めぐみ
2026-02-11 20:00:57
9823文字
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居場所(ふるあず)

そしかい後はじふる済
新一と梓・降谷の会話
n番煎じポンコツ梓のラブコメです
2026/7/13 加筆後公開



「またこんなところにいるのかい?」
「ご挨拶ですね、降谷さん」

またまた警視庁に顔を出した帰り、少し休憩にと自販機に立ち寄ったところで背後から声をかけられた。

「そりゃあ君、ここは普通の高校生が頻繁に来る場所じゃないからね。捜査協力には感謝しているけど、受験生だろ?ほどほどにね」
「蘭みたいなこと言わないでくださいよ。行く先々で事件が起こるんですから、不可抗力です」

オレンジジュースにするかい?とあの頃の調子で聞いてくる降谷にコーヒーですと応えると、ねだったつもりはなかったが紙コップタイプのコーヒーをご馳走してくれた。湯気が立つ紙コップを受け取る。ほんのり漂う苦い香りに肩の力が抜けた。

「どうぞ。その隣の缶コーヒーはお勧めできない。ここでコーヒーなら、それがいちばんマシだよ」
「ありがとうございます。すっかり喫茶店員が板についてますね?」
「はは、そうかも。ポアロのコーヒーとは比べられないけど、それもまあ悪くはないよ」

降谷も同じものを購入して笑った。この間梓と話してからしばらく経っていた。

「降谷さん、今日は警視庁にいるんですか?」
「そう、異動してからたまにこちらにも来ているよ。安室時代の知り合いに会うとちょっと気まずいけどね」

潜入捜査を終えてどうやら降谷は異動したらしい・・・・・・が、どんな部署かは教えてくれなかった。相変わらず公安関係なんだろうな、と思いはするものの、前ほど身分は秘匿していないようだ。

「ああ、常連さんたくさんいますからね。そういえばこの間、ポアロの常連の刑事が『やっぱり梓ちゃんと安室くんは付き合ってたのかー!』って嘆いてましたよ?」
「あ〜、前にポアロに行ったとき会った人かな?それこそ今日ここで会ってしまったよ。驚かせてしまって悪かったな」
「え!会ったんですか?どう誤魔化したんです。安室で通したんですか?」
「ん〜?今は降谷ですって自己紹介しておいた。もう潜入捜査に行くことはほぼないし、例の組織のことも粗方片付いたから安室が降谷だってバレても問題はないって上から言われてるんだ。ちょっと安室は警察に近すぎたよね。潜入捜査とか云々の事情は説明しなかったけど・・・・・・まあ、察しが悪くなければ気づくだろう。別に安室が名前変えて転職したと思われても構わないけど」

確かに、ポアロにも刑事はたくさん客として来ていたし、安室は小五郎の弟子として事件に関わることもしばしばだった。警視庁に出入りするのに隠し通すなんて無理な話だ。

「そんな感じでいいんですか?降谷さんと安室さん、キャラ違うからびっくりしただろうな・・・・・・」
「そんなに違うかい?僕と安室。まあ、愛想は間違いなくむこうのほうがいいだろうけど、僕だって愛想がないわけじゃないのになあ。梓さんも全然僕には心を開いてくれないし」

あの頃の"あむぴ"といえば、女子高生に手を振られて振り返すような愛想の良さだった。さながら米花町のアイドルだった男と比べれば誰だって愛想はないだろう。

「そういえば、梓さんに最近会いました?この間会ったとき、降谷さんの話したんですよね」
「本当かい?彼女、何か僕のこと言ってた?このところ仕事が忙しくてポアロにも行けてなくて・・・・・・ようやく落ち着いたから今日にでも行こうかと思ってたんだ」

食い入るように尋ねてくる降谷に思わず苦笑いが漏れる。なんでこんなに分かりやすいのに肝心の相手に伝わらないんだ。

「前ほど話せないって言ってましたよ。それと、あなたの部下が来店したって言ってましたけど、その話は梓さんから直接聞いたほうがいいかな」
「はあ?部下が?誰だ、そんな報告受けてないぞ。・・・・・・前ほど話していないのは、本当さ。嫌われたくなくて当たり障りない話しかできないし、梓さんもなんだか前ほど気楽にしてくれないんだよなあ。昔はちょっとしたことでも甘えてくれてかわいかったのに・・・・・・」
「報告って、もうポアロの監視も外れてるんだから完全プライベートでしょう。梓さん、あんなすごい人誘うなんてムリって言ってましたよ」

安室が退職してからもしばらくは、ポアロ及び毛利探偵事務所には監視が引かれていた。 とはいえ保険のようなものだったらしく、ものの数ヶ月で問題なしと判断されたらしい。

「すごい人?僕のどこがすごいんだか。僕なんてちょっと顔が良くてちょっと仕事ができるだけの普通の男だと思わないかい?」
「嫌味ですか?ちょっとの定義については一考の余地がありそうですね。梓さんに言わせてみれば"ちょっとデキ過ぎ"だそうですよ」
「冗談さ。あんまり謙遜しても嫌味かってこの間同僚に言われてしまったんだ。しかし、能力を磨きすぎてマイナスになることもあるんだな・・・・・・」

降谷が肩をすくめて笑う。随分贅沢な悩みだが、新一にも共感できる節はある。

「マイナスってことはないでしょうけど・・・・・・梓さん、降谷さんが自分のことを好きだなんて微塵も思ってなさそうでしたよ」
「はあ・・・・・・結構アピールしてるつもりなんだけどなあ。もうちょっと踏み込んでみるか。次に会ったときこそ食事の誘いに頷かせてみせるよ。君が言う部下の件も気になるし」

梓も本来そこまで鈍くないはずだが、どうしたものか。

「そうしてください。見ててむず痒いです」
「自分が彼女と上手くいってるからって、言うねえ。さて、そろそろ僕は戻らないと。情報提供ありがとう。気をつけて帰りなよ。事件に巻き込まれないようにね」
「ご冗談を。ありがとうございます」

降谷と別れた後、駅で殺人事件に巻き込まれることなどこのときの俺は知る由もなかった。