akinoshiroihana
2026-02-03 21:50:32
5063文字
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鬼追わぬ里 (2022年節分ネタ)

そういえば22年あたりの作品は持ってきてないなと。
以下、同年の東映版とネオゲ版新ゲ版書きなぐりも置いときます。
東映だけ名刺整形しよっかな……



「節分か」
豆を撒いて鬼退治、か。この御時世に、へへっ。などとベンケイが笑う。百鬼帝国との戦い半ばの冬だった。
「確か炒った豆が芽を出すまで、炙った鰯が川を泳ぐまで人里には二度と来るな、だったっけ?ハヤト」
「ああ、それをヒイラギの枝に刺して玄関に飾っておくものらしi―――
「おいおいおいやめてくんねえか、そんなもん、野生動物の餌付けになっちまう」
生物には手厚いベンケイが早々に抗議の声を挙げた。実のところ、この4人目の仲間は導火線がいささか短い。過去のファンブックにおいても、3人目の仲間の「中の人」に比べてどうにも気難し気で、ただ淡々と(004が劇場版で死んだ時さえ)冷静にコメントしていたハヤトの中の人とも違う。
(なんなら、『ド〇ゴン〇ール』において、作者の初期アシスタント氏とも多少のコネがあったらしい人物が作った同人誌において、作者や主要声優へのアンケートを行ったページまであったのだが、そこにおける界王様のお返事は「最後に一言お願いします!→お断りします」であったりした。クリ〇ンやヤ〇チャの『いつも観てくれてありがとう!これからもがんばりますね!』とはエライ差であった)

閑話休題

「まあそれじゃ家の中でだけ豆を撒いて、福豆をいただくとしようじゃないか、ハヤト君のお姉さんが成田山帰りのお土産だと届けてくれたんだよ」
「えっ」
折々に訪ねて来る神明日香は、折々にいろいろ土産をくれる。たまに毒電波が出るアクセサリーとか、鬼に改造された婚約者だとかへんなものも混じっているが。
「なあ、ハヤト、成田山新勝寺って」
「姉さんだから、オレほどスーパープレイはしなかったと思うぜ」
運動神経は悪くねえけどさ、たぶん

そう言うハヤトの目は若干泳いでいた。


*


「来ると思って諦めていたぞ、年の数の恵方巻だ」
「おい」
「なんならお弟子さんにも持たせてやればいい」
盛大にボケてみせた上に早く帰れ的なニュアンスもあからさまにデパ地下のショッパーを二つ目の前に置かれて、道着姿の男が口を尖らせた。
「なんだよ、豆もらったから厄除けに持って来てやっただけじゃねえか、
 食おうぜ」
先日の戦いで再会した以来の季節の節目を共に過ごそうと、それでも係累のありすぎる時は避けた感じで。

「食えん」
「あ?」
「正確に言えば、干物は膨らんだ場合が怖い」

内蔵に届いた負傷部位関連で胃袋も少々切り詰められたんでな、そうそう入ったもんじゃない
もらったのはミルにかけて、きな粉ドリンクにでもしてちびちび戴くさ
最近は食いっぷりのいい奴らを楽しそうに見るおじいちゃんみたいだって言われるのに定評がある
二十代最後にようやく入ったばかりの彼は、そんなことをようよう白状できた、という風に笑い、腰かけても持て余すくらい長い脚に肘をついて、招くような仕草をした。
「だからいっそ、そうだな、お前が気持ちのいい食いっぷりを見せてくれるのも歓迎だぞ?」
きっと懐かしい、などと言うので、相手は溜息とともにどかりとソファに座り直した。

「で、お前が超チビチビ食ってるそれは何なわけだよ、おぅ?」
持って来られたマグカップの緑茶で口を洗いつつ、竜馬が聞く。
「最近は子供も恵方巻に参加できるようにロールケーキも一緒に売ってるらしい。それに女性用恵方巻のハーフカットや四分の一カットも。それの折衷案だな」
多分、これで二十四分か三十六分の一カットくらいか、俺が切ってしまってるんじゃなくて、これがフルサイズならいいだろうと今回買ってみたわけだが―――

