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nozomu_HK
2026-03-20 02:53:16
3244文字
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[リクエスト]赫灼たる光を抱いて(獪岳)
光を追い求めていた獪岳のお話
リクエストいただいたものです
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獪岳が歩みを止めたことは一度たりともなかった
孤児でなくなってからも獪岳は前を向き続けた。拾ってくれた恩を返す様に、『先生』に尽くし続けた
それでも、彼らの中で獪岳は一番ではなかったらしい。悲鳴嶼は獪岳より幼く甘えたがりの子どもばかり気にかけ、桑島は泣いてばかりで日常的に逃げ出そうとする弟弟子の事ばかりだった
ばきんと何かが壊れる音がした。一度目は寺から追い出された時だった
遭遇した鬼に脅迫され、香炉を消しに行った。初めは重い憂鬱が心内を支配していた。間接的とはいえ寺の子供たちと恩人である悲鳴嶼を殺すのだ
夜風は獪岳の身体を容赦なく傷付けた。足元が覚束無い上に視界も悪く、何度も転んだ
全身を突き刺す痛みと寒さは苦痛であったが、獪岳の思考を取り戻すきっかけでもあった
──このまま寺に逃げ込めば
そうだ。寺に入ってしまえばいい。鬼が態々香を消すように命じたという事は、藤の花が弱点というのは事実なのだろう。ならば寺に逃げよう。きっと皆心配しているはずだ。話せば分かってくれる。先生ならきっと!
「──は?」
必死に寺まで戻った獪岳が見たのは信じ難い光景だった
寺の中は暗く、物音一つなかった。襖を開けると皆穏やかに眠っていた
子供たちの事は期待していなかった。元々自身を追い出したのは彼らなのだから、呑気に寝ていてもそうだろうなとしか思わない
問題は悲鳴嶼だ。獪岳にとって悲鳴嶼は初めて自身に優しくしてくれた大人だった。信頼していた
そんな彼が何の憂いなく眠っていたのだ。獪岳にとってこれ以上に失望という言葉が似合う事はなかっただろう
──結局俺の事はどうでもいいのか
満たされていたはずの何かが落ちていったような気がした
二度目は桑島に羽織を渡された時だった
桑島は厳しい人だったが、同時に慈愛に溢れた人でもあった
出自が不明な獪岳を我が子のように愛し、衣食住を与え、更には後継として育ててくれた
基礎である壱ノ型が使えないと知っても尚、受け入れてくれた。だからそれに応えようとした
善逸ばかり構う桑島に不満もあったが、努力すればきっと認めてもらえるものだと信じていた
羽織を渡された時は漸く報われたと思った。嬉しかった。それも善逸に色違いの羽織が渡されていた事で屈辱へと変わってしまったのだが
──俺がこいつと同列だと言いたいのか
結局、自分のしてきた事は無駄だったのだろうか。才がないと突き付けられているようだった
また獣が鳴いた。心を巣食うそれは、にやりと笑って獪岳に近づいた
本能的に逃げなければと思った。立ち止まってはいけない。後ろを振り返らず、青い羽織を握りしめて、その場を足早に去った
陽の下にいても、獪岳は太陽を探していた。心はあの路地裏に置き去りになっていた
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