七海ななみ
2026-04-21 18:44:53
2599文字
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思い出せなくても、愛してる②

悪いのは、約束を破った俺だから。

ルカキリ。転生記憶持ちファルカ×摩耗してファルカの事が思い出せないフリンズ
死ネタ。メリバなハピエン。転生前は恋仲。ファルカが記憶持ちで転生して、フリンズに会いに行ったら摩耗してファルカの存在以外を忘れられた話。次で最終話。
私はハピエンが好きです。これはハピエンです。みなさんもご一緒に叫んでください。これはハピエン!

思い出せなくても、愛してる① | Privatter+ https://privatter.me/page/69e607d496d8d

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摩耗してどんどん忘れていく日々。そんな日々でも楽しみがある。眠っている時だ。
睡眠中は記憶を整理しやすい。彼の思い出を、少しずつ思い出そうとする。

『待っています。ここで、貴方が帰ってくるのを』
『ああ、必ず帰ってくる』

声は思い出せない。でも、そう言っていた気がする。
頑張って、彼のことを思い出す。そういえば、よく見上げていた気がする。僕より大きかったかもしれない。
そうだ。大きな、手で、撫でられるのが、好きだった。
また一つ、思い出せた。嬉しい。
目を覚まして、忘れない内に日記に記録する。忘れても思い出せるように。人間の振りをすることを諦めた僕の、唯一の楽しみだった。


────────


自称観光客とのやり取りは、思ったより楽しかった。
最初は警戒していた。冒険者協会から討伐を依頼されたならまだいい。野盗のような奴だったら容赦するつもりはない。
だけど、どちらでもなさそうだった。嘘はついていないが、真実も話していない。
それでも、信頼できる人間であることはわかった。埋葬の依頼もできてよかった。ずっと悩んでいたことだったから。
ランプを見やると、蒼炎が僅かに灯っている。もう、種火くらいしかない。残された時間は、それほど残っていない。身体を動かすのも辛くなっている。
だからこそ、掃除なり、魔物討伐をしてくれるのは助かっていた。
何が目的なんやら。この際、害がなければそれでいい。
埋葬の約束だけ守ってくれれば、それだけでいいのだ。

「フリンズー! 大物が釣れたぞー!」
………

ファルカさんが来てから、夜明かしの墓は騒がしくなった。見た目どおりの明るい男だ。
腕も立つが頭も切れる。ふとした瞬間に、寂しそうな顔をする時もある。一応、元騎士、と言っていた。西風騎士、か。聞き覚えがある。

『俺は ───── 、西風騎士団 ─── で、── 騎士だ』

そうだ。彼も、西風騎士だった。急いで日記に書かねば!
慌てた様子で地下室に向かう僕を、ファルカさんは怪訝な表情で見つめていた。

日記に、彼は西風騎士団に所属していたことを書く。ということはモンド人だったのか。
こんな状況でなければ、モンドに行って探しにいけたのに。
せめて、お墓に行きたかった。謝りたかった。
忘れてしまって、ごめんなさい。愛してるのに。思い出せない。

フリンズ?」
………失礼。……独りにさせてください」

ファルカさんに話を聞くこともできるかもしれない。でも、今は感傷に浸っていたかった。


────────


刺激、というのは重要なのだろう。夢でなくても彼の事を思い出せた。そう言う意味では、ファルカさんと触れあうのは悪くない。
なんとか落ち着いて、今夜の酒飲みに応じることにした。
釣って貰った魚で、燻製を作る。そういえば、彼にも燻製を作ってあげたことが、あったのかもしれない。残念ながら、思い出せないが。
用意ができたので、乾杯をする。

「月に乾杯!」
なんですか、それ。月に乾杯」

乾杯でいいだろうに。確かにナドクライには月神がいるが。
そう言うと、ファルカさんは泣きそうな顔をしていた。尋ねてもはぐらかされる。流されたが、まあいいか。
燻製をファルカさんにあげると、目を輝かせて食べてくれた。
酒を飲みながら、西風騎士について聞く。西風騎士には称号があるらしい。蒲公英、火花、北風継承されたり、大団長が付けたりしている、ということだ。

……どうして、気になったん、だ?」
彼が、西風騎士団に所属していたことを思い出したんです。おそらく、称号を授かっていました」
………そう、か」

そう答えると深く考え込んでいた。

…………フリンズは、もし、彼に、会えたらどうするんだ?」
「彼に、会えたら?」
………地脈で、会えるかも、しれないだろ」

彼に会えたら。考えた事もなかった。でも、確かに地脈で会えるかもしれない。

……会わない方が、いいかもしれません」
…………どうして、だ?」
「だって、僕は彼の事を覚えていませんから」

会いたい。抱き締めて愛してると伝えたい。でも、わからないのだ。声をかけられても、わからないなら、会わない方がいいかもしれない。この想いを抱えてるだけでも、幸せなのだから。
そう答えると、ファルカさんは黙りこくってしまった。

……………かれの、ほうから、……こえを、かけられたら?」
戸惑う、かもしれませんね。謝っても許してもらえるのでしょうか」
………ゆるして、もらえるさ」

ファルカさんはだいぶ酔っているようだ。その後の言葉は小声すぎて聞き取れなかった。

ファルカさんの酔いがだいぶ回ったようだったので、お開きになった。
ふらふらになりながら立ち上がろうとする姿に肩を貸す。なんとか立ち上がることはできたようだ。

…………ありがとう、な」

頭に大きな手が、置かれる。
大きな、手だ。
まるで、彼に、撫でられた、ような。

……また、あした」

そう言って去ったが、僕は何故か動けなかった。


─────────



『待っています。ここで、貴方が帰ってくるのを』
『ああ、必ず帰ってくる』

声は思い出せない。でも、そう言っていた気がする。
頑張って、彼のことを思い出す。そういえば、よく見上げていた気がする。僕より大きかったかもしれない。
大きな手で、撫でられるのが、好きで。
大きな手が、頭に置かれる。

目の前の彼が、ぶれる。
思わずしがみつくと、彼はファルカさんになっていた。


────────


「 ────っ!!!」

飛び起きる。汗が気持ち悪い。
でも、それ以上に、

僕が、気色悪い。

着替えもせず、彼の元へ走る。彼の墓にすがりつく。

……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!!」

彼に、ファルカさんに、謝る。僕が、楽になるため、に。
……さいてい、だ。

身体の力が入らなくなり、地面に転がる。
ランプが、カランと音を立てる。
蒼炎の種火が、消えようとしていた。


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