あっ、しまった、食い終わる前にしゃべっちまった、これっぽっちなのによ!
抹茶ロールケーキの前で舌打ちして、いささかお行儀のよくなかった往時の物言いが蘇っている。
そんな神隼人に、相手は笑った。

*

(頼光ネタコワイヨーを一回書きたかっただけです)


あの夜にあった事を彼は多く知らない。
あの時空の乱流からほんの数日前を「港」としてそこにたどり着いた竜馬と、数年前を「港」としてたどり着いた弁慶が、後生大事にしていた刀を失い、何やら殺気立ったような、しかしいつもほど楽し気な動物じみたではない顔で戻って来た以外は。「棺桶よりも狭いコックピット」に閉じ込められたままだった彼は、不機嫌に爪を―――まだ平均よりも長い爪を噛み研ぎまわしていた。

「ライコウやツナやキントキって、鬼やらいろいろ相手にしてるやつがいてよ、それでそいつに供養って置いてきちまった」
早乙女ミチルの報告書に書き込まれていくそれからすれば、清和源氏の一党もどきと遭遇したと見えた、ただし、歪んだ平行世界で。

「俺が入手した書き物では、ゲッター1がこっちの世界の酒呑童子絵そっくりに描かれてるのもあった。奇縁てやつか」
そいつとは逆に頼光が死んでゲッターが帰れた、のか、ゲッターが暴れた後消えたんで英雄譚にでもなったのか。
そうとだけ割り込んで言い、続く報告をまてば沈黙があった。

おい隼人何言ったんだよテメエ、全然わかんねえだろうが、鬼娘のやろーも「そうなの?待って、それは専門外」とか言いやがってよ
「大江山の鬼退治は、この世界の史実的には夷賊討伐の記録が変質したものと言われるからな、古都の跡地を掘ってるのを鬼の骨が出土するかどうか見たい時だけ軽装備で見に行ってるいい身分の奴とは違う。」
それになかなかにゲスだ。
「ああ?」

俺もそう知らん、これはまあ、ただそこらの図書館でガキでも得られる一般情報なだけだ。
頼光は童子の心を開かせるために―――そしてこの場合なら頼光が清明とかいうもっと強大な敵を退治するための世界でなら、お前かお前の仲間だったそいつらがやったことかもしれないし、露悪表現としての役割の逆転かもしれねえが、犠牲者である京の都の姫君の、付け根から切り落とされた脚の肉を捌いて、これ見よがしに掲げつつそのまま食い、手下連中も同じく姫君達から搾った血の杯を嬉々として口にしていたという絵があってな。お前らがそうやってたのかと思ったぜ
「ちょ」
「おいてめぇ」
隼人は仮説をいくつも出して、話をぐるんぐるんひっくりかえす、ので追いつけない
「そしてその部分でも逆転現象が起きていたのならお前達が鬼に仲間の肉を食わせてから倒したということか、そんなことはあったか?一緒に女の子を食ったか?それとも鬼を食わせて武将たちを鼓舞でもしたか?感染ルートはこの世界でもまだろくに研究されてねえからな」
くそ、こいつ、
頼光を名乗る人物と一緒に飯を口にして受け容れられた仲なら、清明を名乗る相手だったら呪詛的に対抗しようとでもして、そんな武勇伝もどきがありそうな話だと思っただけさ。

てめえ、ふざけん、ぶっ殺とのあの場でそこそこ悲しくも片付いた話へのダメ出しをくらい、怒鳴ることを抑えられなかった背後からの竜馬をいなしながら隼人は思う。

出会った人々の名を聞いた時、よもやそんな童話的半虚構世界だったなどと、よくもどって来られたと鳥肌立ったのだと、彼はあくまで口にすることはないまま、微かに震えたのだなどと。下手をすれば物語の中に閉じ込められて、自分たちの無残絵だけが後世に流れ着いて終わったのかもしれない、とんだ鬼退治じゃねえかと。
あれはただならない、追儺の儀式。