由崎
2026-04-12 18:15:19
4586文字
Public
 

名探偵イギリスと容疑者フランス



……何やってるんだ、アイツ」

バッキンガム宮殿で、その報せを聞いた男が低く呟いた。

イギリス。大英帝国そのものを体現する存在である。

彼は手にしていた新聞を読み終えると、しばらく何も言わずに紙面を見つめていた。折り目ひとつつけないまま指先で端を揃え、ようやく、ゆっくりと紙面を折りたたむ。

視線が止まったのは、見出しではない。本文の中ほど、名が置かれている行だった。

フランシス・ボヌフォワ。

イギリスは小さく舌打ちする。報せを届けた使者が、困ったようにその横顔をうかがっていた。返事を待つ姿勢のまま、口を開くべきか迷っている。

「面倒なことになりやがったな」

その呟きが、すべての始まりであった。


『駒鳥を殺したのは誰 ある外交官の疑惑