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万丈
2026-05-01 17:05:57
2577文字
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小説
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繋ぎ止める楔、あるいは夜明けの誓い
【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
インドラを繋ぎ止めたミトラの「あの夜」の話。
関連の話→
雷帝の贖罪
関連の話→
紫苑の記憶、雷帝の宿命
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「
……
こんな暗闇で、何をしている」
ミトラは部屋の明かりもつけずに座り込む私を見て、痛ましげに眉をひそめた。
「
……
帰れ、ミトラ」
私は抑揚のない声で答えた。
「私に関わるな。お前のその清らかな光が穢れる」
だが彼は帰らなかった。
それどころか私の目の前まで歩み寄ると、冷たい石の床に私と同じように膝をついたのだ。
「
……
帰るものか」
彼は私の血の匂いの幻影に囚われたその手を、両手でしっかりと握りしめた。
「やめろ!」
私は咄嗟に手を振り払おうとした。だが彼の握る力は、見た目の華奢さからは想像もつかないほど強かった。
「お前はいつもそうだ」
ミトラの紫の瞳が、暗闇の中で悲しげに、しかし激しく揺らいでいた。
「一人で全てを背負い込み、誰の手も借りようとしない。候補生の頃から何も変わっていない」
「違う! 私はもうあの頃の私ではない!」
私は叫んだ。自分の中に溜まっていた黒く濁った感情が溢れ出しそうだった。
「私は同胞を殺した! シヴァ様という闇に屈し、世界を滅ぼそうとした悪魔だ! お前が友と呼んでくれたインドラは、もうあのカーンダヴァの塔の中で死んだのだ!」
「インドラ!!」
ミトラの怒声が私の自嘲を切り裂いた。
次の瞬間、私は彼に肩を掴まれ、強く強く抱きしめられていた。
「
……
っ!」
「
……
黙れ。それ以上自分を貶めるな」
彼の腕は震えていた。私の肩口に顔を埋めた彼の息遣いがひどく熱い。
「お前はインドラだ。私がその背中を追い、共に天空界を守ると誓ったただ一人の男だ」
「ミトラ
……
」
「
……
お前は一人ではない」
ミトラの囁きが、凍てついていた私の耳に、そして心の奥底に真っ直ぐに届いた。
「ヴィシュヌ様がどう思おうと、他の神将たちがどう罵ろうと関係ない。私が、お前の傍にいる。どんな深い闇の底であろうと、私がお前を見つけ出す」
彼は私を抱きしめたまま顔を上げた。
至近距離で見つめ合う紫と灰色の瞳。
彼の瞳には友への憐憫などという生温いものではない、もっと重く狂おしいほどの執着の炎が燃えていた。
「お前が死を望むというのなら、私はそれを許さない」
彼は私の頬にそっと手を添え、まるで呪文をかけるようにはっきりと告げた。
「私がお前を、この世界に繋ぎ止めてやる」
その言葉と共に、ミトラの唇が私のそれに重なった。
それは慰めの口づけではなかった。
私の魂に楔を打ち込むかのような、強烈で貪欲で、そしてどこまでも熱い生の証明。
「ん
……
っ、ぅ
……
ミトラ
……
っ」
彼の舌が私の口内を侵犯し、私の存在そのものを確かめるように深く、激しく絡みついてくる。
抗うことなどできなかった。
彼の放つ熱量が、私の内側に巣食う死への渇望を、一時的とはいえ強引に塗りつぶしていく。
私は無意識のうちに彼の背中にすがりつき、その熱に応えるように唇を開いていた。
どれほどそうしていただろうか。
唇が離れると私たちは額を突き合わせ、荒い息を繰り返した。
「
……
お前は、本当に
……
」
私は震える声で呟いた。
「
……
本当にお節介な男だ」
私の目からいつの間にか一筋の涙がこぼれ落ちていた。
ミトラはその涙を親指で優しく拭うと、ようやくいつもの穏やかな、しかしどこか満足げな笑みを浮かべた。
「
……
ああ。お前が諦めるのを諦めるまで、私は何度でもお節介を焼くつもりだ」
私の罪が消えるわけではない。
シヴァ様の呪縛が解けたわけでもない。
だがこの男がこんなにも強く私をこの世界に縛り付けようとしてくれるのなら。
もう少しだけ、この灰色の世界で息をしてみるのも悪くないかもしれない。
やがて彼が永い眠りについた後、私がヴィシュヌ様を支えるというその「役目」が、私なりの贖罪の道になるのだとすれば。
私は彼の温かい首筋にそっと顔を埋め、目を閉じた。
私の凍てついた魂に、ほんの少しだけ夜明けの光が差し込んだような気がした。
この数日後、私がヴィシュヌ様の前に跪き忠誠を誓う決意を固めることになるとは、この時の私はまだ知る由もなかった。
だが今、総司令官として彼女の傍らに立ち、この平和な天空界を眺めるたびに思い出す。
あの日、あの暗い部屋で彼が打ち込んでくれた熱い楔こそが、今の私を生かしているのだと。
遠い聖域で眠る友への感謝と共に、私は今日も彼が残したこの光の世界を守り続けるのだ。
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