サブ者さん
2026-02-16 12:34:20
2058文字
Public 一次創作
 

落葉

邸宅の主人と気取り屋な小鳥の、すれ違いの話。
※タイトルは「らくよう」と読みます。


翌日、小鳥は外に出て飛び回っていた。
緑の羽が、木々に溶け合うように舞う。
「君が偉そうにするのは気に入らないけど、羽の美しさは気に入ったな。」
「お目が高いね。ぼくの羽は一点もの。同じものは二度とない、自慢の羽さ。」
当たり前だというように、小鳥はまた窓から飛び立っていった。

それからしばらく経っても、不思議なことに私達が離れることはなかった。

「この庭を飛び回れるなんて、ぼくはいい場所を見つけたな。」
「その庭の主も忘れないでくれよ。君に種をやっているのは私だろう。」
「やってくれなくたって、ぼくは庭から好きなのを取ってくよ。」

軽口を叩き合いながら互いの姿を眺めるのが、私達の日課になっていた。

しかしある朝、小鳥が見当たらなかった。
「またからかってるのか?」

探しても、探しても、部屋にはいない。庭にもいない。

ついに小鳥はこの生活に飽きて、どこか次の楽しみを探しに行ってしまったのだろうか。
久々に静かになった部屋は、どうにも落ち着かない。

その日は朝から晩まで、食事も用事も忘れて小鳥を探した。

そうして夜闇に灯りを照らし始めたころ、やっと庭の隅に影が見えた。
その姿を照らしながら、駆け寄っていく。
「丸一日見ないと思ったら、こんなところにいたのか?これは流石に度が過ぎるだろう

しかし近付く度に丸いはずの影は歪み、

「あどうしたんだその羽は!」

見えた小鳥の羽は、ぼろぼろに欠けていた。

「や、見つかったか。」
小鳥は明るい顔で、何かを咥えている。
それは首に掛ける飾りのようなものだった。
木々と溶け合う、美しい緑色をした飾り。

「サプライズのつもりだったのに。まったくきみは、うまくいかないやつだなあ
かろうじて浮けるだけになった小鳥が、飾りを咥えて肩に登ってくる。
「さ、つけてくれよ。」

飾りが、私の首に掛けられた。

「君の羽は

緑の塊になった羽が、私の胸に横たわっている。

「そう、一点ものさ。」
「それをきみに着けて貰えれば、もっと価値のあるものになるだろ?」

肩から飛び降りて、身体ごと土に落ちても、小鳥は心底嬉しそうだった。

私は灯りに照らされた小鳥の笑顔を映したまま、ただ膝をつくしかなかった。