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保科
2026-02-18 19:19:16
3170文字
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スタレ
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だってそんな事を言われたら
学パロ クラスメート幼なじみアグサフェ /もしくはサフェルといずれ付き合ってあわよくば結婚まで考えながらそしらぬ面で生きていたものの、サフェルはめっちゃ学年で人気あるし当人は彼氏欲しいとか宣うしで混乱の極致に陥ったアグライアさんの暴走
「
――
では、私と付き合いますか?」
「は?」
明くる日の、人気のない放課後の教室。久しぶりにログインしたSNSを眺めれば、すっかりイチャイチャするカップルたちの投稿ばかりになっていたもので、サフェルはげんなりしていた。入学直後の友達万歳!という空気はどこへやら。すっかり爪弾き者にされた分際として、サフェルはまあ益体のない愚痴をこぼしていたのだ
――
恋人の一人もいない青春の何と侘びしいことか。「あーあ、あたしも早く彼氏欲し〜い!」
――
そんなことを、うだうだ口にしながらクッキーを齧って。
もとより相談のつもりも、大して聞かせる気もないよもやま話だ。向かい、ずっと無言で編み物をしていた馴染みの女の塩対応はいつも通りだから、聞いていないものだと思っていたけれど、
――
急に口を開いたと思えばこれだ。
涼し気な目元を細め、アグライアは向かい、思わず手から食べかけのクッキーを取り落としたサフェルを見つめる。視線の先、ピンと立った頭上の獣耳は、しっかりアグライアを向いている。
「
……
冗談だってなら、エイプリルフールはまだ先だよ〜?」
目は逸らさず。そろそろとクッキーを机から拾い上げるサフェルを見つめたまま、アグライアは淡々と告げる。
「私自身が、けして冗談を好まない女であることは貴女も承知と思いますが」
「いやそれだと、
……
本気ってことになるじゃん」
「はい」
「
………
、
……
」
呆れ顔のサフェルが、顔をしかめた。しっかりしているように見えて多少天然めいたところがあるけれど、まさかそういうことだろうか。
「
……
あのさ、近くのコンビニまで付き合ってってんなら一人で行きなよ」
「おや、折角の散歩ならば、是非貴女にも来ていただきたいところですが」
「まあ
……
行けってんなら、ついていくけど。そういうことじゃなくて
――
」
「ええ、」かたり。アグライアが、用を済ませた編み棒を机の上に置く。躊躇うように伏せられた目が持ち上がり、じっとサフェルを射抜く。
「そういうことではありません。
――
返事は、頂けますか?」
「
―――
」
いつになく固く、圧のある態度に。たまらず、言葉に惑って黙り込む。校庭からは部活に勤しむ活気のあふれる声が聞こえて、廊下を走る足音も、教師のよく通る声も、全部がいつも通りの日常の景色なのに、この場所だけが
――
サフェルとアグライアの間だけが、どうにもおかしい。サフェルは強張った体を震わせて、ごくりと唾を呑んだ。
――
何で、こうなった?とんでもなく、くだらない話をしたものだから、さしもに怒ったのか?
それにしてはあまりにもたちが悪い冗談を、冗談ではないというのは、彼女らしくなかった。
長い付き合いだ。幼少期から同じ学校で、幼なじみと称することもできる。でも、だから、
――
こんな、まるで恋人同士になるかのような、告白をするような関係について、サフェルは返す言葉を持たない。
「
……
自分から口にするのも、なんですが」
静寂を破るように。ぽつりと、アグライアがつぶやくのに、サフェルは大きく肩を跳ねさせる。
「私は、有志による集計にで、校内の付き合いたい女子ランキング第3位、だそうです」
「
………
」
「伝え聞いただけですので、詳細については分かりかねますが。
大衆から見た際にも、一定以上の評価はいただけているかと思います」
そこまで言葉にして、アグライアは口を閉じた。じ、と変わらずこちらを見つめるまなざしに、何を訴えたいのかと、サフェルは混乱を隠せない。ランキングについては情報通の立場として知っている
――
面白半分でアグライアに票も投げた
――
だからって、どうしてその話をする?今?
