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nene_404
2026-05-01 08:25:47
7402文字
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キスしないと出られない部屋
重千。もだもだバージョンとおまけで3秒脱出バージョン
1
2
おまけ
3秒で部屋出られちゃったバージョン
目を開けた瞬間、真っ白な部屋にいた。光が均一すぎる。影がない。視界に入るすべてが白で塗り潰され、距離の基準になるものが何一つ存在しない。
視線を横に向けると、なぜか千速もいる。すでに起きており、床に手をついて軽く体を起こしたところだった。眠気も混乱もほとんど見せず、ただ一度だけ周囲を見回すと、あっさりと状況を受け入れた顔になる。
「
……
チッ」
小さく息を吐き、立ち上がる。その動きに無駄はない。壁の継ぎ目も出口もない空間だということを、一目で判断している様子だった。千速は手に小さな紙を持ってじっと眺めている。重悟が声をかけるよりも早く、千速が一歩踏み出す。
「おい、待───」
言葉が最後まで出ることはなかった。千速は迷いなく重悟の懐に入り込み、そのまま首元へ手を回して引き寄せる。
距離が一瞬で詰まる。
思考が追いつく前に、唇が重なった。
ほんの一瞬。触れたかどうかを判断するよりも早く、すぐに離れる。キスというより、条件を満たすための接触を最短距離で実行しただけのような、無駄のない動きだった。
重悟の思考が完全に止まる。
「
……
は?」
ようやく出た声は、間の抜けたものだった。
千速は何事もなかったかのように一歩下がり、軽く肩を回してから周囲を見渡す。その顔には達成感も照れもなく、ただ作業を終えたような冷静さだけがあった。
「キスしたら出られる部屋って書いてあるからな。まずはキスしてから考えればいいだろ」
「ハア!?」
重悟が一歩詰め寄る。だが、その瞬間だった。空間がわずかに歪む。白一色だった視界が波打つように揺れ、輪郭が崩れ始める。文句を言う前に足元の感覚が消え、視界が一気に白へと溶ける。抗う余地もなく、意識が途切れた。
次に目を開けたとき、そこは見慣れた天井だった。重悟は反射的に跳ね起きる。呼吸がわずかに荒い。状況を確認するために周囲を見渡すが、自室の景色があるだけで、白い空間の痕跡はどこにもない。
「
……
は?」
間抜けな声が出る。数秒遅れて、ようやく状況が整理される。戻っている。終わっている。しかも、ほぼ何もしていないうちに。
「
……
いや待て」
ゆっくりと手を口元に当てる。思い出す必要もないほど、感触ははっきり残っていた。
「
……
おい待て」
数秒の沈黙のあと、重悟は深く息を吐く。
「夢の中までふざけんなよ!?」
低く吐き捨てる。状況の理不尽さと、完全に主導権を握られた事実に対する苛立ちが、じわじわと込み上げてくる。
一方その頃、千速は何事もなかったかのように支度を整えていた。制服の袖を通しながら軽く伸びをし、鏡越しに自分の様子を確認する。特に変わった様子はない。ほんの一瞬だけ、思い出したように指先で自分の唇に触れる。
「
……
顔、すごかったな」
くすりと笑う。そのまま何事もなかったかのように踵を返し、廊下に足音が消えていく頃には、すでに意識は次の仕事に向いていた。
ただ一人だけ、納得のいっていない男がいることなど、気にも留めずに。
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