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Adaps_A
2026-01-20 21:32:45
1897文字
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統一王者のはなし
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「ザ・タイラント」が「光の戦士」を獲物にできないはなし
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ぐしゃ、と音を立てて、機械兵が潰れた。
壊れた兵器たちが、折り重なっている。
折れ曲がった右手が突き出て、墓標のようにも見える。
エレクトロープで形作られた装甲が、いとも容易くひしゃげていく。
そこは『怪物』の狩場であった。
フードを目深に被った『人間のカタチをしたモノ』が、身の丈ほどもあるハンマーを片手に暴れ回っている。
生物であろうが、無機物であろうが、『それ』の視界で動けば最後、墓標の素材へ仲間入りだ。
こうして見ると背筋が凍る。
だが、そんなことはどうでもよかった。
目の前の『怪物』がどれだけ暴れ回ろうが、巨大な墓標を築こうが、どうでもいい。
何よりも恐ろしいのは、その『怪物』が、『統一王者』と呼ばれる者だということだ。
「何を
……
している
……
」
ようやく絞り出した声が妙に震えていて、大鎌を握る手に力が入る。
『怪物』は機械兵を頭から叩き潰し、そのまま動きを止める。
少しの間のあと、ハンマーを引きずりながらこちらを見た。
「狩り
……
を、している」
ぎこちなく答えた『怪物』は、ただ、まっすぐにこちらを見ている。
操られた様子もなく、強要された様子もなく。
ただ、正気のまま、静かにこちらを見ていた。
「
……
」
どうしても、武器から手を離せずにいる。
ゆっくりと息を吐いて、意図的に手から力を抜いた。
「きみは」
「
……
」
「おれを、獲物にしますか」
凪いだ瞳が向けられている。
全ての感情が抜け落ちたような顔が、フードから覗く。
ただ、こちらを見ている。
こちらを、見ている。
「
……
しない
……
」
どうにか絞り出した返事を聞いて、『怪物』は興味をなくしたように視線をそらした。
「そう」
それだけ言って、ハンマーをしまった。
纏う雰囲気がようやくいつもの『彼』になり、こちらも武器をしまう。
緊張で硬くなった身体が一気に弛緩して、座り込む。
なんだ、アレは。
頭では理解できている。アレは『生身の統一王者』で、怪物じみた行動のせいで『怪物』と称されてしまっただけのことだ。
それなのに、身体が理解することを拒んでいる。
今になって震えが止まらない。
恐ろしいほど効率的に敵を叩き潰し、最短で次の敵へと到達していた。
「大丈夫?」
「ああ
……
」
心配そうに差し伸べられた手を取り、立ち上がる。
フードを脱いだ彼は、何でもないことのように辺りを見回していた。
「なぜ」
「ん」
「なぜ、狩りなどと」
不意にこぼれた言葉に、彼はぼんやりとこちらを見た。
先程までのような迫力はなく、『いつも通り』の統一王者だ。
「んん」
しばらく悩む素振りを見せたあと、彼は唐突に告げた。
「殺し合いが、したいんだ」
晴れやかな笑み。
心から楽しいのだと、誰が見たってわかる。
「命を削って戦技を競うの。楽しいんだ、とっても」
アルカディアの闘技ではない。
この『怪物』は、『殺し合い』を求めている。
『殺し合いを求めて、アルカディアへと至った』のだ!
「なあ、きっと
……
きみは、いつか、そうしてくれると思っているんだけれど」
『統一王者』が、笑っている。
「きっと、きっと、殺したいほどおれを憎んでね」
『怪物』は、この曇天に似つかわしくない、太陽のような笑みを浮かべた。
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