シオン?」
聞き馴染みのない名前にネリネ以外の全員が言葉を繰り返す。頷いたネリネは薄紫色の押し花を指した。
「シオンはキク科シオン属の多年草で、押し花でもはっきりとした紫色の発色が特徴。それに
……
花には固有の花言葉があります」
「花言葉
……
ああ!そういうことですか!」
「タロ?」
ネリネの言葉からアオイの意図を理解したのか、タロはぱっと顔が明るくなりにこにこし始めた。
……
俺はまだ意図が掴めてないんだけど。
「スグリくん、人は誰かに花を送る時は、伝えたいことを花言葉に込めることもあるんだよ」
花言葉。伝えたいこと。
「直接じゃだめなのか?」
アカマツが不思議そうに尋ねてきた。
「アカマツくん!相手に上手く言えないことをあえて花に込めるのが強くてかわいいの!」
「強いのか!なるほど!」
アオイが、上手く言えないこと。
言葉がない代わりに押し花があるのはこれがアオイの言いたいことだからなのか。
……
タロの説明でアカマツがちゃんと理解したのかは分からないけれど。
もう一度写真の押し花を見やってからタロに向き合う。
「んだば、この花の意味って?」
「
……
えっと」
「
……
『遠くにある人を思う』」
「え?」
答えたのはネリネだった。
「
……
シオンの花言葉。複数意味は存在しますが。今回はもう1つ花があるため、ネリネは意味を組み合わせて考慮することを提案します」
アオイから貰った花。『遠くにある人を思う』。
刹那、スグリの心臓が大きな音を立てた。
これは俺宛に渡されたものだ。
んだば、遠くにある人は
……
俺?
さらに大きく鼓動が耳に響く。
答えに行き着きそうで行き着かないもどかしさに、耳鳴りがしそうな鼓動がさらに早まっていく。
「りんごの実はよく話とかで見かけるしあたしも知ってるけど、花に意味とかあるわけ?」
「果実の逸話から派生したものが存在するはず。調べます」
「ふーん。意味は?」
「
……
『選ばれた恋』『選択』」
「
……
え」
恋。
……
こい?
「きゃあ!かわいい意味ですね!」
タロが楽しそうに飛び跳ねる。
ネリネもねーちゃんも花言葉に盛り上がる女性陣はもう視界には入らなかった。
全身が熱くなって止まない。
全身に響く心臓の音がうるさくて仕方がない。写真を持つ手に汗が滲む。
「おーいスグ!
……
スグ?」
ねーちゃんの呼びかけも耳から遠ざかっていく。
アオイから貰った2つの花の花言葉。
……
『遠くにある人を思う』『選ばれた恋』『選択』。
回らない頭を必死に張り巡らす。
──もし。
もし、思われている『遠くにある人』が俺なら。
もし『選ばれた恋』の相手が俺なら。
アオイは、遠い場所にいる、俺のことが
……
好き?
友達としてじゃなくて?
友達だと思ってた。友達以上に思ってくれていた。
「うお!なんかスグリ、アツアツのりんごみたいだな!?」
アカマツの声が聞こえてもふわふわしている。
自分でもわかってる。顔が熱くなっている。困惑と歓喜で目眩がする。
アオイの「待ってるね」と言っていた。
アオイは俺を待っている。待ってるのは何?
もしも、待ってるのが『選択』なら?
最後の写真の意味は。
空白の日付の、意味は。
──アオイが待ってる先は?
「
……
なぁ、スグリよぉ」
しばらく黙っていたカキツバタの声が降ってきてハッと意識が戻る。
……
珍しく、名前呼び。
振り返ると、何かを企むように歯を見せ、肩を叩かれた。
「キョーダイへの餞、欲しくねえかぃ?」
*********
──アオイがブルーベリー学園からいなくなってから、一月が経った。
俺はというと、リーグ部でねーちゃんのスマホロトムのチャット欄を前に構えていた。
……
野次馬に監視され
……
見守られながら。
今日はアオイに伝える時だ。
アオイが写真に入れたメッセージ。それに対しての俺の答え。
……
多分、合ってると思う。そのために一月準備したんだし。
けど、いざ1ヶ月ぶりに連絡するって構えると、変に緊張してきた。
軽く深呼吸してからメッセージを打ってみる。
いつも俺の隣でメッセージしていたからなんとなく操作方法は知っている。けど。
不慣れなものは不慣れなもので。
どう伝えればちゃんと伝わるか分からない。アオイだからちゃんと言葉を選びたいのに。
「しゃしんさみた」「ありがとう」「つぎは」
……
そこまで打って、慌てて全部消す。
早く伝えたい興奮と慣れないスマホ打ちが中々噛み合わない。
……
わや
……
ねーちゃんがイライラしてる
……
。
貸出主の目は、横目に見ても明らかに座っている。口角はへの字に下がり、指先が急かすようにトントンこめかみを叩いている。
暗に急かされて無駄に冷や汗が出てきた。
ポチ
……
ポチポチ
……
ポチ
……
「えと
……
消すのがこれで
……
っあれ?文字の間に変な文字入っちまった
……
」
「
……
っだぁー!もうっじれったいっっ!!ちょっと返しなさい、こっちがイライラしてきたわ!」
「っうえ!?あ、ちょっと!」
慌てふためく俺を片手で遮り、ねーちゃんは慣れた片手で操作をしていく。
「遅すぎ!言いたいことがあんならさっさと電話にでも繋いじゃいなさい!」
「えっ!?で、電話は心の準備が」
「メッセージ打つくらい言いたいくせに変なところでナヨナヨすんじゃないわよこのヘタレ!ほらっ!」
スマホロトムが再び投げ返された時には手遅れで、しっかり通話が起動されていた。しかもよりによってビデオ通話である。
……
ねーちゃんのせいで通話に向かい合う息をつく間もないべ!
