まどぎわ
2026-04-14 00:06:36
2646文字
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ずっと言いたかった一言に君の名前を添える(ゼロクス)

BL。2015年以前に書きためていたもの。エックスとゼロが久しぶりに再会してイチャイチャする話。双方の視点でどうぞ。素体表現があるのでアーマーレス注意。捏造設定多々あり。


Side X



精密な体を保護するための窮屈なアーマーを、このときだけは全て取り除いて素体を風にさらすことができる。試験の結果を待つ間だけ、風と一体化した気持ちになれるこの中庭がエックスは好きであった。
彼は機械でできた体だがその感性は人と変わらないものであり、科学者たちはこぞって100年も前に創られた精密な体を暴こうとしていた。
しかし科学者と呼ばれる彼らの中にも、ブラックボックスでおおわれた機体を解読できる力量を持ち合わせた人物は既に存命していなかった。それでも諦めきれない科学者たちの執念に根負けしたエックスは、もうこれで何度目かも数えたくない検査を受けているのである。
エックスは検査室の重苦しい空気が好きではなかったので、結果を待つ合間だけは外で待機する許しを得た。今日の風は全ての悲しみを流してくれる、とびきり心地よい風だった。


人間が手術室に入る感覚と同じなんだろうなと風を受けぼんやりする思考の中。それでも人間では到底わからない風の変化は、日々の生活で研ぎ澄まされていたセンサーによって察知される。それが聞きなじみのある足音によるものだと結論づけたときは既に頬は緩んでいた。
今すぐにでもそちらを向き走り出して声をかけたかったが、エックスはぐっと我慢をした。足音が止まり言葉が発されるのを待ちわびる。

「アーマーはどうした、緊急事態が発生したらどうする」

予想していた候補のひとつにピタリと当てはまり、ああ第一声が仕事のことなんて君らしいなあと心の中で苦笑した。
焦がれた赤い姿をおさめるため向き直る。額のクリスタルが太陽に弾かれるさまがきれいだと率直に思った。

「まだ検査中。風が気持ちいいから結果が出るまでここで待たせてもらっているんだ。」
「そうか」

数々の戦場を生きぬいてきたエックスの洞察力は、相手が目線を合わそうとしないことにすぐ気がついた。
今の状態から考えられる可能性を瞬時に挙げた結果、俺自身の素体を見慣れてないために戸惑っているんだ、と考えた。
彼が気をつかうような性格ではないとわかってはいたが、エックスはまぶしい赤と再会できた喜びで脳内はいっぱいになっていた。
顔には出さないが相手もきっとそうなのだろう。久しぶりなのだ、少しからかってみようか。

「君のことだから任務の報告も早々に、すぐ俺に会いに来たんだろう?」

「検査室にいると聞いたからな。あそこは嫌いだろ。お前の悲しむ顔はあまり見たくない。すぐにでも、会って抱きしめたかった。」

数ヶ月ぶりに会えただけでも喜ばしいと思っていたエックスに、この言葉たちは完全なる不意打ちであった。
他人の心にたいして不器用のかたまりな、目の前のレプリロイドからはおそらく出てくることのない言葉だと思っていた矢先である。エックスの思考回路は一瞬停止してしまった。

からかうつもりが逆にあしらわれてしまった、一本取られた、と思ったときには体温はみるみるうちに上昇していた。熱い、体内の冷却装置は正常に作動しているはずなのに。
今度はこちらがたまらず目線を外すも相手の笑い声でなおさら高揚は抑えられなかったのであった。


触ってもいいか、なんていつもなら聞いてこないことを言ってくるのでおかしくて笑ってしまう。
やっと頬に君の手が触れた。そのぎこちない手の動きから動力炉の高鳴りが伝わってくるのが微笑ましい。
やさしい風と君の手が頬を撫でるのが心地よく思えた。

ずっと言いたかった一言に君の名前を添えて。


「ゼロ、おかえり。」