七海ななみ
2026-03-30 08:56:20
3221文字
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出会いかたを間違えた➄

ルカキリ。マロリクで執行官パロをいただいたので、政略結婚してもらいました。フリンズはカントです。執行官要素は皆無になりました。ただのツンデレフリンズです。これにて完結になります。つわりによる嘔吐表現あります。
感想、マロリク募集しております。よろしければどうぞ。返信はXで行うと思います。
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「モンドに帰還する? 本当に? 夢じゃないんですよね!!」
わかってはいたが、本当に嬉しそうだな」

うん、そういう反応になるよな。普段、俺には見せてくれない笑顔を振り撒いている。少しは関係が進んだ、とは思うが、この喜びようも本心だろう。

『すきに、なりたくない!!』

好きになりたくない、か。最高に可愛かった伴侶を思い出してしまい、顔がにやける。まだ自覚している様子はないが、俺の事、好きになっている。好きになりたくないと叫ぶくらいに。嘘でも嫌いと言ったら泣くくらいに。

「気色の悪いにやけ面ですね。その面、二度と見せないでください。目に入らない場所で死ね」

……多分、これも本心、なんだよな? ちょっとへこむ。
まあ、攻めすぎた時は引いた方が良いとも言うし。丁度いい機会かもしれない。………俺は、寂しいが。
笑顔でウキウキしている伴侶を尻目に、夜明かしの墓にある私物を回収した。もう持ち込むな、という罵倒付きで。


──────────


最高にストレスフリーだ! 今なら嫌で仕方がない報告書も書ける! テンションが上がったせいか、さくっと報告書を仕上げたらイルーガに大層驚かれた。フラグシップに行き、祝杯をあげる。やつがいないだけで最高に美味しい。つい飲みすぎてしまった。
セックスもしないから肉体的にも負担がない。ワイルドハント狩りも進む進む。やっぱり奴は害悪にしかならない。このまま死ぬべきだ。
最高だ。楽しい。結婚は墓場という事を聞いた事あるが、その通りだった。独り身最高だ。
ルンルン気分で報告書をピラミダに届ける。ピラミダは少し騒がしいようだった。
ワイルドハントが大量発生したか? 気を引き締める。ライトキーパーを捕まえ、話を聞く。

「なにか、ありました?」
「フリンズさん! なんでも、西風騎士団の船が撃沈したという話が流れてきて

世界から音が消えた。


─────────


西風騎士団の船が撃沈し、生死不明。時期的にもあの男が搭乗していた船だ。
覚えているのはこれだけだ。どうやって夜明かしの墓から帰ってきたか覚えてない。
何故、動揺している? 何度も伝えていたではないか。死ねと。殺すと。
ワイルドハントを根絶するのがライトキーパーの使命。あの男は、あくまで同盟を組んでいただけだ。痛手にもなるが、こちらに非はない。前に戻っただけだ。
なのに、動けない。どうして。何故そんなに、僕はショックを受けているんだ。わけがわからない。
恨んでいたはずだ。すべての元凶となった1人。巻き込まれた原因。物がでかいし、快楽で理性を溶かそうとするのが、嫌いだ。大嫌いだ。好きじゃない。
まさか、好き、だったから、こんなに、動揺してるのか?

「そんなわけない!!」

そんなわけがない。好きではない。好きになりたくない。
気の迷いだ。ピラミダに行くまではあんなにルンルン気分だったのに、顔見知りが死んだかもしれないだけだ。
身支度をして、巡回しよう。ワイルドハントを死滅させるのが、ライトキーパーの宿命。それだけ考えればいい。
身支度をして、気付く。部屋の中が広く感じる。
そういえば、帰還前に奴は私物を持って帰ってた。どんなやり取りをしてただろうか。

『俺がいないからって、寂しくて泣くなよ』
『もう持ち込むな。死ね』
『少しは寂しがってくれぇ

情けない声だった。寂しがる訳、ないのに。


────────


日常を過ごす。何時もと変わらない日常。なのに、周りから心配されるようになった。顔色が悪い、そう指摘される。
元々顔色が良くない方だが、もっと悪く見えるようだ。
そういえば、気分が優れない。吐き気も少しする。イルーガにもバレて、今日は休むように、念押しをされた。
夜明かしの墓に戻り、広い部屋に立ち尽くす。ニキータから手紙が届いていた。読み進めていると、ある一文が目に入った。

