アサフタ
2024-07-08 10:44:39
6437文字
Public カプ混在
 

ドキドキ!夜のお誘い相談会

花スピのスピナーくんが、荼トゥワと死黒と近→義と外リデの受けに夜のお誘い方法を教えてもらおうとする話。えろくないけど下ネタ。
時系列からなにから無茶苦茶なので、頭からっぽにして読んでください。

(スピナー視点)

「なあ。ベッドに誘うのって、どうすりゃいいんだ?」

 尋ねる声は尻すぼみになり、微かに震えていた。羞恥から頬がカッと熱くなる。
 相談するだけで紅潮するような奴が、実践できるのか? 浮かんだ疑問が心臓を締め付け、不安を煽った。それでも花畑に触れてみたい、という欲は消えずにくすぶっている。
 こうなってしまった原因は……うん、その、あれだ。そういう関係になったから、だったりする。いや、恋人の二文字ぐらいスッと思い浮かべろよ!
 不慣れな単語を想像するだけで、心臓の裏がむず痒くなる。初めて明確な言葉で好意を伝えられたときは、半信半疑どころか微塵も信じていなかったくせに。
 どこをお気に召したのかさっぱり理解できないが、花畑はドボドボと蜂蜜ばりに粘度と糖度のある感情を注いでくる。おかげで、今でも訝る気持ちは晴れないが、利用されているならそれまでだと腹をくくった。くくったけど。
 いまだに俺から触ったことはないんだよなあ……
 それは夜に限った話ではない。キスどころか、伸ばした指先で相手を掴むことさえできていない。スマホでメッセージを送るのが限界だ。我ながらレベルが低い。
 本来なら徐々に慣れていくべきなんだろうけど、相手は政治家。そのうえ、ヴィラン(こう称すると本人は嫌がる)としての顏もあり、多忙を極めている。
 一応肉体関係はあるのだが足りない。それに求められるのって、その、心臓に悪いけど、甘く響いて気持ちいいって言うか……いや行為じゃなくて誘われた段階の話な!?
 一人百面相にならないよう、表情筋を引き締めたまま室内を見回す。
 知り合いの床事情について考えたくないのか、四ツ橋の額に痣が広がりかけている。だが、口角は引きつりつつも弧を保っていた。
 黒霧の表情は分からない。いつもどおり、輪郭がゆらゆらと揺れている。
 義爛は煙草をふかしているが、視線はまっすぐこちらを捉えていた。興味がなさそうに見えて、しっかりと耳を傾けてくれているのだろう。
 その横にいるトゥワイスは、覆面をかぶっているにもかかわらず分かりやすい顔をしていた。目をぱちぱちと開閉し、俺の台詞を咀嚼している。
 口火を切ってくれたのは黒霧だった。

「掛け布団をめくって、招き入れれば良いのでは」

 淡々とした回答は、文章にするとかっこいい。フィクションに出てくるイケメンかよ。
ただ、脳内イメージでは子どもを寝かしつける光景が再生されてしまった。配役のせいだろうか。死柄木にバレたら睨まれそうだな。
 色気のない想像を繰り広げていると、弾んだ声に肩を叩かれた。

「素直に言えよ。脱げば解決するぜ」

 冗談みたいな内容だが、発言したトゥワイスは真面目くさった顔をしている。マスクしててもわかるほど真剣な目だ。でもな。

「ストレートに誘えないから困ってるんだろ……

 そもそもお前はできるのかよ。ジトリ睨むも、なんの効果もない。相手はけろっとした態度で肯定した。まあトゥワイスは素直な方だしな。と思いきや「直接誘えるわけねーだろ!」と撤回される。

