【始祖の声と昏い影】序章

一ページ目必読
※Ibパロ




 目を覚ます。右手に温もりを感じ、倒れたままそちらを見た。同時に意識がハッキリしたらしい幼馴染、シグルスがこちらを眺めている。二人の手は、硬く繋がれている。また野原で居眠りでもしてしまったのだろうかと身を起こせば、そこは薄暗い室内だ。


……?」

「ここは……


 キョトンと目を丸くするのは、シグルスの幼馴染リリアーネ。彼女に続いて起き上がった彼も、現状を把握しようと周囲を見渡す。限りなく暗いが、それでも次第に目が慣れてきた。

 倉庫、と言うのが最も相応しいのだろう。大小様々な木箱が積み上げられ、箒やチリトリといった掃除用具が重なっていた。少し埃っぽい気もして、リリアーネは口元を抑える。


「リリア、体調は」

「ありがとう、シグ。大丈夫よ」

「そうか…… だが、無理はするな」

「うん、分かってる」


 少女が微笑めば、少年は安堵したように息を吐いた。けれどすぐ表情を引き締め、リリアーネを支えながら立ち上がる。立ってから見えたのは、木箱の影になっていて見えなかった扉。近付いてみれば、これまた木製のアンティークな作りである。


「音、は……しないな」


 扉に耳を当て、シグルスは頷く。手を繋いだまま、少年少女は扉を開いた。差し込む光は淡く、しかしこの部屋よりも明るい。

 出迎えたのは、壁に並ぶ空っぽの額縁たち。長く続く廊下には、それぞれ四枚の扉が付いている。落ち着いた色合いの赤色は、不思議と心を落ち着かせた。この光景を見て、少女が抱いた印象はただ一つ。


……美術館?」