キミとすてきないちにち
パラソルワドルディとバンダナワドルディのご機嫌な話。
プププランドは今日もあきれるぐらい平和で、おひさまはぽかぽかしていていい天気。こんなにお散歩日和の素敵な日は嬉しくなっちゃうよね。
パラソルに引っ掛けたバスケットの中の、カワサキさん特製のお弁当を食べるのも楽しみでにこにこしちゃう。でも目的地に着いたから、ちょびっとひと休みしようかな?
「ウィスピーさん、こんにちわ」
「こんにちは、ワドルディ。お散歩かい?」
「そうだよ! たくさん歩いて疲れちゃったんだ。ここで休憩してもいい?」
「良いとも。私のりんごは食べるかね?」
「大丈夫! お弁当があるんだよ」
「それは良いね。デザートが必要ならいつでも言っておくれよ」
ウィスピーウッズにごあいさつして、太い幹にもたれて座る。大きな樹冠の大きな影が涼しくて気持ちいい。嬉しいし楽しいし、木陰はとっても涼しくていい気分。
せっかくなら、この気持ちを歌っちゃおう!
「ひがさして〜パラソルさして〜さんぽして〜♪」
「
……」
自己紹介も兼ねた、お気に入りのボクの歌。
「てきもふせげてふわふわおちて〜♪」
「
……ねぇ」
少し調子っぱずれなのは御愛嬌。
「ゆれるおもいは〜おそらにうかび〜♪」
「
……ちょっと」
嬉しい気持ちと楽しい気持ちをハミングさせて。
「たゆたうきもちは〜はるかぜいろに〜♪」
「
……聞いてる?」
不機嫌そうな声のキミも、笑ってくれたらいいのにな。
「ふわふわたびする〜ああ〜ボク「パラソルくん!!」わにゃ!? 一番いいトコ取られちゃった!」
くすくす笑うウィスピーウッズの幹の裏側。ボクが座っているのと反対側から、ボクと同じワドルディがひょこっと顔を見せている。
頭に巻いた青いバンダナがトレードマークの、ボクらワドルディの中でも一番の有名人。
デデデ陛下の側近で、星のカービィの大親友のキミ。
「こんにちわ、バンダナくん」
「こんにちは、パラソルくん
……じゃなくってさあ!」
「わにゃ?」
とっても不機嫌な顔をしているバンダナくんが、まんまるなおててをビシッとボクに向けた。
「ボクが修行してるの知ってて歌ってただろ!?」
「そうだけど、だめだった?」
「気が散るだろ!」
ぷんぷんしてるバンダナくんから、ちょっと離れた後ろの方に、ボロボロになったまるいお人形が転がっていた。サンドバッグさん、借りてきたのかな。
「でも、ボク、バンダナくんに会いに来たのだもの。そんなに怒らないでほしいな」
「なんでボクに? あっ! さてはキミも修行の心に目覚めたの!?」
一緒に筋トレする!? と少し表情を緩めてそわそわしだすバンダナくん。やだなぁ、ボクがそんな大変なことするわけないのに。キラキラしたおめめがかわいいね。
「しないよぉ。ちょっと落ち着きなよ」
「な、なんだよ! なんでもできるからって、ボクのことバカにしてるの!?」
う~ん、どうしてそう穿って考えちゃうんだろう。ボクはバンダナくんが大好きだし、とっても尊敬してるからバカになんてしないのに。
むすっとした顔をしてボクを睨むバンダナくんは、ワドルディの中でも特別かわいいから、そんな顔もとってもかわいい。けれど、せっかくの良い天気なのに、そんなに怒ってばかりだともったいないよ。
どうせなら、陛下やカービィに向けるみたいな、素敵な笑顔を見せてほしい。
「バンダナくんが頑張りすぎてないかなって思って、お弁当持ってきたんだよ」
「お弁当?」
パラソルに引っ掛けていたバスケットを下ろして、ほらと差し出すと、怒っていた顔を不思議そうな顔に変えたバンダナくん。途端にくぅ
……と小さな音がして、バンダナくんは恥ずかしそうにお腹を押さえた。
「わにゃ
……」
「ほらぁ、ごはんのこと、全然考えてなかったでしょう? カワサキさん特製のサンドイッチだよ」
「わ
……わにゃぁ
……」
恥ずかしそうにわにゃわにゃしてるバンダナくんの隣に移動して「食べようよ」と、真っ赤になってるほっぺをつつく。渋々といった様子で座ったバンダナくんと自分の間にバスケットを置いて蓋を開けた。
「わぁ、おいしそう」
ベーコンレタスサンドに、ハムとトマトときゅうりのサンド、分厚いたまごサンドに果物がたくさん挟まったフルーツサンド。色んなサンドイッチの入ったバスケットに、バンダナくんのおめめがキラキラになった。
よかった、もう怒ってないかな?
