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真九龍
2026-03-17 20:12:31
5561文字
Public
小説
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【ナル雷】春霙 -The rain turned into sleet-
はるみぞれ-雨が霙に変わった-
平行世界─昭倭─のナルミ×雷堂で、春の天候変化で雷堂のメンタルが少し弱くなるお話。
注1:(一応)両想いなナル雷になっております。
注2:ライドウremaster版をプレイ済み及びクリア済み。
注3:雷堂のメンタルが弱っている表現が有ります。
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昭倭某年、桜が咲く少し手前の弥生の頃。
晴天だった空は瞬く間に曇り、滝の様な雨が降り注ぐ。傘など持参していない者が殆どだろう。鞄を傘代わりに急ぎ足で帰ったり、店舗の軒下に避難したり、不安な面持ちで外を眺めたり、と、人々は戸惑いを露わにする。
やがて、雨の中に雪が混じり、混合し、霙となって地面を覆っていく。
「
……
春霙、てやつか」
銀楼閣は鳴海探偵社、其の所長ナルミは、日向ぼっこ中、突然の雨と雪に見舞われ、急遽帰宅した業徒の身体をタオルで拭きながら呟く。体毛の水気が大方取れた業徒は、執務兼応接室に設置してある業徒専用座布団に乗っかり、身体を丸めた。全力疾走で疲れたのか、冷えが身に応えたのか、両方か。業徒の声はナルミに届かない故に、彼の心境は分からない。取り敢えず両方と言うことにし、ナルミは窓の外に視線を送った。
外は相変わらず霙が降り続いている。行き交う人々が半透明の雪を踏む度にびしゃびしゃと跳ね上がり、靴と服を濡らしていく。
「
……
雷堂の奴、大丈夫か
……
?」
気になるのは、学校で勉強中の雷堂のこと。
そろそろ下校時間だが、彼は傘を持って行っただろうか。いや、持っていない。晴天下に傘を持とうなら、違和感があまりにも強過ぎるからだ。傘の有無もだが、ナルミが最も気掛かりとしているのは、
「──顔の傷と、身体の傷
……
疼いて痛いだろうな
……
」
雷堂の顔には、悪魔に因って刻まれた大きな傷が有る。
十字状の傷から鮮血をぼたぼた垂らし、顔面蒼白で満身創痍になりながら「帰ったぞ、ナルミ」と、何時もの澄ました表情で堂々と告げる雷堂を見て、ナルミは動転し、椅子ごと引っ繰り返った。
何無茶してんだ大馬鹿野郎。取り乱した心を落ち着かせ、此れでもかと説教しつつ急ぎ処置を施すも、体内MAGや彼の代謝機能を以ってしても修復不可能で、雷堂の顔に一生刻まれることとなる傷跡となった。本人は名誉の勲章だとまんざらでもない様子だが、命を大事にしろと即突っ込みを入れた事を鮮明に記憶している。
其の後も、雷堂は悪魔との戦闘で身体に傷を刻む。傷を負う度に、ナルミは「無茶するんじゃねぇよ
……
」とぼやきながら処置を施す。
背中、腕、脇腹、脚。
火傷、裂傷、咬傷、打撲傷、刺傷。
至る所に傷跡と縫合痕が残り、古傷となった。
「──此の天気
……
痛むな」
ナルミは顔を顰め、左肩を摩る。
ナルミの身体にも古傷が存在する。秘密将校時代に刻まれた銃創と切創は、歳月が経過しても時々疼き痛む。今日の様に天候が急激に変化した日は、特に酷い。
あの子も一緒だ。
長雨が続き、気温の上がらぬ或る寒い日の事。口では平気だと述べつつも、其の表情は苦悶に歪んでいた。
春霙が降る外をナルミは暫し見詰めた後、お馴染みのダービー帽子を被り、次に、外套を羽織る。
「
……
何かと無茶しがちな愛しい人を、迎えに行くとしますか」
雷堂は今頃、ずぶ濡れになりながら筑土町の路を駆け抜けているかもしれない。古傷の痛みに堪えながら。
ナルミは何時の間にか眠りに落ちた業徒の身体にブランケットを掛けた後、雷堂用と自分の傘を抱え、探偵社を発つ。
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