nozomu_HK
2026-03-20 02:53:16
3244文字
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[リクエスト]赫灼たる光を抱いて(獪岳)

光を追い求めていた獪岳のお話
リクエストいただいたものです

ずっと日陰にいた

育った町は常に食糧の奪い合いが起きる程貧しく、捨て子など珍しくなかった

名も持たず、何処の馬の骨かも分からぬ子どもを気にかける者などいない。綺麗な水を飲むことすら許されず、雨上がりの泥水を生きる糧にしていた

しかし、最低限の生命維持が出来ても腹は空くし、それだけではいずれ餓死してしまう

けれども手を差し伸べようとするものはない。小綺麗な着物に指一本でも触れようものなら、途端に激昂し、運が悪ければ理不尽な暴力を浴びた

何故生きているのだろうか。顔さえ覚えていない肉親を恨んだ。捨てるのなら最初から産まなければ良かったのに

劣等感が身を蝕んだ。ふつふつと怒りにも、自嘲にも似た感情が湧き上がる

──こんなところで死んでたまるか

身を潜めていた住宅地から少し行くと、商店が立ち並ぶ大通りがある。食堂や売店が建ち並んでいる事もあって、行き交う人々は皆整った身なりをしていた

路地裏の影から通りを歩く人々を見る。陽の下を談笑しながら歩く恋人らしき男女

ふと、両親に手を引かれて歩く少女が目に映った。同じ年頃であろう少女は傷一つなく、綺麗な洋服を身に纏い、溌剌に笑っていた。路地裏にいるみすぼらしい孤児の事など、目もくれなかった

それが太陽のように眩しく映った。少女だけではない。通りを歩く人も、商人も、全てがきらきらと輝いて、まるで別世界だった

破片が突き刺さったかのようにずきずきと胸の奥底が傷む

──どうして

怒りを誤魔化すように強く食い縛った。歯が軋む音がする

──どうして俺はこんな惨めな想いをしなければならないんだ

力任せに手を握りしめた。まともな手入れをしていなかったせいで伸び切り、不自然に欠けた爪が突き刺さる

苛立ち、嫉妬、恐怖、嫌悪。そんな負の感情が、痛みを主張する胸奥で蠢いた。それは飢えた獣の様に、咆哮する

奪え。と声がする

いつまでイイコでいるつもりなんだ。悔しくないのか。何のためにお前はここに来た? 奪う為だろう

低い、悪鬼のような声が囁いた。それに突き動かされるように、気付けば路地裏から飛び出していた。生きるために



***



初めて盗みを働いてからかなりの月日が経ったと思う。思う、というのは正確に時間を計る術を持っておらず時間経過を把握しきれていないからだ

元々孤児が多く治安の悪い場所だ。当然、盗みも日常の一部のようになっていた

それでも活気が無くならなかったのは、その殆どが失敗するからだ

死んだ孤児の遺体が転がる。その顔には見覚えがあった。自身より年上で、手癖の悪い少年だった

彼は目立ちすぎた。技術はあったのに調子に乗って過度な盗みを働いた。その結果がこれだ

馬鹿な奴だ。と思う。自身から見ても最近の彼の行動は身に余るものだった。自我など出さず、細々と生きていればこんな事にはならなかっただろうに

それと同時に、自身がまだ生きている事実に自信が湧いた

──俺は正しいんだ

自然と口角が上がる。どんな聖人君主だろうと死んでしまえば意味が無い。生きている事が正義なのだ。そうだ。俺は正しいんだ!

けれど、何故だろうか。無惨なその姿が自身と重なってしまった。腕や足が不自然に折り曲がり、苦悶に満ちた表情で死んでいる自身が映る

生気のない目は焦点があっていないのに、じっと見つめ返していた

「っ......!?」

思わず後退る。次の瞬間には元の物言わぬ死体に戻っていた

幻覚か妄想か、正体は解らなかったが、それが何を示したかは何となく分かった

──俺がこいつと同じだって言いたいのか

違う。俺は死んだりしない。他の奴らとは違うんだ!

俺は正しいんだ。それを証明するために、日が落ち始めて人が少なくなってきた通りに身を投じた

まだ幼く痩せた黒髪の少年。慣れた動きで颯爽と財布を盗み細道に逃げる彼を、誰かが憎しみを込めてこう呼んだ

『獪岳』と