エス
2026-02-04 11:06:23
12876文字
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誰かが死なないと出られない部屋。

梵天に監禁されてる🎍君と言うお馴染みのネタです。


 不可解な状況に陥った時まず何を疑うか。
 それは立場や置かれた環境によって様々であろう。気付いたら知らない部屋に放り込まれていたとして、敵対組織の仕業であると断定した人間は、少なくとも一般人ではないわけである。普通に生きている人間の環境に敵対組織等と言うものはないので。創作物に浸かり過ぎである。そもそも、気付いたら知らない部屋、と、言うシチュエーションが先ず無い。でも現実に今、知らない部屋にいる。しかもあるのは、拳銃が一丁のみ。
 花垣武道は思った。
 これ、デスゲームだ。
 恐らく強ち間違いではない。拳銃以外何もない部屋であるが、白い壁の上部にこう記されていた。

 誰かが死なないと出られない部屋。

 物騒そのものである。
 先程から物音一つしない。それは、誰もが考えているからである。部屋に閉じ込められた人間である。状況を把握しようと思考の海を今死に物狂いで泳いでいる。何故なら、誰かが死なないと出られない部屋である。誰かが。つまり、自分でなくともよい。そして、自分は死にたくない。普通の結論である。
「オレと三途は兎も角、どうやってマイキーとこれを拉致出来たんだ?」
 最初に口を開いたのは灰谷蘭だった。勝手に名を口にされ、三途が顔を顰めた。この場にいる人間は四人。灰谷蘭、三途春千夜、佐野万次郎、そして、花垣武道である。共通点はある。ないようだが、確かにあるのだ。それは、四人の内三人が、同じ組織に属している仲だと言う事。しかも犯罪組織である。尚花垣武道は被害者だった。三人が属する犯罪組織梵天に拉致監禁されている哀れな一般人である。
 相変わらず三人は黙っている。いや、どう答えようか考えている。
 蘭の疑問は尤もだった。
 三途と蘭は、外へ出るが、佐野万次郎はそうでもない。何せ組織の長である。気軽に出歩くことが出来る立場ではなかった。花垣武道に至っては論外である。監禁中の身だ。なのに今この場に集っている。しかも、元々同じ場所にいたわけでもないのに。
「マイキー、何処にいた?」
「タケミっちと風呂場」
「おえっ」
 聞いたくせに三途が嘔吐いた。一瞬で、想像しなくてもいい事を思い浮かべた模様である。残念ながら三途が敬愛する梵天首領と、監禁被害者は懇ろの仲なのだ。
「何? ナンバーツー妊娠?」
「えっ? パパは誰なんですか?」
「考えなくても分かんだろ。三途が体許すなんて、マイキー以外にいるわけねえじゃねえか」
「えっ! マイキー君、オレと二股かけてんすか!?」
「いや、って言うか、オレ、オマエ孕ませてねえじゃん」
「えっ、三途君の事は孕ませたって言うんですか!?」
「えっ、記憶にねえけどマジでオレ?」
「ンなワケあるか!! いや待て、もし今オレが肯定したら、マイキーは責任取って一生梵天首領でいてくれる……
「腹の子を盾に立場に縛り付けるやり方」
「これが汚い大人ってワケっすか……
「そもそも梵天て奇麗な組織じゃねえし」
「それはそう。いや、オレこんな汚い所にいられません! 早くお家帰して下さい!!」
「いっそオマエも孕んだら? そしたら腹の子を盾にして、家に帰れるかも知れねえじゃん」
「成程。灰谷さん頭よく……ねえな……
 寧ろ灰谷蘭だけでなく全員頭はよくなかった。何しろこの場にいるのは男だけなので、肉体関係の有無に関わらず孕むわけがないのである。更に言えば、妊娠したらしたで、監禁する理由が増えるだけである。何方にせよ帰宅は絶望的なのだ。
「大体真昼間から風呂場でナニしてんのって話だけど」
「それはタケミっちが」
「えっ、花垣の方から誘ってんの? 意外」
「マジで死ね!!」
 蘭の割と素の感想と、三途の罵倒を耳にして、気まずげに武道は目を逸らした。
「もうこんな事止めて一緒に逃げようって言うから、まあそれもいっかなって思ってたとこ」
「は?」
「は?」
 犯罪組織の幹部二人が間の抜けた声を発した。どうやら、艶めいた話ではなく、単に悪巧みだった模様である。流石に浴室では邪魔も入らない。如何に三途春千夜であろうとも、緊急時は別として、情事の真っ最中に突入してきたりはしないのだ。花垣武道とて計画を練る際は、時と場所を選ぶくらいの事はするのである。
「オイ、コラテメェ!!」