「どっちだよ」

 いつもの支離滅裂な言動か? ため息を落としつつ首を傾げると、相手が急にスマホを取りだす。

「ヤりたくなったら、メッセージアプリで場所と時間を指定するんだよ。偶然会えるよう祈るのさ。オススメはここ!」

 液晶に示されている地図を指さすトゥワイス。どうやら行きつけのラブホのようだ。

「教えてくれてありがとな。使わないけど」
「なんでだよ! そりゃそーか。鉢合わせしたら困るもんな」

 一人で会話を完結させている男を眺めていると、今度は四ツ橋が口を開いた。

「言葉にするのが恥ずかしいなら、ボディタッチはどうかな」

 至極真っ当なアドバイスに、つい目を瞬く。こいつもそういう事するのか……。別におかしな話ではないが、少し変な感じがする。つーか、色っぽい雰囲気に持ち込めるのか? 外典は四ツ橋に触れられたら、それだけで昇天しそうなほど心酔してるのに。
 下世話な考えを繰り広げていると、義爛が紫煙と共に疑問を吐き出した。

「アンタから誘うことあるのか」
「あるよ」

 にっこり。そんな擬音が聞こえてきそうな笑みだ。しかし、目の奥が笑っていない。それを裏付けるかのように、四ツ橋は聞かれてもいない補足を話し始めた。

「外典は遠慮しているのか、なかなか自分からは言ってこなかったからね。そのくせ、添い寝すると真横で処理し出すから」

 私から誘った方が早いんだ、と括られた話に、思わず白目をむきかけた。
 固まる俺を尻目に義爛が「乗っかってやればよかったのに」とちゃちゃを入れる。それに対し、男は「外典が潰れてしまうだろう」と返した。相談しておいてなんだが、赤裸々すぎないか。
 予想よりも生々しい助言とエピソードに赤面していると、トゥワイスのぶうたれた声が聞こえてきた。

「いいじゃねェか、横で抜くくらい。荼毘はこっちが寝てても突っ込んでくるぞ。いいだろ」
「私は叩き起こされます」

 愚痴にしれっと黒霧も加わった。あいつら何やってんだ……。頭が痛い。でも、なんやかんやでこの二人が許すからダメなんじゃ……
 無意識のうちに、眉間にしわが刻まれる。頭痛の解消もかねて揉んでいると、死柄木がどうやって誘ってくるのかを四ツ橋が訊いていた。
 なんでだよ。相談会の主催そっちのけで会話進めんなって。
 俺がつっこむより早く、義爛が指摘する。

「それを知ってどうするんだ?」
「外典が自分から誘ってくるよう誘導できないかと」

 流石に毎回私からというのもね……。机に両肘を立て、組んだ指に顎を乗せている四ツ橋からは、どこかアンニュイな雰囲気が漂っている。悩みがあるのは俺だけじゃないんだな。ほっと息をつく。
 例を求められた黒霧は「参考になりませんよ」と、小さく肩をすくめた。

「死柄木弔が私の名前を呼んで手を伸ばしたら『そういうこと』ですから」

 どういうことだよ。叫ぼうとした台詞をグッと飲み込む。具体的な言葉ではなく、その行為が二人にとっての合図なのだろう。
 それは理解したが。

「断らねーの?」
「はい」

 即座に言い切らた。やっぱり甘い。
 いや、でもトゥワイスの方が酷いか。その辺の空き倉庫で襲われていても怒らねェもんな。人にバレたら荼毘を制止するけど、目撃者に気づくまでは語尾にハートが付いてるし。
 何度か遭遇してしまった悪夢が脳裏をよぎる。そう思うと、死柄木は場所を選んでいるだけマシだよな。いや、黒霧が移動させているだけかもしれないけど。
 考え事に気を取られていたら、急に水を向けられた。

