とむぢ
2026-05-19 03:41:24
3771文字
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ストレス解消法について/A▲▽,S▲▽,G▲▽

タイトルのまま。短文×3
甘さはA▲▽>G▲▽>S▲▽の順で甘い。A▲▽に至っては付き合ってるかもしれない。


ストレス解消法について/S▲▽

 今日はダメな日だ。なにをやっても上手くいかない日だ。ノボリは職場から家に帰ると、早めに部屋へ引きこもった。疲労が溜まっていたからと言って、弟にあんな言い方をしなくても良かった。弟の毒舌なんて日常茶飯事なのだから、いつもみたいに軽くスルーすれば良かったのに、今日はそれが出来なかった。
 マルチトレインで行われたタッグバトルにて、ノボリはオノノクスに持たせておくべき木の実を持たせ忘れていた。先日クダリの提案で違う戦術を試してみたので、オノノクスから木の実を預かっていたままだったのだ。それでも2vs2の状況に慣れているクダリのフォローがあった事と、ノボリも機転を利かせる事ができてなんとかサブウェイマスターの勝利となった。挑戦者たちはノボリがポケモンに持ち物を持たせ忘れていたなんて、気付きもしなかっただろう。やっぱりサブウェイマスターは強いなぁ、なんて言いながら電車を降りていった。
 バトルが終わった後、ノボリがクダリに謝ろうとしたら、クダリから『あのね、お降りの際はお忘れ物がございませんようご注意ください!』と流暢な皮肉が飛んできた。それだけでも結構なダメージを受けたノボリだったが、その後もスーパートレインに連れていく手持ちのポケモンを間違えたり、部下の名前を呼び間違うなど、些細なミスを連発してしまった。トドメは帰り際のクダリの一言だった。
『今日のノボリ、ダメダメだね』
 そんなことはノボリ自身が誰よりも一番よく分かっていることだ。なのでつい声を荒らげてしまったのだ。──誰のせいで、と。
 部屋にこもってノボリは頭を冷やした。自分の調子が悪いのは、誰のせいでもない。ましてやクダリのせいでもない。うっかりしている自分が悪いのに、こんなことで弟に当たったりして最低だ。これ以上クダリを傷付けないよう、あえて距離を置いていたノボリのもとへ、クダリから会いに来た。ノボリの部屋のドアをノックする。心優しい兄は例えどんなに凹んでいても、このドアを開けてくれるとクダリは知っていた。案の定ドアが控えめに開いたので、クダリはノボリに向かって両腕を広げる。
「なんの真似ですか」
「あのね、ハグ。これするとストレスが減るんだって」
 一体誰からそんな知識を教わったのやら。何人か思い当たる顔がノボリの脳裏に浮かんで、溜息を吐いた。
……あとね、これで仲直りが出来るらしいよ。ノボリがだめだめなの、ぼくのせいだったから、ごめ」
 最後まで言い切ることはクダリには出来なかった。ノボリが勢いよくクダリを抱き締めたからだ。強く、息が苦しくなるほど強く、目の前の何より大切な存在を胸に抱き寄せて確かめたからだ。
「謝るのはわたくしのほうです。クダリ、申し訳ございません。そしていつも、ありがとうございます」
 ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる兄の身体が重たくて、だけどその重みがこんなにも温かい。安心したクダリは目を伏せて、その大好きな背中に腕を回した。
「あのね、10分100円だよ」
「お金取るんですか」