「ひっ」
 三途春千夜の怒号に武道が恐怖が混じった声を発した。怒りを露わにする裏社会の人間の恐ろしい事と言ったら、怯えもすると言うものである。尤も、他の二人は平然としていた。同類だからである。
「何考えてんだ!!」
「いやだって、犯罪とか、ちょっと、その、よくないかなあって……
「ちょっとじゃ無くね?」
「確かに、大分良くないんですけど」
「どんだけマイキーを誑かせば気が済むんだ!」
「いや、ちょっと身に覚えがないんですけど……
「マジでテメェだけは殺す。必ず始末する。出たら覚えとけよ?」
「ひっ」
 目が血走っていた。心なしか睫毛も上を向いた気がする。ビューラー要らず。尚この間佐野万次郎は、またやってんな、くらいの気持ちで二人のやり取りを見ていた。三途は顔を合わせば大抵、武道を罵っているのだ。そういう時は大体、この泥棒猫が、と、言う副音声が聞こえてくる。要は、佐野万次郎と懇意の人間が許せないのだ。
「別に出た後じゃなくてもさ、今殺ればいいんじゃね?」
 ふと、蘭が何気なく声を発した。
 気付いたのだ。三人の視線が向く。それを予期して、床を指さした。
 拳銃が一丁落ちている。
 次に、壁を指さした。其処にはこう記されている。
 誰かが死なないと出られない部屋。
 成程、と、納得したくないのに納得してしまった。三途は武道を殺したい。そして武道が死ねば、この部屋から出られると言うわけである。成程、万々歳。ある意味ハッピーエンドである。但し、誰にとってもハッピーではないあたりに注意が必要なのだ。
「そしたらオレ、オマエ殺すけど」
「えっ」
 感情の乗らない声で佐野万次郎が言った。三途春千夜へと視線を送りながら。成程、仇討ちである。蘭は思った。花垣武道と三途春千夜が死ぬのはいいとして、この空間に佐野万次郎と残されるのは嫌だな、と。でも、出てしまえば関係がなくなる。つまり、良しとすべき。うん、と、一つ無言で頷いた。
「その後オレも死ぬ」
 えっ。
 蘭が内心で声を上げた。尚、歓喜の声であった。
 三途春千夜が花垣武道を殺す。その後、佐野万次郎が三途春千夜を殺す。そして、佐野万次郎が自決する。残ったのは灰谷蘭だけ。紛うことなく、ハッピーエンドである。
 よし、やれ。今すぐやれ。殺し合え。
 蘭は声を出すことなく腕を組んだまま祈った。目の前で殺人が起こる事をである。こうして黙って立っているだけで勝手に死んでいき、そして、この得体の知れない部屋から出ることが出来るのだ。イージーすぎる。正直全く意味は分からないが、今天が己に味方しているとすら思っていた。
 だが、灰谷蘭は、そう運がいい方ではないのだ。
 恐らく単純に運だけなら、弟の方がいい。何故ならこのような場所に訳も分からず突っ込まれている時点で、悪いのである。
「み、皆さん冷静に! 落ち着きましょう!」
 全く落ち着きのない声で武道が言った。黙っていたら殺されるかもしれないからである。蘭は思った。余計な事を言わずにさっさと殺されろ。基本人の心はない。
「大体、死ぬってその、肉体的な死とは限らないじゃないですか!」
 聞いた面々が訝し気な表情を浮かべた。何を言っているのか理解出来ない顔である。突然哲学めいた事を言い出した男を無言で見たのだ。そもそも、肉体が死ねば間違いなく死である。疑うべきことなど何もない。要は単に死にたくないだけなのだ。何しろこのままだと、真っ先に花垣武道が死にそうなのだ。
「例えばその、社会的な死とか!」
 三方から冷めた視線を送られ尚、花垣武道は奮闘していた。果たして社会的な死とは。何も言わずにとっとと死ね。そう、蘭は思い、だが、これが遺言になるかもしれないとの思いから、無い筈の優しさを見せたのだ。
「つまり?」
 それが全ての間違いであった。無いものは、見せるべきではないのだ。
「えっと、先ず灰谷さんが、下半身を露出します」
「なんて?」
「そして、逆立ちをします」
「なんて?」
「更に大声で、おちんちんびろーん!! って、叫びます」
「死んで?」
「そう、これが社会的な死です!!」
「いや、その前にオマエ殺すわ」
「つ、ついでに、放尿して貰ってもいいんで!!」
「ついでのオプションじゃなくね?」
 この時点で三途が俯いた。割と想像力が豊かなので、脳内に登場させてしまったのだ。今三途は唇を噛んでいる。まさか、下半身を露出して逆立ちしながら、発したくない言葉を叫ぶ灰谷蘭を想像して笑い出すわけにはいかなかった。しかも、おちんちんびろーん!! と、同時に脳内の灰谷蘭は開脚した。見せつけてきたのだ。その上留めに、垂れ下がった陰茎から滴る尿である。終了。