「カワサキさんがね、サンドイッチとおにぎり、どっちがいいか迷ってたよ。バンダナくんはどっちが好き?」
「ボクはどっちも好きだけど、デザートがあると嬉しいからフルーツサンドも入ってるサンドイッチがいいかなあ。でもカワサキさんのおにぎりおっきくて美味しいよね」
「美味しいよねえ。前に作ってくれた爆弾おにぎりすごかったもんね」
美味しいサンドイッチを食べながら、顔を見合わせてくすくす笑う。美味しそうに笑顔を零すバンダナくんは、とってもかわいかった。そうそう、この笑顔が見たかったんだ。
カービィたちに向けるのとは、またちょっと違うみたいだけど。
「パラソルくん」
「わにゃ?」
バンダナくんお手製のリンゴジュース
――多分プロテイン入りだこれ
――を分けてもらって一息つくと、バンダナくんがぽつりとボクを呼んだ。
「お弁当ありがとう。さっきはごめん」
「
……いいよ」
ちょっとしょんぼりした様子のバンダナくんが、こちらを伺うように恐る恐る話す。
「ボク、もっと強くならなきゃって焦ってたんだ。やつあたりしちゃってごめんね」
バンダナくんが、とっても強い陛下やカービィたちに追いつこうと頑張っているのは知っていた。毎日毎日頑張ってるから、だから、修行とか興味なくて頑張ることもしないボクにあたりが強いのもわかってた。ボクはそんな、頑張り屋のバンダナくんが大好きなんだ。
「いいってば。ボク、バンダナくんとご飯が食べたかっただけだもの。だから全然気にしてないよ」
でも、ボクはのんきなパラソルワドルディだから、それはボクの個性だから。大好きなバンダナくんの言葉でも、変えられないんだ。
「気にされてないのも、それはそれでむかつく」
「わにゃ!? なんでぇ!?」
まったく、バンダナくんったらあまのじゃく! そんなところもかわいいけどね!
「別に怒ってないけど
……じゃあ、これでチャラにしようよ」
「え、なに
――んにゅ?」
バンダナくんのお顔を固定して、ちゅ、とおくち同士をくっつける。『くちうつし』とはちょっと違う、それは『キス』というやつで。
初めてしたキスは、最後に食べたフルーツサンドの甘い味がした。
「なななななにするのお!?」
「なにって、ちゅう?」
「ちゅう!? なんでボクにしたの!?」
「だって、したかったんだもの」
「ええ
……」
げんなりした様子でわにゃわにゃ言うバンダナくんのお顔が真っ赤でとってもかわいい。びっくりしてるけど、嫌ではなさそうだし、怒ってもいないみたい。
もしかして、『ミャクあり』ってやつかな?
どう思う? 訊ねるようにちょっと上を向くと、ウィスピーウッズがにっこり笑ってウインクをしてた。
「嬉しいから、歌っちゃお!」
「なんでそうなる!?」
うーん、とっても素敵な日!
2024.05.23
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