「貴方はどうなんですか」
「へ?」

 誘い方がわからない、という議題を忘れたのか? どうした?
 困惑する俺に「どういう風に誘われます?」と黒霧が続ける。ああ、そういうことか。納得しながら、いつもの夜を思い出す。
 ……どこの段階が『お誘い』なんだ? 改めて考えると、明確なラインがわからない。
 基本的には一緒に食事して、そのあと部屋かホテルへ連れていかれる流れだ。飯に行く行かないの連絡が『お誘い』に該当するのだろうか。それとも、室内へ案内されるとき? 色気たっぷりの視線が俺を貫く瞬間?
 回想していたら、頬に熱が集まってきた。ほてりを振り払うように、手近にあった答えを述べる。

「アイツはメッセージで連絡くれるから、それがそうだと思う、けど」

 なお、食事=セックスという式が成り立つのは、俺が断らないからだ。花畑から、気が進まないときは教えてくださいね、と言われたことはあるけど、オナホが断るなんてあり得ないだろ。俺が思春期に刻み込まれた価値観と自虐を口にすれば、相手は珍しく声を荒げてたっけ。
 さして遠くない過去を噛みしめると、苦くて酸っぱい味がした。そのくせ溶け切っていない砂糖がじゃりじゃりと鳴る。複雑な感情に、口角は上を向くべきか下がるべきか悩んでいた。

「余談だが」

 四ツ橋の声に促され、視線を向ける。自分から話し始めたくせに、その唇は重い。歯切れ悪く「スケプティックは、その」と続いたのを聞いて、義爛が片眉をあげた。

「あ? 相変わらず攫ったり押しかけてくるぜ?」

 それがどうした、と言わんばかりの軽さだった。対する四ツ橋は「……そうか」と短く返すだけに留まる。ダメージ負うくらいないなら訊くなよ。
 無言になる男へ、義爛が情報を追加する。

「まあ邪魔じゃなけりゃ放置してるが、うっとおしいと蹴り倒してるな」

 拒否の仕方がえぐい。そんな断られ方、俺なら心が折れて二度と誘えなくなっちまう。
 背筋に冷たいものが走り、鳥肌が立った。なにより、拒まれる可能性に思い至っていなかった己を自覚し、吐き気がする。俺に拒否権があることを明示してくれたのは花畑なのに、なんで頭からすっぽ抜けるんだよ。自分への苛立ちと、断られるかもしれないという恐怖が全身を取り巻く。
 だって、ムラつく頻度は人によって違う。実際、花畑に誘われていない時期に催して事故処理した夜もあった。それに俺よりもアイツの方が多忙だし……
 次から次へと拒絶理由が浮かんでくる。背中どころか心臓まで凍り付きそうだ。
 だけど、羅列した妄想の中に『俺のことが嫌だから』という文言がひとつもなくて、固まりかけた心がほぐれる。自信満々かよ。
 少しだけ柔らかくなった分、傷つきやすくなった己を見つめていると、トゥワイスの明るい声が飛んできた。

「そういや『セックスしようぜ。嫌なら一人で遊んでる』って言えばうまくいくぞ。絶対やめとけ」

 最後の一文だけ、声が極端に低い。机を挟んでなお迫りくる力強さに、椅子ごと下がりそうになった。圧が凄い。
 たぶん、どっちも正しいのだろう。誘惑はうまくいったが、想定よりも滅茶苦茶にされたってとこか。
 ぽこぽこと三十を越えた男とは思えない擬音を出すトゥワイス。それを見て、仲がいいですね、と褒める黒霧の神経がわからない。いやまあ間違ってはいないけどよ……。あっ、四ツ橋も黒霧に同意してる。義爛は? 義爛もなのか?
 気になって窺うと、男が席を立ちあがっていた。俺の視線に気づいたのか、義爛が煙草を口から外す。

「便所」

 短すぎる説明だが、不足はない。紙筒を咥え直した男の背中に、トゥワイスが「攫われんなよ!」とシャレにならない冗談を投げかける。四ツ橋のこめかみが一瞬色濃く染まったが、そんなこと知る由もない義爛は「おー」と気のない返事を残して出ていく。
 扉が閉まる直前、紫色のサングラスの向こうで、男が俺を見て笑った気がした。
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