蒼翠
2026-03-08 09:10:15
3000文字
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朝焼けは雨、夕焼けは(同棲パロ)〜番外編2本

🎈🌟の同棲パロ、番外編の全年齢分2本。
完結後の二人の日常話のためネタバレを含みます。先に本編読了後の閲覧をお勧めします
R18の2編を書き足したものはpixivに掲載
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27527197
⚠️社会人設定、本編完結後ネタバレあり
本編🔞→https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=27352374
本編、たくさん反応下さりありがとうございます。とても嬉しかったので何かお返しを、と番外編を書くエネルギーになっています。本当にありがとうございました🙇‍♀️ 全年齢で読める2本はこのままここに残します


独りの夜

 ふと、夢が途切れて意識が浮上した。
 何時だ。ぼんやりと寝返りをうち隣に手を伸ばす。
 指先が、空を切った。
 類がいない。まだ作業してるのか。

 身体を起こす。シーツの様子から、今日はまだベッドに入っていないことはわかった。
 寝室のドアを開けて廊下に出る。

 静かな廊下を進みながら、胸の奥に刺さる小さな棘が気になって仕方ない。
 リビングの扉を開ける。
 煌々と照らされる室内照明の下、ソファで横になる類の姿が見えた。
 肘掛けを枕に、片手に脚本、反対の片腕は座面から落ちて床についている。床にはペンが転がっていて、どうやら作業の途中で寝落ちしたらしい。

 思わず息を吐いた。無意識に緊張していたようだ。
 昔こういう夜があったから。
 お互いを激しく傷付ける喧嘩の後、ベッドに戻らない類。このベッドは独りで眠るには広すぎる。
 オレがまた何かしてしまったのではないかと、お前を傷付けたのではないかと不安になる。
 今は違うと分かっていても、さっきから心臓が少しずつ脈を速めている。

 屈んでそっと肩を揺する。
……おい類。こんなとこで寝てたら風邪引くぞ」
 一回、二回。
 しばらくして、類の瞼がゆっくり持ち上がった。
……ん」
 眠たげな声。ぼんやりした目が開いて、焦点が合わないままこちらを見る。
「司くん……?」
「そうだ。寝るならちゃんとベッドで寝ろ」

 しばらくじっとオレを見て、それから、ゆっくり身を起こした。
……うん」
 差し出した手に、素直に大きな手が乗ってくる。いつもは少し冷たく感じる類の手が、寝ていたせいで指先までほのかに温かい。掴んで軽く引くと緩慢な仕草でソファから立ち上がった。本当に、ただ寝落ちしていただけのようだ。
 静かな夜。寝室に向かう間、聞こえる足音は二人分。それがどんどん傷を塞いでいく。

 意識が覚め切っていない類は、布団に入るとすぐにオレに腕を回して抱き付いて、トロトロと眠りに落ちた。
 背後から温かい大きな体躯で包まれる。脚も腹も類に抱き込まれて窮屈極まりない。でも、それが嬉しくて安心なんだ。
 さっきまで胸を刺していた棘が溶け、綺麗に消え去っていく。

 穏やかな寝息が聞こえ始めた。
 オレも瞼を閉じる。

 何もない普通の夜。
 それがどれだけ贅沢なことか。

 何もない普通の朝には、目が覚めたらこのまま隣で『おはよう』と言わせて欲しい。
 それが言い合える幸せを、忘れないでいよう。

 おやすみ、類。また明日な。