冬暁
2026-03-05 02:33:47
4143文字
Public ホム主
 

落ちた真珠は波と踊る

ホム主Webオンリー開催おめでとうございます!
ぐろおか展示作品その1。学パロです。

卒業を目前に開催されるプロムパーティー。パートナーにホムラを誘おうとするが……。

 私たちの学校にはプロムナードがある。この辺りでは珍しいけれど、色んな国の人が集まる学校だからかもしれない。
 プロムが近づいてくると学校中が浮き足立つ。卒業を間近に控えた、最後のチャンスだから。
 好きな人に誘われたい。好きな人を誘いたい。
 そんな期待と緊張が辺りに満ちていた。
……ホムラ、こっちかな」
 私もそのうちの一人。緊張に飛び跳ねる鼓動に深呼吸する。
 今からこんなんじゃ、ホムラを前にしたら口から心臓飛び出すかも。昼休みの終わりまであと少しだから、出直してきた方がいいかもしれない……
 入れたはずの気合いは時間と共に空気のように抜けていく。
「中庭だけ見て終わりにしようかな」
 整えられた芝生に、カラフルに咲き誇る瑞々しい花。だけどもっと広い中庭があるからか、この小さな場所はちょっとした穴場だった。ホムラは時折ここでスケッチブックを手に座ってる。
……いた」
 陽の当たる中庭のベンチに探し人はいた。もう一度深呼吸して、胸の前で気合を入れるように拳を握る。
「あの、ッ……私とプロムに参加してくれませんか」
 踏み出そうとした足が止まった。私はまだ何も言ってない。口元を反射的に押さえた。
 ホムラの前に、顔を赤くした女の子がいる。同じ学年の、隣のクラスの子だったかな。ふわりと巻いたチョコレート色の髪にナチュラルメイクをした彼女は、小動物のような愛らしさがあった。
 あの子、ホムラのこと好きだったんだ……
 出るに出られなくなって木陰に入る。ホムラの答えを待つ時間は長いようで短かった。
「ごめん。相手がいるから」
————ッ!」
 息を飲んだのはどちらだったんだろう。
 ホムラの答えに彼女は泣きそうな顔をして唇を引き結んだ。それからホムラにひと言伝えると立ち去る。私はその場から動けないまま、ホムラの丸い頭を見ていた。
 ホムラのパートナー。いるなんてそんな話聞いたことない。でも、ホムラにいないなんて思っていたことが間違いだったんだろうな……
 力が自然と抜けて蹲る私をよそに予鈴が鳴り響いた。
 授業に行かなきゃ。そう思う気持ちは、晴れた空から落ちる雨にどんどん萎んでいく。
……ッ、あいて、いるんだ」
 本鈴が鳴れば人の気配が消える。ホムラの姿はもうそこにはなく、私は張り裂けそうな胸ごと膝を抱える。
 もしかしたら、なんて勝手に期待していたことが恥ずかしい。私はただの女友達でしかなかったことが、悲しい。
「ぅ、ぅぅッ、っく……
 告白する前に失恋するなんて思ってもみなかった。
 
 
Posted by 冬暁/薄明