ne🌟
2026-05-26 13:47:35
5360文字
Public 高諸
 

スポットライトのその先へ

忍ミュで脳が焼かれた役者パロ


モブ女視点のおまけ

今日も今日とて一日の労働を終えた私は、風呂という一大仕事まで済ませて一日の楽しみであるネットサーフィンに勤しんでいた。
疲れた心を癒すのは推し。
日々、活力を投稿して下さる二次創作作家様たちには頭が上がらない。

新着投稿に片っ端から目を通していると、画面上にメッセージアプリの通知が表示された。アイコンは親友。アニメオタクの私と違い、彼女は俳優沼にどっぷりのオタクだ。浸る沼は違えど推し語りから何まですべて付き合ってくれる大事な親友である。

『ちょっと話を聞いて欲しい』
『これは私ひとりじゃ受け止められない』

トーク画面を開くと、何やら不穏なメッセージが届いていた。生身の人間を推すって大変だよな。ちょっと前までは忍劇見て一生推すって言ってたのに。

『聞く聞くどしたー?』
『でんわー?直が良いなら明日の仕事後もいけるよ』

送ったそばからすぐに既読がつく。多分トーク画面を開きっぱなしで私の返信を待ってたんだ。でも彼女の推しって熱愛報道とか出てなかったような、ということに気が付く。

『いつもの店、明日の19時から』
『何卒、お願いします』

仕事が早い親友は予約完了のスクリーンショットを送りつけてきた。まぁ、なんにせよ明日話が聞ければ、相談事の答えが分かるわけだからあまり深くは考えない。了解の意味でスタンプを送ると、私はまた新着投稿漁りを再開した。

「推しに女の影がある」

開口一番。最初のオーダーを終えた瞬間に親友、もといサナはテーブルに突っ伏した。

「え〜?考え過ぎじゃない?どのへんがそう思うの?」

やっぱり今日の議題はサナの推しについてだった。
彼女の推しである高坂陣内左衛門(変な名前と言ったら怒られた)はモデル兼舞台役者だ。最近はかの有名な長編舞台「忍劇」にも出て話題になってた。
だけど私が知る限り彼が週刊誌にすっぱ抜かれたり、婚約を発表したという話は聞いていなかったはず。

「これ、みて」

渡されたのはサナのスマートフォンSNSアプリで、予想通り高坂のマイページが表示されてた。とりあえず彼の投稿を読んでみる。
結論から言うと、彼の投稿は常に『誰か』についての内容だった。
絶対にその『誰か』の投稿にも拘らず、名前は出さない、顔は見せない徹底した投稿は、「匂わせ」にしか感じない投稿の数々だった。
これに「女の影」といったサナの気持ちは十分に分かる。だが、私にはどうしても突っ込まなければならない点があった。

「この写真に写ってるの、男だよね」

たしかに被写体は高坂よりは小さくて華奢そうだが、服装や体格は間違いなく男だった。邪推したくなる気持ちも分からなくはないが、冷静に見ればちょっと仲が良いお友達同士って線も無くはない、はず。

「甘い。我らがそんな安易な推測だけで、事を結論づけると思わないで」

我らって何よ。
サナは私からスマートフォンを引っ手繰るとまた何やら操作している。運ばれてきたドリンクが飲みたいけどまだ乾杯してないしなぁ。早く終わらないかなと眺めていると再び画面を見せてきた。

「この子、そんそん。高坂君の投稿に写ってる子ね。忍劇で彼の弟役だったの」

同じSNSの、今度はそんそん?のマイページから直近の投稿を拝見する。どれどれ。彼の投稿は舞台の宣伝もある中で、合間合間に日常の投稿が垣間見れた。

『今日は陣君とドライブしてから現場入り』
『天気がいいから公園で一緒にお弁当食べました』
『今日はご飯を作るのを手伝ってくれるみたいです』

とまぁ、ツーショットだったりそうじゃなかったり、写真をメッセージ付きで投稿してあった。投稿内容もアレだが、ここであえて触れるなら、ピンで写真に映っている時の高坂の表情。
雑誌で見るようなキメ顔ではなく、写真を撮った人物であるそんそんに向けた視線。それが見ているこっちが恥ずかしくなるような甘く優しい視線で。

「これは黒ですわ」
「そうなんですわ」

そう言って彼女は泡が無くなったビールを一気に飲み干した。乾杯まだだよ、と思ったけど、寛大な大人なので傷心中の彼女の暴挙は許してあげることにした。