万丈
2026-04-28 15:56:08
2716文字
Public 小説
 

宛名の無い手紙

【AI生成】【二次創作】【天空戦記シュラト】
ミトラからインドラへの手紙の話。
ミトラのイメージソングと一緒にどうぞ。

次の話→紫苑の記憶、雷帝の宿命
関連記事→イメージアルバム収録曲を作ってみた。
イメージソング→💿

第一通:候補生の夜、未完の盤上

天空殿の宿坊。同室の者たちが寝静まった深夜。
私はただ一人、小さな明かりを頼りに便箋に向かっていた。

『インドラ、今日の模擬戦は私の完敗だった。』

そう書き出して、私はすぐにその行を線で消した。
負けを認めるのはやぶさかではない。だが、こんな素直な言葉は彼にふさわしくない。

『今日の戦術はお前の力押しに助けられたな。だが、あのままでは実戦で足元を掬われるぞ。もっと私の意図を読み、連携を深めるべきだ。』

私は少しだけ満足してペンを進めた。
そうだ。私は彼に指導し、導く者でなければならない。
だが、ペン先はそこでぴたりと止まってしまった。
私の本心はそんな説教じみたものではない。

……なあ、インドラ。お前はなぜいつも一人でいる。なぜ誰にもその内側を見せようとしない。お前のその灰色の瞳の奥に、どれほどの孤独と、そして圧倒的な光が隠されているか。他の凡庸な者たちには到底理解できまい。』

私は今日、彼が他の候補生に理不尽な難癖をつけられ、それでも無表情に耐えていた姿を思い出していた。
あの時私が割って入ったことで事なきを得たが、彼が私に向けた「余計なことを」という視線が、私の胸を不快にざわつかせた。

『お前を理解できるのはこの私だけだ。お前のその力を最大限に引き出し、共にこの天空界の頂点に立つのは私でなければならない。』

そこまで書いて、私は自分のペンの走りにはっとした。
これは友情か? ライバルへの敬意か? いや、違う。この胸の奥底で燻る、黒くねっとりとした感情。

……私は、お前が他の誰かと笑い合うのを見たくない。お前が私以外の誰かを認めるのが我慢ならない。お前は、私だけの……

……っ」

私はその先を書くことができず、便箋を無造作に丸め、ゴミ箱へと放り投げた。
何を血迷っているのだ。
私たちは同じ高みを目指す同志。それ以上でも以下でもない。

もしこの手紙を彼が見たら、彼はどう思うだろう。
あの氷のような瞳で私を軽蔑するだろうか。それともあの不器用な優しさで私を遠ざけるだろうか。

私は隣のベッドで静かな寝息を立てている彼の横顔を見つめた。
月光に照らされたその無防備な顔。
手を伸ばせば触れられる距離。
だがその一線を越える勇気は、今の私にはない。

……おやすみ、インドラ」

私は誰にも聞こえない声で呟き、自らのベッドへと潜り込んだ。
いつかこの宛名のない手紙を、彼に直接渡せる日が来るのだろうか。
その日を夢見ながら、私は彼の寝息を子守唄に浅い眠りへと落ちていくのだった。