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千草莱
2026-01-12 16:06:33
9787文字
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弟子バロ
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【大逆転裁判】悪魔なんて怖くない
バロックに憑いた悪魔に振り回されたり、逆に振り回したりするお話。
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死神の正体が暴かれ、その存在とともに隠遁しようとしたバンジークスを
倫敦に留めたのは、誰よりも彼を憎んでいたはずの亜双義一真だった。
過去の過ちを許してはいないが、優秀な検事であることは認めているので
教えを乞いたい。そのためにオールドベイリーで戦い続けろと迫られる。
割り切りと決断の速さに驚いたが、意志の強さには玄真の血を感じた。
決して許されないからといって、償いをしない理由にはならない。
求められることがあるのならば応じよう。
多くの苦難を伴うことであろうとも。そう覚悟して承諾した。
それから約半年。
混乱する法曹界に振り回されながらも亜双義は着実に成長している。
初めてメインで担当した裁判を見事にこなした労いに、バンジークスは
彼を自宅でのディナーに誘った。
今、亜双義は下宿で一人暮らしをしている。朝夕のまかない付きだが、
多忙で不規則な仕事故、食べそびれることも多いという。
家賃から察するに、部屋の程も知れている。
不便はないのかと聞けば、揺れ続ける床と破れかけたハンモックに比べれば上等だと返され
それ以上何も言えなかった。
師としては、従者だった頃のようにバンジークス邸に住み込むことを提案したい。
しかし亜双義にとって嫌な思いのこもった場所でもあるだろう。
そのため、招くことすら躊躇していたが、先日ふとした会話の中で、
当時の食事を懐かしむ発言が出た。
それならばとディナーに誘ったところ、弾んだ声で快諾の返事を得た。
断られなくてよかったと思ったことに、バンジークスは我ながら驚いていた。
もし誘って断られたら落ち込むなんて、よほど楽しみにしているようではないか。
そんなに亜双義とのディナーが嬉しいのか?
答えが出ないまま、約束の日はきた。
久しぶりのバンジークス家の料理を堪能し、亜双義は上機嫌だ。
ディナーの前に調理場へ顔を出し、やっと美味しい料理の礼を
ちゃんと伝えられたことも嬉しかったらしい。
主という身分のあるバンジークスと違い、亜双義は使用人ともフラットに接する。
物言わぬ従者の頃でさえ、礼儀正しい仕草で彼らとの良好な関係を築いていたそうだ。
検事として、また英国貴族としての経験と知識は亜双義より持っているが
実体験として触れた世界の幅広さは亜双義には適わない。
たくましい生命力を体現するかのような気持ちのいい食べっぷりに
バンジークスの杯もすすむ。
食事を終えた後、バンジークスの私室へ移動し二人で晩酌をした。
亜双義から、父が好んだ酒について聞かれ、試しに飲んでみようという話になったのだ。
日本酒を思い出すと語っていた甘い香りとまろやかな口当たりのブランデー。
亜双義は、初めての酒を恐る恐る舐めるように口にする。
悪くない味だったのか、顔をぱっと明るし、一緒に飲みたかったと呟いた。
その一言は、バンジークスの胸を締め付ける。
詫びの言葉を探す間に、もっと父の話が聞きたいとせがまれた。
これまで避けていた玄真との思い出を口にした瞬間、彼を尊敬し、敬愛していた
頃の気持ちが蘇る。
興味深く聞いている亜双義の表情は、似ているところと違うところが半々だ。
思いのほか話が弾み、時間が過ぎていった。そろそろ下宿先へ帰るという亜双義に、