『沈没した船から、西風騎士団のファルカと思われる死体が見つかった』

死体が、見つかった。
気がつけば手紙はしわくちゃになっていた。所々濡れている。頬が、濡れている。涙が止まらない。

………死体」

広い部屋で、ぽつりと呟く。こうもあっさり死んでしまった。これ以上、奴に悩むこともないのに、どうして。
嫌いだ。大嫌いだ。好きではない。好きになりたくない。

………好きに、なりたくなかったのに」

ファルカの事が、好き、だった、かもしれない。
認めたくなかった、それだけだった。
でも死んでしまった。伝えることは叶わない。後悔、しても、遅いのだ。死ね、なんて、言わなければよかった。
涙が、止まらない。子供のように、泣きじゃくった。


───────


待て待て待て、何が起きている?
西風騎士団に偽装した悪徳商人がいて、宝盗団に襲撃されて沈没したという話は知っていた。
確かに、ネフェルから俺が死んだ誤報が届いていると聞いた。フリンズは夜明かしの墓にいるのも聞いた。
急いで夜明かしの墓に向かったら、フリンズが泣いていた。好きになりたくなかったのに、そう言っていた!
これは、夢だろうか。都合のよい夢を見ているだけではないのか?
ここは、華麗に感動の再会をするべきだろう。そして愛を伝えるんだ!

「愛しき伴侶よ、戻ったぞ!」

フリンズは目をパチパチさせながら泣いている。泣かせてごめん。でも物凄く嬉しい。愛しい伴侶を抱き締める。

………ゆめ?」
「夢じゃない、現実だ。俺は生きている」

西風騎士団に偽装した悪徳商人の話をする。フリンズの身体から力が抜けた。
フリンズの手が、俺の背中にまわる。やばい、すごく嬉しい。
キスをしようと、顔を近付ける。

「フリンズ、好きだ。愛してる」
………僕は、………ぼく、は……………っ」
フリンズ?」
……………きもち、わるい」
「だ、大丈夫か?!」

よく見ると顔色が悪い。キスをしている場合ではない!
背中をさすると、吐く、と呟いていた。慌ててバケツを探しに行った。
バケツを持っていくと、フリンズは嘔吐した。背中をさすってやりながら考える。これ、もしかしないか?
フリンズが落ち着いた所で、医者に行こう。そう誘った。


───────


妊娠、していた。体調悪いのはつわりのせいだった。
奴はすごい喜んでいる。その笑顔が憎たらしい。
ライトキーパーは休職することになった。表向きには男性なので、安定期に入ったらモンドに向かい、出産する予定になった。気がつけば奴がニキータと調整していた。表向きには僕の長期間療養になるらしい。
奴が嬉しそうにニヤニヤしている。腹が立つ。

「なにニヤニヤしてるんですか。し………

死ね、と言葉を紡ごうとして、音のない世界を思い出した。

………馬鹿が丸出しですよ」

そう呟いた言葉に、奴は笑顔になった。殴ったけど、腹が立つ笑顔のままだった。


───────


幸せというのはこういうことだろうな。日々を過ごしながら噛み締める。

「いいですか、お友達に馬鹿なんて言ってはいけませんよ」

伴侶は友人と喧嘩した我が子を叱っている。どの口が言っているんだ。そう思い茶化しにいく。

「そうだぞ、キリルも馬鹿って言うなよ~」
………
ママ?」
「なんでもありません。さ、お友達に謝りにいきましょう」

すれ違いざまにギロリ、と睨まれた。
こりゃ、今夜のイチャイチャでも罵倒されるな。素直になるまで溶かすまでだが。今夜で兄弟ができるかもしれない。ウキウキしながら家事をする。顔がにやけてしまう。

帰ってきたキリルに愛を囁こうとしたら殴られ、妖精語で罵倒された。夜のイチャイチャは延期になった。我が子よ、兄弟ができるのはもう少し先になりそうだ。すまん