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無窓居室
2026-04-20 03:58:59
2999文字
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ブックサンタ2025
クリスマス夜のほんのりブラアカと、アカネに黒い指輪を買うブラックの話。
指輪の方は他の短編と繋がっています。いつかまとめたい。
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指輪ものがたり
閉店後の宝石店の特別室で、ブラックは支配人からの挨拶を受けていた。助手の分も含めて二人分の香り高いコーヒーが出され、チョコレートが供され、やがて店員が恭しく品物を運んでくる。全ての光を吸い込むような無装飾の黒い指輪がベルベットのケースに収まっていた。
辺獄
リンボ
産の石でもこれほどの品質のものは滅多に出ません。特別な贈り物にぜひ」
月も星もない夜のような黒は、やがて来る暁といつか見た夕焼けを、その色の外に抱いているように見える。
その場で支払いを済ませ、品物を手に店を出た。魔界の空はなお暗い。
*
魔界と人間界を問わず、年末年始には集まりが多い。トップYouTuberとして引きも切らず舞い込むパーティーの誘いのたびに、ブラックはアカネに黒いチョーカーを贈った。同じ色のハンドバッグを贈った。シルクサテンのドレスと靴を見繕った。
「ブラックチャンネル」のクリエイターとして社交の場に出る以上、ヒロイン役を伴うことも必要になる。魔王の隣に並ぶ女性が化粧をするでもなく、一つの装身具すら身につけないままパーティーに出席したら他の参加者の失笑を買うだろうか?逆だ。自惚れの強い客達は、飾らない彼女の美しさに嫉妬するだろう。煌びやかな会場を、近所の公園のような自由さで歩く足取りは傲慢と受け取られるだろう。
アカネの身を飾るものは、なんであれ最上の品でなければ彼女の美貌を隠すに足りないとブラックは考えていた。豪奢な贈り物はいわば迷彩だ。服と宝石に沈め、腕を絡ませてその足を止めさせることで、やっとブラックは誰彼なしにアカネを見せびらかすことができる。
*
新しいプレゼントを渡す日はいつでも良かった。ちょうどクリスマスシーズンで口実には事欠かない。アカネを含めた顔ぶれで短い動画を撮る予定があったので、その後にでも二人きりになろうかとブラックは算段していた。
動画の内容は出演者が短い質問に答えていくもので、アカネに当たったのは現金と指輪、もらうならどちらが良いかというものだった。
「そりゃ、指輪だろ!くれる人にもよるけど
……
」
ブラックはポケットに忍ばせたジュエリーケースに触れ、そして戻した。指輪をアカネに贈るのは今日でない方が望ましく思えた。勢い込んで答えたアカネの照れ顔に、この指輪を用いた自分の策略は釣り合わないものだから。
陽の光のような彼女の魂と、光を持たない指輪が等価になるまで、ブラックは自分の中に滾っているものが黒い宝石に結晶するのを待とうとした。
2025/12/23
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