七海ななみ
2026-05-08 06:52:50
3378文字
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大団長が僕に堕ちない!③

ルカキリ。自分に落ちない人はいないと信じて疑わないフリンズと、初めてフリンズに落ちなかったファルカのお話。フェイの捏造あり。
フリンズ、甘いこと言ってるなあ。

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大団長が僕に堕ちない!① | Privatter+ https://privatter.me/page/69f87f0acb19c
大団長が僕に堕ちない!➁ | Privatter+ https://privatter.me/page/69fb392f49f9f

恋を自覚したら何をすべきか。答えはアピールだろう。アピールは既に実行しているが、鈍感のあまり全てスルーされているのだ。
冷静になって考えたら、服を脱いだりとかなり無理矢理なアピールをしていた。露出でも堕ちないなんて、後は何をすればいいんだ。
………デート、とか?
ボンッ! と顔が熱くなる。でも確かにデートしたことはなかった。普段はフラグシップで飲んでいただけだから、デートらしいデートでもなかっただろう。
デートに誘ったら、片思いであることが、バレるのではないだろうか。

えっ、俺の事、好きだったのか? ……すまん、俺は最高の飲み友達としか思ってなくて』

こんな風にフラれたりしないだろうか?!
いや、僕は百戦錬磨の経験がある! 今こそ経験を生かさなくてどうする!
考えろ! デートっぽくて、尚且つデートとして察せられないようなデートコースだ!
そうだ、近々、骨董市が開催される筈だ!
普段から骨董品を見ているし、一緒に来ないか誘うのはいいかもしれない。
目的のデートっぽくて、尚且つデートとして察せられないようなデートコースではないか!
よし、そうと決まれば行動あるのみだ。後はファルカさんを誘えば……
どうやって、誘えばいいのだろうか。
我ながら頭を抱える。恋愛初心者すぎる。百戦錬磨の名前が聞いて呆れるような状態だ。
恋って、本当にやっかいだな。


────────


「骨董市? いいな、一緒に行くか!」

よし! 上手く行った!
心の中でガッツポーズをする。何て事ない。普段の態度で行けばなんとかなった。内心物凄く動揺していたが。

「せっかくだから色々と話を聞かせてくれ。フリンズは博識だから解説してくれると助かる」
「おまかせ下さい」

よし、いいぞ! 骨董品収集の趣味が生きている!
ファルカさんと別れ、帰路につく。足取りは軽やかだ。いけない、いけない。ちょっと落ち着いた方がいい。
でも、嬉しいのだ。ファルカさんにとってはデートでなくても、僕にとっては初デートだ。
気分が高揚する。早くデートの日が来ないか、日々をそわそわとして過ごす。早く、早く、デートしたいな。
恋ってすごいな。こんなに楽しくなるなんて。
今まで、堕としてきた人達も、こんな気持ちだったのだろうか。
……ファルカさんと恋が実るかはわからない。でも、この悪い癖はもう止めよう。恋というものを知った今、どれだけ酷いことをしてきたのか、ようやく自覚ができた。この想いが消えてしまうなんて、今の僕には耐えられないのだから。


───────


ついに来た骨董市の日。
服装を変えると気合いが入ってると思われそうなので、身嗜みだけ整えてきた。埃とり、アイロンがけ、肌や髪、爪のお手入れ、これくらいができる範囲だろう。
待ち合わせ場所に早めに着く。時計を見ると30分も前だ。浮かれすぎだろ、僕。
ただ待ってるのも暇だし、作戦でも練っているか。
今回の目標は「少しでもデートと思ってくれる事」。まだ距離を詰め始めたばかりだ。いきなり告白しても断られる可能性が高いだろう。
ただでさえ鈍感なのだから、デートという認識を持たせるだけでも、大きな目標だ。
決して、へたれてるだけではない。

「フリンズ、もう来てたのか! 悪いな、遅くなって」
「いえ、骨董市が楽しみ過ぎて早く到着しただけです。ファルカさんが謝ることはありませんよ」

よし、良い感じに言い訳ができたな。
自覚してもらうなら、言い訳をしない方がよかったのではないか?
い、いや! まだ挽回できるチャンスはある!
心の中で気合いを入れる。大丈夫、僕は百戦錬磨だ!

