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usagipai
2026-03-01 19:13:42
3850文字
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1
2
「
……
なんなんだコレは
……
ッッ
……
」
鏡の前で硬直したまま、ユス子は自分の姿を睨みつけていた。
ふわりと広がるスカート、きっちり整えられたウィッグ、無駄に完成度の高い化粧。
「うふふ。ユス子ってば、思った以上に似合ってるじゃない」
「笑い事じゃない!! なんで貴様はそんな平然としていられるんだ!!」
悲鳴に近い声を上げるユス子に、シドは楽しげに肩をすくめるだけだった。
「というか!! ジュピター様!!
なぜ止めて下さらないんですか!!」
救いを求めるように視線を向けられ、ジュピターは少し面倒そうに頭を掻く。
「あぁ?
……
いや
……
」
一拍置いて、あっさりと言った。
「ゼウスが“してぇ”って言うんだから、しょうがねぇだろ」
「そんな理由で納得するな!!
あんた、ゼウス様に弱すぎるだろッッ!!」
「ふふ
……
すまないね」
そこへ、今まで静かに様子を見ていたゼウスが柔らかく笑って口を挟む。
「でも、本当に似合っているよ、ユス子」
「フォローになってないです!!!」
ゼウスは気にした様子もなく、穏やかな目でユス子を見る。
「それにね、これは無駄なことじゃない」
「
……
は?」
ユス子の動きが止まる。
「もしかして
……
何か重大な意味が
……
?」
わずかな期待を込めたその問いに、ゼウスは小さく頷いた。
「秩序神の気持ちを、知りたくてね」
「
……
え」
「
……
ん?」
場の空気が一瞬、止まる。
「秩序とは、形を整えることだけじゃない」
ゼウスは淡々と続ける。
「“役割を与えられる側”が、どう感じるのか。
それを理解しなければ、本当の均衡は保てないから」
「
……
じゃあこの格好は
……
」
「うん。強制的に“役を被せられる”立場を体感してもらっている」
「理屈が重すぎる!!!
もっと他に方法あったでしょう!!!」
ユースティスの叫びにも、ゼウスはどこ吹く風で微笑むだけだった。
「大丈夫。君は今、とても貴重な経験をしている」
「経験の方向性が間違ってるんですよ」
横で見ていたシドが、楽しそうに手を叩く。
「まあまあ。せっかくだし、このまま外も歩いてみましょう?」
「話を広げるなッッ!!」
そんなやり取りを眺めながら、ジュピターは小さくため息をついた。
🔸「スフィーはさ、何が好き?」
何気ない問いかけだった。
答えがなくても構わない
――
そう思っていたはずなのに。
「
……
?」
少し間を置いて、スフィーは首を傾げる。
「
……
ありません」
「今、考えずに言っただろ」
ラウルは苦笑して、柔らかく続けた。
「ほら、ちゃんと考えてみて」
「
…………
」
スフィーは視線を落とし、言葉を探すように黙り込む。
その沈黙が、思ったよりも長くて。
(
……
ちょっと、せかしちゃったかな
……
)
そう思いかけた、その時。
「
……
貴方の世界の話を、聞かせて下さる時間は
……
」
ぽつりと、途切れがちに言葉が紡がれる。
「
……
好きです」
小さく息を吸ってから、続けた。
「
……
すみません。これ以上は
……
よく、分かりません」
その一言で、胸の奥がきゅっと締めつけられた。
「ッ
……
」
ラウルは思わず息を詰め、視線を逸らす。
「
……
そっか」
たったそれだけしか言えなかった。
けれど、口元はわずかに緩んでいた。
「
……
?」
スフィーは不思議そうに首を傾げる。
「
……
どうか、いたしましたか」
「いや」
ラウルは少しだけ照れたように笑う。
「なんでもないよ」
――
ただ、
それが“好き”だと言われた事実が、
思っていた以上に、嬉しかっただけだ。
🔸
「スフィー
……
そんなに、あの英雄サマのことが気に入ったのかい」
不意に投げられたフィネピアの言葉に、スフィーは歩みを止めた。
空気が、ぴたりと静止したかのようだった。
「
……
なぜ、そのようなことを」
振り返りもせずに問う声は、いつもと変わらぬ淡々としたものだったが、フィネピアは見逃さない。
ほんのわずかに、声が遅れたことを。
「何百年、君の隣にいると思ってるのさ〜。それくらい、わかるって」
軽い調子で肩をすくめながら、フィネピアは続ける。
「それで? あの英雄サマの、どこを気に入ってるんだい?」
しばしの沈黙。
スフィーは考え込むように視線を落とし、言葉を探す仕草を見せた。
「
……
わからないです」
そう前置いてから、ぽつりと零す。
「ですが
……
とても温かで
……
少し、眩しい所でしょうか
……
」
まるで自分でも初めて気づいた感情を、慎重にすくい上げるような声音だった。
「へぇ
……
」
フィネピアは目を細め、どこか嬉しそうに笑う。
「ならさ、それは本人に言ってあげたら? も〜っと喜ぶと思うけどなぁ?」
「
……
?」
首を傾げ、スフィーは心底不思議そうに問い返す。
「なぜ、それを本人に言えば喜ぶのですか
……
?
私が言ったところで、あの方も既に知っていることでしょうし
……
」
「ふふ
……
」
それ以上は説明せず、フィネピアは曖昧に笑った。
「そうだね。まぁ
……
いつか、言ってやるといいさ」
その言葉を聞き流しながら、フィネピアは心の中で静かに誰かに呟く
――
お前が作り上げた、その一輪の花は
――
ちゃんと、自分の足で進み始めている
よかったなゼウス
…
一人前の神になるために、確かに一歩ずつ歩んでいた
🔸
「おや
…
君から近寄って来てくれるなんて、口説かれにでも来たのかな」
「いえ違います」
「ふふ
…
相変わらずサッパリした答えだね、それで?どうしたんだい」
「ピアを見ませんでしたか」
「ピア?
…
あぁ君の肩に乗ってる神獣の事か
…
さぁ、僕は見かけてないね」
「そうでしたか
…
お時間を取らせてすみません、それでは」
「あぁ、ちょと待ってフィネピアを探すなら手伝うよ」
「
…………
なぜ」
「そんなに驚かれるとは思わなかったけど以前の僕ならこんな提案しないし驚くよね、いや
…
君のために何かしたくなっただけなんだ、気にしなくていい」
「
…
ありがとございます
…
」
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