さらに冷や汗が流れた。
『
……
もしもし?ゼイユ?』
聞き馴染みのあるコロンと丸い声がする。
わやじゃ
……
繋がっちまった。
「っアオイ
……
?」
『スグリ!?』
ゼイユの通話からスグリが出てくるのは思ってなかったのか、アオイの目が開く。
『なんか
……
こう見ると久しぶりだね。どしたの?』
「あ、うん、アオイも
……
えと」
通話の起動主を探して視線だけで周囲を探すと、いつの間にかねーちゃん含む全員がビデオ通話に映らないように後ろに捌けていた。ネリネやアカマツは各々、応援してくれるようなジェスチャーを送ってくるが、姉とカキツバタは「は・や・く・い・え」と口パクをかましてくる。音がなくても行動がうるさい。
……
あ、タロが全員追い出した。
まるでお笑いみたいな流れに苦笑してしまう。
それはアオイも同じだったようで、画面越しにくすくす笑っている。
目を瞑ってゆっくり息を吸って吐く。向かい合う。アオイは最後に会った日と変わらなかった。
『変わらないね』
「んだな
……
ってそうじゃなくて」
閑話休題。本当に言いたいことはここからだ。
俺は押し花がされた最後の写真に目配せし、唾を呑み込んだ。
「
……
封筒さ、見た」
『
……
!うん』
「写真、ありがとう。林間学校で俺の代わりに撮ってくれてたのも、そうじゃないのも。アオイとの思い出、わやいっぱいで嬉しかった」
『
……
うん』
「
……
最後の写真も花も、見た。多分
……
アオイが伝えたかったことも、全部」
画面の向こうで押し黙るアオイが見える。表情は読みにくいけど、瞳の奥で微かに不安が揺れていた。
俺もちゃんと合ってるかは分からないけど。アオイのその不安を取り除きたい。
「
……
アオイ。これが、俺なりの答え」
スグリは机のペンを1本取り出す。
1枚だけ俺が知らない場所の写真を入れた意味。
日付の空白の意味。花言葉の意味。
アオイが「待ってる」と言った意味。
俺の学園から帰ったアオイが待っている先は。
きっとアオイが伝えたかったのは多分、こうだ。
写真の上にペンを走らせて、日付の空欄を埋めた。
その面を画面越しに見せる。
「次は俺がアオイに会いに行く」
アオイは息を呑んだ。
「
……
これ、次の交換留学の日付」
『
……
!』
「空白の日付と花で、こうかなって。俺だけじゃ無理だったから、周りに教えてもらったけど」
アオイの表情は固まっていて動かない。
「留学するのに成績優秀じゃねえといけなかったから、俺けっぱってまたチャンピオンになったんだべ」
『えっ!?早いね!?』
「1回なってるからな」
アオイの丸くて大きな目はさらに丸くなった。こっちはもっと予想外だったみたいだ。ちょっと嬉しくなった。
「わたしのところにも遊びに来て」。
多分これが答えだ。
なら、アオイからもらったメッセージに応えたい。
「──な、アオイ。俺元々、アオイに会いに行く予定だったんだ。
……
林間学校が最後だと思ってたから」
「
……
」
「でも、アオイがいつも先に俺のとこさ来てくれたな」
元々強くなってから会いに行くつもりだった。
林間学校を終えた日の覚悟があったから実際ポケモンバトルでは強くなれた。
でもアオイはまた来て、俺より先にこちらに来て、自分の勘違いを壊しに来た。
「今度は、今度こそは
……
俺がアオイの横で、アオイの世界を見たい」
『
……
!』
俺が生きるキタカミにアオイが来てくれたみたいに。
看板を巡って、りんご飴を食べて、ブルーベリー学園に来て、エリアゼロで一緒に一緒に戦ったみたいに。
ただ背中を追うだけじゃなくて、アオイの隣で。
……
どうだろうか?
伺うように目線を向ける。
アオイは下を向いて
……
何かを噛み締めた後、こちらを見て確かに嬉しそうに朗らかに笑った。
──当たった。
『
……
来てくれる?』
「もちろん」
『スグリと行きたい所、たくさんあるんだよ。写真の学校はもちろん、テーブルシティで遊びたいし、ナッペ山も登りたいし。パルデアはご飯が美味しいんだよ!それに、私の友達にも会ってほしい!』
ここでいう友達はネモやペパー、ボタンだけじゃないのだろう。アオイの友達はほんとうに沢山だ。でもそれがアオイだ。
「ほんとにいっぱいだなあ」
『あ、あとエリアゼロも!』
「エリアゼロも?」
「スグリと一緒ならどこだっていけるよ」
……
ああ、アオイの中では、アオイが行きたいところに当たり前みたいに俺を入れてくれるんだな。
きっとこれからずっとこの感情を噛み締めていくんだろう。
それが嬉しくて仕方なかった。
「
……
んだな」
俺もアオイがいるならどこだって。
『だから
……
待ってるからね、スグリ!』
「うん。待っててな、アオイ」
そう返すと、彼女は画面の向こうで太陽みたいな笑顔をこぼしていた。
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