とむぢ
2026-05-19 03:41:24
3771文字
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ストレス解消法について/A▲▽,S▲▽,G▲▽

タイトルのまま。短文×3
甘さはA▲▽>G▲▽>S▲▽の順で甘い。A▲▽に至っては付き合ってるかもしれない。

ストレス解消法について/A▲▽

 今日は家に帰れたから、久しぶりにキッチンで料理していると肩付近に成人男性の頭一つ分の重み。兄の好物を作っていたクダリは、怪我をするといけないのでその手を止めて背後の愛おしい重みに話し掛けた。
「お疲れさま、ノボリ兄さん」
 耳に優しく響くその声にノボリは何も声を発さなかった。ただ後ろからクダリを抱き締め、鼻先を首筋に埋めている。擽ったさを感じながら、クダリは自分の腹のところで組まれているノボリの手に触れた。何やら床の方から視線を感じるのでそっちに目を向けると、ポケモンフードのおかわりをねだりに来ていたデンチュラと目が合った。余程美味しかったのだろう。あとであげるね、とクダリが口パクで伝えると、利口なデンチュラはテーブルの下へ隠れていく。まずは自分の後ろにいるひっつき虫の方をなんとかしないといけない。どんなときも冷静で格好良いけれど、たまにオーバーワークでパンクしてしまう兄を、いっぱい甘やかす。きっとこれもまた弟の役目だ。
「今ノボリ兄さんの好きなシチュー作ってるんだけどなあ。まだ野菜も切れてないのに、どうしようかなあ」
「クダリが良いです」
 心臓がギュンッと鳴って危うく口から飛び出そうになるのを、クダリは口の内側を噛んで我慢した。おかげで歪な笑顔になったが、どうせ今は顔を見られない体勢なので良しとする。
……クダリの作るシチューもあとで頂きますので、今だけ、少しだけ、こうさせてください」
 随分お疲れ気味なノボリにくぐもった声でそんなことを言われてしまっては、クダリに残された選択肢はYES一択だ。クダリが心身ともに疲れきったとき、クダリ本人よりも早くその限界に気付くノボリがいつもそうしてくれているように、今夜クダリはノボリをとびきり甘やかすことを決めた。甘やかし方はノボリの方がきっと上手いだろうけれど、自分だって同じ血が流れているのだ。下手くそではないと信じたい。
「ノボリ兄さんいつもすっごく頑張ってるから、今日はなんでも言っていい日だよ。なんでも欲しがっていいんだから」
「いけません。クダリを困らせてしまいます」
「もう既に料理中だったぼくを拘束して困らせてるのに?」
……それは……
「冗談、全然困ってないよ。寧ろノボリ兄さんが疲れたときにぼくを頼ってくれて嬉しいんだ。だからなんでも言ってほしい。……ダメかな?」
 いじらしくて可愛い兄が珍しいので、少しだけ意地悪をしたい気分になったクダリだが、それも長くは続かなかった。背後から伝わる気配だけでノボリがシュンとしたのが分かったからだ。すぐさま訂正する。そして言われたことをなんでも叶える姿勢を見せた。するとノボリがクダリを抱き締める力を強くする。ちょっとだけグェッとなったが、クダリが咄嗟に腹筋に力を入れたので情けない声は出ずに済んだ。良かった。
……本当になんでもよろしいのですか?」
「もちろん! 男に二言は無いよ! ぼくに出来ることならなんでも言って!」
 それではお言葉に甘えて……。ノボリに耳元で囁かれた可愛らしいお願いの内容に、クダリの頬は緩みっぱなしなのであった。