momoo
2026-01-23 21:59:33
4169文字
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あたらしいレイヴン

AC2幻覚。弊レイヴンの自我がめっちゃでかいので注意



___ヴィルフール空港。宙を舞う戦闘機をミサイルで次々と撃墜していく一体のAC。
(確かに、ビギナーとは思えない動き地球でもレイヴンだったっていうのは、嘘ではなさそうね)
換装した重量二脚を軽々と動かし、管制塔の屋上から空を見渡している彼。先ほど墜とした爆撃機を一瞥してから、向かってくる敵群に狙いを定め、飛び立つ。
(この調子なら)
目立った被弾もない。何事もなく終われるだろう。___そう思っていた矢先のことだった。
? 何を
雨が降るように墜落していく戦闘機たち。恐らくは最後の軍団であろうそれらのうち、バランスを崩して群れから逸れた一機に、不意に彼が近づく。そして、
「___ちょっと!レイヴン、聞こえてる!?」
武器を持たない左腕を、が、と振り下ろした。当然、機体の重みに任せ、ふたつは落下してゆく。この先に起こることを予感して、咄嗟に通信を繋いだ。
「やめなさい!今は敵に集中して!でないと、」
彼は、ノーヴィスは。アレに干渉するつもりなのだ。
明確に人間の操作している機体を狙って。
でもどうして?何故そんなことを?
___違う!
味方をすべて殺された、最後に残った数人。それが かたきに対して行いうるアクションなどひとつしかない。
「___ダメ!!」
ひしゃげたミサイルの発射口が俄に光る。






重い爆発音。
モニターから、最後に残っていた敵機体の反応が消えた。
…………
操作板に手をついて、食い入るように画面を見つめる。
至近距離で、頭部めがけて爆撃を喰らった。ACは頑丈だ、死にはしないけれど___衝撃を受けて、子どもが無事でいられるだろうか。
……………
増援の気配はない。ミッションは達成された。
震える指で、機体との回線を無理やり繋ぐ。せめて呼吸音でも入っていてくれれば、
『ネル』
……!」
幼い声が耳に届く。
『だいじょうぶ。ケガしてない』
冷静な声音は、今までのレイヴンたちによく似ていた。
「___よかった………
無意識のうちに嘆息が洩れる。___そうじゃない。要項を伝えなければ。
……ひとまず帰還して。バイタルを確認したら、話をしましょう」
知らぬ間に頬を伝っていた冷や汗を、知らないふりをして拭う。返事のないままに通信を切った。



そのあと。
戻ってきてACから出てきた彼には、不思議なことに何の外傷もなかった。生身の大人でさえどこか打撲していてもおかしくない衝撃を受けたはずなのに。
「ああいったことは二度としないで」

処置室、脈拍を測られながらベッドに腰掛ける彼に、横に座る私は言う。
「死んでいてもおかしくなかった。運が良かったのよ」
……
さっきまで操縦桿を握っていただろう、小さな手。掌の皮膚を硬く擦り切れさせたそれは、紛れもなくレイヴンのものだ。爪も指の細さも、正真正銘、子どものものなのに。
べつに」
彼が口を開く。
「べつに、ネルにはかんけいないでしょ」
明らかに不貞腐れた声。きっと眉をひそめて言っているに違いない。
「知ってるよ、ぼく。れいぶん ・・・・っていうのは、いっぱいいるんだから。ネルはぼくじゃなくたっていいんだ」
……どうしたのよ、急に」
「ぼくもネルじゃなくたっていいし」
悪口を言ってるつもりなら、効きませんからね」
ああ嫌だ。関わりたくない。関わったって、知ったってろくなことにならない。わかっているのに。
「あのね」


どうしても___見放せない。


「ノーヴィス。
私は、今までたくさんのレイヴンと組んできた。皆いなくなってしまったけれどね」
顔を見て言えば、すぐに彼もこちらを向いた。
「もういい加減うんざりなんです。パートナーに死なれるのは」
何かに覆われたような跡のついた黄色い瞳。カメラのレンズを思わせるそれに、私は迷わず語りかける。
「だから正直に聞くわ。あなたも正直に答えて。
___どうしてあんなことをしたの?」
私の質問に、彼は少し迷ったように目を泳がせた。
そして、

……さがしてるの」

そう言った。

「探してる?人を?」
「お友だち」
呆気にとられる私の目を見ながら、彼は言った。
「お友だちをさがしてるの。ずっと、ずーっと、長いあいだ」
嘘をついているようには思えない、真剣な眼差し。少なくとも、彼にとって火星の戦場に身を投じるだけの価値を、否応なしに読み取らされる。
「だから、中にいる人間を手当たり次第に
私の言葉に頷いて、でも見つからないんだ、と寂しげな言葉を続ける。
「あきらめられなくて、火星 ここまで来たの。ここなら見つかるって、ぼくを起こした大人のひとに言われたから」
(起こした?)
掴んだままの彼の指が、私の手を微かに握る。
……
口の端をきゅっと結んで、私の答えを待っている。
___ああ、もう、自分が嫌になる!
「わかった」
彼のちいさな手を握り返して、
「私も手伝うわ」
言ってしまった。

「ほんと!?」
「ええ。ただし、私の指示をきちんと聞くこと」
ぱっと顔を眩しくする彼に一瞬絆されそうになって、慌てて毅然を取り繕う。
こんな子どもを放っておくなんて、私にはできない。捨てたはずの情が残っていることは、自分が一番わかっているのだから。
「誰かを探すなら、それ相応のやり方があるわ。少なくとも、戦場で機体をこじ開けるのは絶対に間違ってる」
「えー」
「当たる確率が低すぎるのよ。もっとちゃんと、話の通じる人間だと分かるところから探しましょう」
ぴぴ、と機器が鳴る。簡易なモニターに映し出される数値は正常の範囲内だ。本当に運がいい、とこっそり胸を撫で下ろしつつ、立ち上がって彼を促す。
「そうね、まずは……アリーナかしら」
「ありーな?」
……本部からの指示を何も聞いていないの?」
善は急げだ。この問題を早めに解決することができれば、彼をミッションに集中させられるだろう。散漫はいつか致命傷になる。手遅れになる前に行動しなければ。
「あなたと同じレイヴンが集まるところよ。ある程度身元が判明しているから、人探しをするのには適していると思う」
「ぼくとおなじ
「今までの限りでは、何かしらの兵器に乗っているんでしょう?実績がないうちでもACと相対したいなら、アリーナが一番手っ取り早いわ」
この様子ではろくな登録もしていなさそうだ。一から教えるのは少し面倒だけれど、死なれるくらいなら投資した方がずっといい。
「行きましょう、レイヴン」
うん!」
手を差し伸べる。彼は子どもらしく頬をほころばせてベッドから飛び降りると、期待をもった眼差しでこちらへ走り寄ってくる。

___私の掌に触れた彼の指は、やはり幼かった。