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燈 ともしび
2026-05-26 21:06:06
3860文字
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ぎゆさね♀【甘い時間】
現役軸。血鬼術でにょた化した🍃さんのぎゆさね。
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「匿ってくれ」
朝日がすっかり昇って明るくなった時刻。
もう鬼は出てこられない時間だというのに匿ってとは? と思いつつも、相手が恋仲の不死川だったのですぐに中へと通した。
理由などなんでも良かったのだ。お互い柱という立場上、多忙でなかなか会えない相手だからこうして顔を合わせて触れられる機会ならなんでも嬉しい。
けれど、いつものように抱き寄せた不死川は妙に軽く、おまけに羽織を頭から被っていて脱いでくれない。気配からして不死川なのは間違いないのだが。
「不死川」
名を呼べば、不死川は動揺したように身体を揺らして、そして観念したように頭から羽織を降ろした。
次に動揺したのは俺の方だった。
そこにいたのは確かに不死川ではある。釣り上がった瞳も長いまつ毛もふわふわの白い髪の毛も見慣れたものだ。けれどどう見ても大きさがいつもより小さい。小さいというより、細い。華奢と言えば良いのか。
「血鬼術か」
「当たりィ。クソッタレ隊士の奴が逃げ損ねてよォ」
どうやら不死川は下級隊士を庇って血鬼術を浴び、このような姿
……
女性に変えられてしまっているらしい。
「蝶屋敷には」
「もう行ったァ。解除方法は時間経過だとよ」
なら太陽の光を浴びていれば解除される類いだ。そんなに心配しなくても大丈夫なようで安心した。
改めて両腕を広げると不死川はその中へと飛び込んでくる。いつもより軽いので羽のようだ。筋肉は付いているが、細いから抱きしめれば腕が余る。
「なんかいつもより包まれてる感じするゥ」
「まあ、だろうな」
夜が明け日が昇り、邸担当の隠も帰して少し寝ようとしているところだったので、今ここには二人きりだ。遠慮なく抱きしめ合う。
俺は不死川の滑らかな頬や張りのある首筋に口付けをするのが好きだったが、大きさ的にいつもよりも届きやすく、この際遠慮なくあちこち吸って舐める。
「ばか、やだァ」
不死川も言葉では嫌がるものの、くすくすと笑いながらなのでこれは二人の戯れでしかない。
「そう言えば」
「あ?」
「先ほど匿ってと」
「
……
ああ」
鬼ではないだろうし、何から逃げていたのか。気になって問えば
「助けた隊士の野郎がよォ、責任取って娶りますとか変なこと言い出しやがって」
「は?」
「蝶屋敷まで着いて来たんだよ。んで結果も伝えて大丈夫だから帰れェって言ったのにそこからずっと追いかけてきてしつこくて」
抱きしめていた不死川の身体を離し、改めてその姿をまじまじと見つめる。先ほどはいつもの不死川が縮んだだけのように感じていたが、よく見れば見るほど不死川は美人だった。
細いのに出るところは出ている肢体も、大きくてまつ毛の長い猫のような瞳も、小さくて形の良い鼻、ツンと上向きの唇も全て魅力的に見える。
俺は不死川という人間が好きなのでいつもの不死川も今の不死川も両方愛しているが、この姿はあまり異性に免疫のない若い隊士ならば惑わされてしまったとしてもおかしくはない気がする。
「俺も今は少し筋肉落ちてるから逃げた方が良いって思って。で、冨岡んちに行けば流石に諦めてくれるかなって。あいつも柱二人を敵に回す勇気はねェだろうし」
腕の中から不死川を離し、閉めていた障子を開ける。竹垣の向こうに黒髪の頭が見えた。多分、あれがその隊士だろう。不死川に断られてもしつこく迫り、尚且つ恋仲である水柱邸に逃げ込んだのにまだ諦めずに周囲を彷徨いている、だと。
そのまま門まで出て行く。まだ隊士服のままで良かった。
「ここで何をしている」
黒髪の後ろ姿に声を掛ければ、若い隊士は飛び上がって驚いた。
「み、水柱様! いや、そのこれは」
「何をしているのかと聞いている」
「
……
風柱様をお見かけではないですか?」
おずおずとそう問いかけてきたが、その姿が更に俺の怒りに火を注いだ。こいつはまだ全然諦めてなどいない。それどころか柱である俺にまで行方を聞いて再び不死川を追いかけ回そうとしている。
「風柱ならうちにいる」
「! あの、俺、いや私は風柱様にどうしても伝えたい用がありまして!」
次の瞬間、隊士の身体は地面に伏せて押さえつけられていた。無論、水柱の手によって。
「風柱はお前に用などない。分かったのならとっととここを去れ。もしまだ追い回すのであれば俺にも考えがある」
隊士は的確に押さえつけられ、更に肩のあたりに力がかけられている。これは警告だ、俺からの。
風柱に手を出そうとするならば容赦しない。
それは本気の。
少し力を抜いてやれば、隊士は慌てて謝罪し、そして駆け出して行った。
女になった不死川の色香に目が眩み、そしていつもよりも力が弱くなっている今ならば俺でもと卑怯な考えになったのだろう。俺もとても大人気ないとは思うが、大切な相手をそんな風に侮辱されて怒らないはずもない。
軽く砂を叩いて立ち上がる。あいつの顔は覚えた。次はない。小さくなっていく後ろ姿を睨みつけた。
邸内に戻れば、勝手に俺の浴衣に着替えていた不死川が手を叩いて笑っている。
「あはは。大人気ねェなァ、水柱ァ」
本人は楽しそうだが、俺は全く笑えない。お前は自分の魅力にもっと自覚を持てと言いたい。
そこで俺の中の何かが切れた。
無言のまま浴衣姿の不死川を米俵のように肩に担ぎ上げる。
「え」
不死川は驚き、降ろせとばかりに俺の背を叩いてくるが全て無視した。
「大人しくしてろ。いま俺は猛烈に怒っている」
「
……
えっとォ、誰にィ?」
「そんなことも分からないのか。ならば分からせてやろうな、よーく分かるまで。その身体に」
肩から垂れ下がる、不死川のつるすべな素足を意味ありげに撫で上げてやると不死川は大人しくなった。やっと諦めたのか。いや、
「期待したか」
わざと楽しげに言えば、不死川は顔を真っ赤にして今度は俺の頭を叩いてくる。
「不死川は俺に抱かれて気持ち良くなってれば良いんだ」
「助平がァ」
反論しつつも、不死川はもぞもぞと動いて俺から降りて。そして両腕を広げて抱っこを強請る。
「連れてって」
顔はまだ赤いが、不死川も笑っているから俺も笑ってその身体を今度は正面から抱き上げた。
「どんな姿の不死川も可愛いな」
下から口付けをすると
「
……
恥ずかしい奴ゥ」
と、最後は俺の首筋に顔を伏せてしまった。
まだ日は昇ったばかり。時間はたっぷりとある。
ここからは、二人の時間。
二人だけの、甘い時間。
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