だめだ、分からない。
――
だってアグライアが魅力的な人であることくらい、サフェルだって分かっている。人から言われるまでもないし、人よりよほどわかっているという自負がある。それが何だというのか。
「貴女は2位でしたね」
「
……
同情票と面白がった組織票だって。あ、1位はヒアンシーだったね、あれは納得
――
」
「セファリア」
名前を呼ばれ、ゴシップで話をそらせなさそうだと息を吐く。本題
――
本題。
「
……
で、だから何?
ねえ、ライア。あんた、あたしにどうしてほしいの」
どうして、急に『付き合ってほしい』等と言われたのか。返事を求められたとて、理由が分からない以上安易な回答すら返せない。
未だに掴めない意図を問いただすサフェルに、
「
……
それは」ですから、と小さな声で口にした、アグライアは。僅かに赤らんだ顔で、呟いた。
「
……
私と、付き合わないか、と
……
」
「だからそれはどういう意味って聞いてんの」
サフェルの追撃に。
……
観念したように、袖口を握ったアグライアが息を吐く。
彼女が纏っていた洗練された雰囲気が、見る間に崩れていく。
――
それはある種の鎧だったのかもしれない。
「
……
、
……
私を、貴女の恋人に、していただきたく」
「
………
あたしの?」
「
………
」
静かに、アグライアが頷く。冗談?と反射で口にするのは、先に否定された以上憚られた。困惑をあらわにするサフェルの反応に、
……
ぐ、と口元を引き結ぶと、アグライアはそのまま続けて、
「
……
私は、貴女に劣るとて、先に述べた通り他学生から一定以上の評価を得ています。
また、他に、生徒会活動についても問題なく、次期生徒会長としての働きも期待されています
――
」
その、固く台本を読むかのような呟きに、やっと気付く。
――
これ、もしかしなくても、アグライアなりの売り込みだ。
「ちょい待った!
え、さっきから何言ってんのって思ってたけど、それ内申書みたいな語り口でアピールしてたの
……
?」
「それは
――
だって。貴女に
……
良く思って頂けることが、他に思いつかず」
「ええ
……
」
「
……
不足、でしょうか。この様な、面白みのない女は、貴女には」
迷子のような心細そうな顔と、不器用さに若干引いて、どうしようもなく笑いがこぼれた。昔はお転婆だった彼女も、最近は自立して随分大人びたな〜と思っていて
――
でも、不器用な所は変わらないままだ。
「別にさぁ、ライアのいいところとか、
……
」
続けようとした言葉の小っ恥ずかしさに、んん、と唸って取りやめる。キョトンとしたアグライアには、何でもない、とだけ返して。
兎に角、分かった
――
急にこんなことを言いだした理由は分からないけれど、アグライアはサフェルと付き合いたい、らしい。
少なくとも、この堅物が手段を選ばず遮二無二アピールするくらいには。それくらい、彼女が、それを望んでいるのなら。
「確認、だけど。
……
あんたはさ、あたしが恋人だと嬉しいってこと?」
「
……
はい」
明らかに上ずった返事に、そっか、とサフェルは納得した。
――
なら、断る理由はもとよりない。念願の恋人が、とか、そんなことはもはやどうでもよかった。アグライアが喜んでくれるならば、サフェルにとって大体は些事であるからして。
すっかり大人びてしまっていた彼女の、久しぶりに見た愛らしい側面に、口元を緩ませながら頷く。
「分かった、なら、いいよ。
でもさ、何であたしなんか
――
」
――
瞬間。疑問ごと突然塞がれた口が、身を乗り出したアグライアによるものだと気づいて。
たまらず目を見開くサフェルに、ちゅ、とリップ音を鳴らしながら顔を離したアグライアが、その唇を味わうように舐め取って、艶然と囁いた。
「
――
そんなこと。
私が、貴女を愛しているからに決まっているでしょう」
うれしいです、せふぁりあ、と、すっかり浮かれ切った声のまま抱きつかれて。サフェルは今しがた体験した前例のないスキンシップに、全身の毛という毛を尻尾の先まで逆立てながら、赤く染まった顔で呆然と思う。
――
なにそれきいてない。
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