骨董市で骨董品を見つつ、ガイドに徹底した。ファルカさんには少しでも楽しんで貰いたい。だからこそガイドに力を入れた。

「流石フリンズ。博識だな!」
「ファルカさんに褒めて頂けるとは、光栄です」

よし、博識アピール成功! 心の中でガッツポーズをする。

「お、あれは酒器か?」
「あれは璃月の物ですね。近くで見てみましょう」

店主の説明曰く、最近発掘された骨董品で500年ほど前の物のようだ。酒器が対に作られている事から、夫婦で使用された酒器である可能性が高いと。
夫婦、か。ファルカさんの顔を見てしまう。
僕達は同性だ。一般的な夫婦とはかけはなれているだろう。ファルカさんも立場がある方だ。同性の婚姻は許されない事かもしれない。
わかってはいる。悪癖だった僕が、釣り合わない事くらい。胸が痛む。でも、諦めたくない。

店主、これ良い酒器だな。購入できるか?」
「そうですねえ。これくらいなら」
「悪くないな。買った!」

え、ファルカさん、酒器を買ったのか?! だ、誰と使うんだ?!
予想外の出来事に、頭が混乱してしまう。

「あ、あの、そちらの酒器、どうされるのですか?」
「何って、贈り物として買っただけだ」
「ど、どどど、どちらに贈るのでしょうか?」

動揺のあまり声がどもってしまう。あまりにも気品の欠片もない姿だ。でもなりふり構ってられない。ライバルが出現したのかもしれない危機なんだ!

「なんだ、そんなに知りたいのか。そうだな、少し移動しないか?」

手を掴まれる。ファルカさんと、手を繋いでいる?!
や、やばい! 脳が沸騰しそう! 手袋が手汗で滑って来ている!
ファルカさんにされるまま、連れて行かれるのだった。


────────


ファルカさんが立ち止まる。骨董市から離れ、人気のない場所に移動したようだ。

「これ、やるよ」

目の前には先程購入した酒器を詰められた箱がある。僕への、贈り物、だったのか?

「これ、夜明かしの墓に置いといてくれ。俺が来たときに一緒に使おうぜ」

それって、僕と、夫婦になりたい、そういう事なのだろうか。
顔が熱い。心臓がうるさい。
これは、告白しても、いい雰囲気、なのではないだろうか。
ファルカさんは鈍感だ。告白した方が、意識して、貰えるかも、しれない。
勇気を出せ! 口を開くんだ!

「俺は近々、モンドに帰還するから、ナドクライに戻ってきたら、その酒器で酒を飲もうな!」

開こうとした口から音は出ず、息を小さく吸い込むことしかできなかった。

「フリンズ程の最高の飲み友達は、ナドクライじゃ他にいないからなあ! 夫婦でもないけど、親友に渡すのも悪くないだろ?」

熱を持っていた頭は、急激に冷えていく。
他意もない話だ。モンドに帰還する前に、また飲む約束として、親友に酒器を渡した。それだけの話だったんだ。
ただ、僕が浮かれていただけの事なんだ。

…………こちらに、……もどって、………くるのは、…………いつに、なりそう………、なんです、か?」
「モンドで仕事も溜まってるからなあ。年単位はかかるかもな。向こうからは遠征に出ないでくれとも言われているし、説得に時間はかかるかもな」

数年は、会えなくなる。
立場のある人だ。二度と戻って来れなくなる可能性も、ある。
………嫌だ!!
なりふり構わずすがり付く。ガシャンと音が響いたが、それどころではない!

「か、かえらないでください! ファルカさんが、すきなんです!! ひとりに、しないでください!!」


───────


「か、かえらないでください! ファルカさんが、すきなんです!! ひとりに、しないでください!!」

渡した酒器を投げ捨てて、俺にすがり付く。
だけど、まだだ。もう少しだ。

えっ、俺の事、好きだったのか? ……すまん、俺は最高の飲み友達としか思ってなくて」

もう少し。もう少しだ。

……おねがいです! こころはなくてもいい! からだだけでも、いいから、どうか、どうか!」


ああ、堕ちてきてくれた。


そこまで言うなら、わかった」

フリンズを優しく抱き締める。フリンズは耳元で泣いている。
歪んだ笑顔は、見られずに済みそうだ。
一緒に、地獄まで堕ちような、キリル。


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