 成程、社会的な死。
 三途は勝手に納得し、そして、花垣武道への殺意は一先ず失せたのだった。
「よし、蘭やれ」
「その前にテメェ等全員殺す」
 哀れ灰谷蘭。一人勝ちから一転、一人負けになりつつある。本気で三人を睨みつけたが、残念ながら効果を発したのは、対花垣武道のみであった。
「でもこれで出られたら誰も死ななくていいんだぞ?」
「オレ以外の命大事じゃねえから」
「結構いい案だと思ったんですけど……
「取り敢えず花垣武道だけ殺していい?」
「いいわけねえだろ」
 即座に万次郎が拒否し、蘭は考える素振りを見せた。
「じゃあ、花垣がやればいいんじゃね」
「いや、オレがやっても社会的に死ぬほどの効果はないと思うんですけど……
「なんて?」
 蘭は呆けた。投げられた球を打ち返したら、その球が忽然と消えたのである。いや、そんな馬鹿な。片や花垣武道は真剣な表情だった。しかも、何処となく落ち込んで見える。つまり、犯罪組織に属するカリスマと呼ばれていた男がやるからこそ、社会的な死に繋がるわけであって、単なる一般人である己がやっても効果は薄いと思っているのだ。
 そんな馬鹿な。
 何をどう考えても、誰がやっても、死は避けられぬ結果である。
 花垣武道、間違った方向に自己評価低め。若しくは、灰谷蘭を心底おちょくっているかの何方かである。尤も、犯罪者相手に命を懸けて軽口を叩く気概は持っていなかった。よって、花垣武道とは、こういう男なのである。
 蘭は呆れ、方向性を変えることにした。真面に向き合っていては、神経が磨り減るばかりである。
「大体さあ、これ、花垣の所為じゃねえの」
「えっ」
 急に心当たりのない矛先を向けられ、武道が狼狽した。尤も他の人間からすれば、思い当たる節があるように見えてしまったのだが。動揺する様が如何にも、原因を知っていますと言うように見えたのだ。只の疑心暗鬼である。
「そんなわけないじゃないですか!」
「いや、確かにオレも最初からおかしいと思ってたんだよな。いい加減吐けよ」
「どういう事!?」
「花垣武道ってワケ分かんねえとこしかねえし」
「滅茶苦茶言いがかりですけど!? 大体そんな事が出来るならオレはとっくに梵天から抜け出してますし、オレも一緒に入るわけないんですけど!?」
 必死な様から繰り出されたのは、真っ当な言い分であった。それはそうとしか言いようがない。態々自分から、誰かが死なないと出られない部屋に入る理由がない。自殺願望者かと言う話である。大体一番殺されそうなのが、花垣武道なのだ。何せ、これで一応単なる一般人である。
「じゃあもう、此処で暮らすしかなくね?」
「えっ」
「えっ」
「えっ」
 諦め切った一言を吐き出したのは、佐野万次郎であった。一体何を言い出すのか。此処で暮らす? 正気とは思えぬ言葉である。そもそも佐野万次郎が正気かどうかなど、誰も分かりはしないのだが。
 三人は想像した。
 この何もない部屋で、四人で暮らす。
 そして行き着いた。
「餓死確定じゃん?」
 言葉にしたのは花垣武道だった。拳銃一丁しかない部屋である。出口はおろか、窓もない。水も食料もない。どう足掻いても、行き着く先は死である。
 絶望。
 尤もその絶望に浸る前に動いた男がいた。
 灰谷蘭である。
 こうなっては形振り構っていられぬと、すぐさま拳銃へと手を伸ばしたのだ。死を待つくらいなら、殺す。当然とも言える思考である。他は反応が遅れた。三途は目を見開き、もう一歩遅れて、武道が、あっ、と、声を発した。但し、灰谷蘭の手よりも速いものがある。
 佐野万次郎の足である。
 蘭の手が触れる前に、拳銃を蹴飛ばしたのだ。勢いよく床を滑り、瞬時に遠ざかる。それを見過ごすことなく、今度は万次郎自身が動いた。拳銃の方へと飛び込み、掴む。正に一瞬の出来事。そして、それで終わらなかった。
 パン。
 乾いた音が耳を掠める。薬莢が落ちる。
 撃った。
 誰を目掛ける事無く、壁に向かって撃ったのだ。
 三人が弾の方へと視線を送り、その行先を見た。壁にめり込む。その筈だった。
「跳ね返った!」
 まさかの出来事である。どうにも硬い壁らしく、弾を弾き飛ばしたのだ。然程に勢いを殺すことなく、跳ね返る。跳弾。
「死ぬって!」
 当たり所が悪ければ、確実に死ぬであろう弾である。しかも弾は灰谷蘭へと向かっていた。
 まさか、これを狙って。
