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遊音。(ゆね)
2026-05-01 12:33:28
13617文字
Public
記憶喪失
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かりそめ。⑩ (最終回)
トガカバ(tgkb)でtgsが記憶喪失な話です。捏造設定あり。
①~⑨はシリーズ一覧から→
https://privatter.me/user/yune100m?category=109886
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部屋にいない、と思ったらトガシはベランダにいた。ベランダ側を背もたれにして肘を乗せ、仰け反るように空を見上げている。
右手には缶ビール。
カバキが窓を開けると、5月のはじめ、まだ夜風がきもちよく入ってきた。
「何してんですか?」
「月見酒」
空を向いたまま、トガシが缶ビールを持った右手を振る。月見酒というわりには月が見えない。
カバキはトガシの左側に立って同じ姿勢をとってみた。ほぼマンションの真上あたりに満月があった。
「なるほど」
カバキは姿勢を戻してトガシに顔を向けた。
「珍しいですね、月見酒なんて」
「たまにはね。もうシーズンだから良くないとは思うんだけど、ちょっとだけね」
姿勢を戻したトガシがビールに口を付ける。
「よく、ビール飲めますよね」
「カバキくん、すました顔してクールなのに、結構子ども舌だよね」
ふふっとトガシが笑うが、その通りなので反論できない。
「うるさいですね」
「味見する?」
トガシが顔を近づけてくるので、ビールの匂いに顔を少ししかめつつカバキはキスを受けた。
口腔にトガシの舌が入ってきて、自分の舌が触れ合うと、舌先に残るビールの香りが移る。
「
……
やっぱ美味しくないですね」
唇が離れて開口一番、カバキは眉を寄せながらそういった。トガシが笑う。
「なんか、やたら嬉しそうですね」
酔っているのだろうか。トガシがずっと微笑んでいるので、やたら機嫌がよさそうだ。
「うん
……
記憶失ってよかったなって思って」
トガシがそんなことを言うので、カバキは首をかしげる。
「こんなに可愛いくてかっこいい恋人ができたから幸せだなって思ってさ」
トガシの空いた手がカバキの腰に回ってくる。
「
……
俺も、あのとき嘘ついて良かったなって思います」
そう言うと、トガシがふふっと笑って缶ビールを飲む。
「トガシさん」
缶ビールをあおっていたトガシが視線だけで何かと問いかける。
「俺、もうちょっとビール飲めそうな気がします」
言われたトガシは缶に口をつけたまま少し考えると、もう一度缶をあおった。
缶を口元から離したトガシが、そのままカバキを引き寄せる。唇が重なりあって、トガシの口からビールが流れ込んできた。受け止めきれなかったビールが口角から垂れる。
「ははっ、やっぱ美味しくないですね」
カバキは笑いながら口元を腕で拭うと、トガシも笑ってビールを持つ手の甲で口元をぬぐう。
「カバキくん」
「なんですか?」
「好きだよ」
トガシがカバキの大好きな顔で笑うので、カバキも笑う。
「俺も、好きです」
再び、唇がお互いに引き寄せられるように重なった。
カバキはビールの味も悪くないな、と思った。
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