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ロンド
4067文字
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くにぐに
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愛しのマオミー(香氷)
#香氷春のキス祭り
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電話する話※未完
くぁ、とアイスはあくびをかみころした。
時刻は午前二時十五分。春の訪れを祝うという名目で始まったどんちゃん騒ぎも終演。死屍累々の酔っぱらいたちは、仲良くカーペットの上で夢の中。
デンとスーはヴァルハラに行っているのかお互いにがっちり胸ぐらを掴んだり腹に膝鉄が入ったりしたまま。フィンはへにゃへにゃのゆるい顔でよだれを垂らして、ヘソ天の花たまごを抱きしめている。力付くでソファをぶんどったノルはなぜかきっちりと硬直してうつ伏せ。吐いたりしないだろうか。近づけば抱き込まれることは想像に難くないので、アイスは毛布を投げて終いにした。
ついでにパフィンもテーブルで腹を出してぐうすかといびきをかいている。つくづく鳥であることを忘れたかのようなおっさんじみた鳥だ。
「
……
仕方ないひとたちだなあ」
酒瓶やつまみの皿などで散らかった部屋は明日みなに片付けさせるとして、一人自室で寝るかとアイスはリビングに背を向けた。
そのまま二階に上がろうとして、ふと思い立ってキッチンに逆戻りする。
冷蔵庫からコーラのボトルを取って、コップを出す手間も惜しんで直接ラッパ飲みした。パチパチと弾ける甘い炭酸を半分ほど胃に流し込むと、ようやく頭がはっきりとしてきた。
いつのまにやら、コーラを手に持ったまま裏庭に出ていた。春先の風がほてった頬を撫でていくのが気持ちがいい。パンケーキのような月がやわらかな光を地上に下ろしている。アイスは尻ポケットに詰めていたスマートフォンを手に取り、チャットアプリをタップしていた。
プライベートなスマートフォンでもアプリの「友達」はそれなりに充実していて、いちばん上は北欧メンバーの集合を報せるグループチャットだったが、軽くスクロールしていく。おめあてはすぐに見つけられた。いつか遊んだ遊園地のローラーコースターをバックに、彼は満面の笑みを浮かべてピースしている。
一コール、二コール、三コール目が鳴り終わる前に通話画面に切り替わった。
『Hey, アイスー?』
不思議そうに間延びした声を聞いて、なぜだか笑いが込み上げそうになり、アイスは耳にスマートフォンをくっつけたままくつくつと喉を鳴らす。
「こんばんは、香。いい月夜だね」
『こっちぴかぴかの雲ひとつないモーニング的な。どおした?』
「べつに、用なんかなくたっていいでしょ」
『まあ、そうなんすけど』
訝しむように香が相槌をうつ。雑音混じりに聞こえていた音楽がぷちんと消えて、香の声がずっとクリアになる。
『アイスが電話くれんのめずらしかったから、意外な感じ』
「なにそれ。たまには僕から電話してあげたら香は迷惑?」
地球半周分、時差にして七時間の彼方にある香があまりにも無邪気に面白がっているようなので。アイスは眉を寄せて拗ねたような返事をしたら、香は「ぶはっ」と吹き出した。
『めんご、切らないで。超うれしい』
「ほんと?」
『ホントホント』
「ほんとなら、香から電話切らないでよ。なんでもいいから喋ってて。僕、香の声聞きながら寝るから」
『そんなひどい的な!』
「うそ。いま外だもん。風邪ひいちゃう』
『どこ? もしかして散歩中?』
『中庭だけど、香が云うなら散歩してこようかな』
「ステイ。いくらアイスん家だからって夜中の徘徊なんかするもんじゃない的な』
「大丈夫だよ、今日は月もあかるいから」
外出したいかと云えば、無理にしたくはないけれど。思い立って空港まで車で飛ばして香の家に行こうと思っても、今夜の最終便はとうになくなってしまっただろう。
「でも、香がだめって云うなら、やめる」
脈絡のない思考が頭をめぐる。なんていうか、気分がいいのだ。いまは。香が訝しむように唸った。
『それならいいけど、
……
実は、アイス酔ってる感じ?』
「そうかも」
なにせめずらしく兄が先に潰れたので、フィンに勧められるがままアイスもぱかぱか酒を開けていた。エール、ワイン、アクアビット、貰い物のシャンパン、それにビール。デンがチョイスするレコードの陽気なBGMも拍車をかけた。しかも明日も休日だ。用意したつまみがなくなるとポテトチップスで摘まんでいたとように思う。
皆が静かになってしまい、ふわふわと気分良く孤独な時間を噛みしめていたが、片付けもそこそこに春の夜風を浴びたくなり、いつしかたまらなくなって香に電話をかけていた。あきれたような香の声にすら、わけもなくくふくふと笑いがこみ上げてくる。
『アイス酔うとそんなんなるんだ。初めて知った系』
「普通だよ。香みたいに脱いだりしないし、脱がしにかかったりもしないし」
『それは永久に忘れてくれてオーケーな感じ
……
。なんか悔しい的な。いまのアイス見れなくて』
「いま電話してるじゃない?」
『酔ったアイス超貴重だから直接見たい、つーか写真に収めておきたい的な』
「切ろうかな」
『待って、ごめんって。俺ん声聞いて寝るんじゃない感じ』
「だって香がいじわるする」
香が慌てるのが面白くて、拗ねたような声を出したつもりが思ったよりも子供っぽいような気がした。
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