 蘭は訝しんだが、跳弾とは狙えるものではないので単に運が悪いだけである。勿論日頃の行いも悪い。
「ダアッ!」
 元カリスマらしからぬ声を上げ、蘭が飛び退いた。流石に勢いを失くした弾が床に落ちる。危機一髪。如何に悪事を重ねていようとも、まだ天に召されるには早いらしい。顔を引き攣らせ、荒い息を吐いた。何時もの形からは想像出来ぬ程、追い詰められた姿だった。それを他人事の顔で眺めながら、三途と武道は当たっても良かったのにな、と、物騒な事を思ったのである。この場において、尤も人望のない男であった。無論、他も似たり寄ったりではある。
 静寂。途端に静まり返った狭い部屋で、急に発砲した男は平然と言った。
「弾、一発しかなかったみたい」
 死刑宣告だった。
 これで、殺し合う事も自死も出来なくなったわけである。拳銃に頼り切った場合の話であるが。もしかすると、最適解はロシアンルーレットだったのかもしれない。三途は思ったが、何故此処へ来てそのようなゲームに興じなければいけないのか。そもそも誰が乗るのかという話である。蘭に言わせれば、とっとと誰かを撃つべきであった。いや、そうしたのだ。佐野万次郎に阻まれただけである。この間花垣武道は、やはり社会的な死しか救いはないのではないかと考えていた。蘭が駄目なら、三途でもいい、と。一応佐野万次郎を候補に上げない情はある模様。
「やっぱ、暮らすしかなくない?」
 万次郎が意図も容易く言うが、暮らせる環境ではなかった。生活できる術がないのだ。あらゆるものがない部屋である。この何もない部屋で男四人缶詰。精神に異常を来たすのが先か、餓死するのが先か、それとも、舌でも噛み切るか。いや、どうあっても誰か殺した方が早い。一番弱いのは花垣武道だ。しかし、武道を狙うと佐野万次郎が出てくる。万次郎には勝てない。つまり、三途を殺すしかない。奇しくも三途も同じことを考えていた。殺すなら花垣武道だが、佐野万次郎には勝てない。だったら灰谷蘭を始末するしかない。そもそもここで暮らすとなると、死んでも見たくないものを目にする可能性がある。
 佐野万次郎と花垣武道の性行為である。
 人間死に瀕すると性欲が増すという。子孫を残したくなる等と言う。つまり、やりかねない。どうあっても男同士なので子孫など残せるはずもないが、そう言った常識が通じないのが佐野万次郎である。少なくとも三途の中ではそう言う扱いなのだ。人生の最後に見る景色が、敬愛する人間と嫌悪する人間の性行為。死んでも嫌である。いや、死ぬのだが。いや、その前に殺す。もうどうあっても、灰谷蘭を殺すしかない。
 お互い殺意で通じ合ったのか、物凄く昏い目で三途と蘭は見つめ合った。
 その様を見ながら武道は、どうやって社会的に死んでもらうかを未だに考えていた。現実に死ぬより、一時的に尊厳が死ぬ方がマシだと説得しなければいけない。もう、何方でもいい。何方でもいいから、公表できないくらい恥ずかしい行為をして欲しい。とんでもない願望である。
 黙り込む三人を他人事の顔で見ながら、万次郎は我関せずと欠伸をしていた。
 今部屋の中は、殺意と絶望が空気に溶けて蔓延していた。其処へ少し、武道の願望が入り込んでいる状況である。殺す、死ぬ、死ね、おちんちんびろーん、殺す、死ぬ、死ね。これである。
 口火を切るのが先か、それとも、襲い掛かるのが先か。
 その時だった。
「出れた」
 万次郎が、ポツリと呟いた。
 正にその言葉が契機であったかのように、いや、現実には言葉の方が後だったのだろうが、三人には万次郎の宣言によって戻れたように感じたのだ。そう、気付けば、梵天が所有するビルの一室に四人はいたのである。決して広い部屋ではなかった。先程までいた得体の知れぬ部屋と同じくらいの大きさ。だが、出口も窓もある。
 呆然とする三人に向かい、万次郎が言った。
「誰か死んだ?」
 勿論誰も死んでいない。見ての通りである。だが、三途と蘭には分かったのだ。確かに訪れた死である。肉体は死んでいない。社会的にも死んでいない。あの時死んだのは、別の物だったと。
 つまり、精神的な死を迎えたのだと分かったのだ。
 迫りくる絶望に、心が死を訴えたのだった。
 思わず三途と蘭はその場にへたり込んだ。死んでもいないし、殺してもいないし、性行為も見なくて済んだ。社会的な死も免れたし、結果としてはオーライである。只不可解な事が一つ。
「あの部屋、一体何だったんですかね」
 二人の疑問を武道が代弁した。
 無論、答えは無かった。相変わらず佐野万次郎は他人事の顔で、欠伸をしている。