暴虐かつ悪趣味、そして勘違い野郎な楠木武一等陸佐が恥をかく物語の通算126話目。いくら美術館に行くのが趣味の私でも「楠木美術館」は絶対嫌だ。あと残忍描写濃い目なので閲覧注意。
不動産業をはじめ幅広く事業を展開する
楠木力は社会貢献活動の一環として美術品、文化財の保護に力を入れていて、彼が代表取締役社長を務める「くすのきホールディングス」はつい先日京都府の大山崎町から
大山崎山荘美術館の
指定管理者に選任されたばかり。ちなみに現実世界だと大山崎山荘美術館は指定管理者制度が出来る前からアサヒビール株式会社(現アサヒグループホールディングス株式会社)が管理し続けているのでこの物語のように他の法人が指定管理者になることはまず無い。
「素晴らしい!実に見事な庭園だ!こんな田舎には勿体無いぐらいだ!力、今日は思う存分楽しませて貰うぞ、グハハハハ!」
視察に無理矢理同行してきた双子の兄、
武が大山崎山荘美術館の敷地内に入った途端に下品な声を上げ大笑いし他の来館者達の眉をひそめさせ、今までその兄のやりたい放題を黙認し続けてきた力も困り顔。一等陸佐の階級を持つ幹部自衛官の武は旧日本軍の将校宜しく口髭を生やしていて、事あるごとに部下に暴言を吐き暴力を振るう粗暴さも完全に旧日本軍の上官のそれ。
「た、武兄さん、き、喫茶室に行こうか。あそこのケーキの美味しさを兄さんにも是非味わって欲しくて。」
「おぉ、気が利くな!流石我が弟!では早速行こう!俺も入館料はタダで良いな!」
「もっ、勿論だよ、武兄さん。兄さんも視察扱いだから僕同様タダで入れるよ。」
弟力の気苦労など全く意に介さず武は本館2階の喫茶室へと向かう。武の少し後ろを歩く力は己の顔中に付着した双子の兄の唾を拭くのに一生懸命。それにしても弟力に自分の入館料を無理矢理タダにさせた武の図々しさときたら。
喫茶室に足を踏み入れた楠木兄弟ではあるものの、店員からテラス席が満席と聞かされ短気な武が早くも怒り心頭。
「申し訳ございません。ご覧の通り室内の席なら空いております。テラス席をご希望でしたら他のお客様同様こちらでお待ち下さい。」
「わざわざ陸自の仕事休んで視察に来た俺を凡百の客共と一緒くたにするな!大体このド田舎の美術館が毎日やっていけるのは幹部自衛官であるこの俺が毎日汗をかきこの国を守り続けているからだぞ!そんな俺に対し最大限の敬意を示すのが筋というものだ!筋を通さんかぁ!」
筋を通さないといけないのは武、お前だろ。
「武兄さん、室内の席にしよう。」
「何を言うか!俺は力、お前をテラス席に座らせない無礼な店員共に抗議しているのだぞ!弟を想うこの兄の気持ちに水を差すな!足を引っ張るな!」
自分のワガママを押し通したいだけなのに良い兄ぶるな、この自衛隊ヤクザが!
結局店側が武の恫喝に折れ、楠木兄弟はテラス席に座れることに。このテラス席からは天王山と男山に挟まれた狭隘な平地に木津川、宇治川、桂川の三川が流れている様子を満喫出来る、晴れている日なら京都府南部は勿論奈良県北部の山々まで。
「お、お待たせ致しました。期間限定のアイリス・ケーキとホットコーヒーのセットでございます。」
楠木兄弟が座るテーブルにケーキセットを届けた店員の声が震えているのは先程武に怒鳴られたからだろう。お気の毒に。高名な印象派画家クロード・モネが描いた
《アイリス》をイメージしたアイリス・ケーキは紫芋を使用し刻んだラムレーズン入りのパウンドケーキに紫芋パウダーをかけバタークリームとさつま芋ダイスをトッピングしている。ラム酒を使用しているためアルコールが苦手な方はご注意を。折角なので大山崎山荘美術館の喫茶室にてアイリス・ケーキを頂いた際に撮影した画像を貼っておこう。
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