バンジークスは泊ればいいの一言がどうしても言えなかった。
玄関までの見送りは不要、と私室の扉の前で挨拶をして出て行った亜双義の背中を
しばし眺めてから扉を閉める。
遠ざかる足音に、急に部屋が広く感じた。
「さみしいか。相手してやろうか」
バンジークスの耳元に囁かれたのは、つい先ほどまで聞いていた声。
視線を声のした方に動かせば、亜双義の顔がにやりと笑っている。
「悪魔め!まだ私に憑いていたのか!」
咄嗟に荒れた口調で大声が出てしまった。
かつて兄の姿で度々現れては誘惑してきた悪魔が、今度は亜双義の姿になっている。
「お前が死んだように何も願わなくなったから出番がなかっただけだ。
やっと欲を取り戻したんだな。よかったよかった」
首に腕を絡ませ顔を寄せられる。目を合わせるのは危険だと本能が察知して
慌ててそらした。
「さあ、何がしたい?」
「おい、何があった!?」
扉が乱暴に開け放たれる音とともに、そっくりな声が重なった。
バンジークスの大声が廊下に響き、帰ろうとしていた亜双義の耳にも届いていたのだ。
目の前に広がるのは、自分と同じ姿をした男がバンジークスに迫っている光景。
駆け寄った亜双義は悪魔を掴んで引きはがすと、バンジークスとの間に入り、悪魔を睨みつける。
決闘でも始まりそうな勢いに戸惑うバンジークス、愉快で仕方ないと腹を抱えて笑う悪魔。
部屋の中は混乱に満ちていた。
「悪魔?そんなものが本当にいたのか」
亜双義をどうにかなだめてソファに座らせ、これまでのことを説明する。
心の奥底で会いたい人に化けられる、ということは伏せておいた。
亜双義の姿になっていることを追及されたくはない。まだバンジークス自身も
理解が追い付いていないのだ。
「騎士気取りで可愛いな。オレはそいつの願いを叶えたいだけだから
心配しなくていいんだぞ。なあ、バロック?」
不意に名前を呼ばれ、バンジークスはどきりとする。
この声で名前を呼びかけられるなど、本来はあり得ないだろう。
それなのに本物の声でないことに残念だと思ってしまった。
「悪魔の言うことなど信じられるか。今夜はここに泊まる。
あいつが悪さしないか見張ってやるからな」
バンジークスの肩を掴み、亜双義がまっすぐ見つめる。
視線が合うと、安心させるように朗らかな笑顔を見せた。悪魔のそれとは全く別物だ。
つい見惚れてしまったが、その発言内容に遅れて慌てる。
「なぜ、ここに泊まる必要があるのだ」
「本物が傍にいれば、悪魔に惑わされることはないだろう」
呆気に取られて何も言えないバンジークスをよそに、
亜双義は寝間着になるものを借りるぞ、と部屋を物色しだす。
悪魔はまた腹を抱えて笑っている。亜双義の行動どれもが想定外で面白いらしい。
気が済んだのか、笑い声の残響とともに姿を消してしまった。
片方はソファで寝てもでもいいのではとバンジークスが提案するも
ベッドに入り込まれたらどうすると押し切られ、一緒に寝ることになった。
幸い、主の恵体に合わせた大きなベッドは男二人並んでも余裕がある。
泊っていけばいいのにとは思ったが、同じ部屋、同じベッドとまでは願っていない。
バンジークスは落ち着かないまま体を横たえ、隣を見る。
亜双義は見張ると言ったわりにすぐ眠ってしまった。
下宿先のベッドとは違う、ふかふかで温かい寝床には抗えなかったのだろう。
初めて飲んだというブランデーの酔いもまわっているかもしれない。
規則正しい寝息を聞きながら、バンジークスは今起きていることを振り返る。
悪魔が姿を変じるのは誘惑のためだ。あの悪魔は心の奥の欲望を見て求める姿をとるという。
今までは兄の姿だった。会いたいという気持ちは確かにあったし、聞きたいこともあった。
理には適っている。
しかし、今夜は亜双義の姿で現れた。つい先ほどまで一緒にいた相手だ。
別れてすぐに会いたいと願うなんて、まるで
……
。
これはマズイ。非常にマズイ状況である。
バンジークスの頭の中で、警鐘が鳴り響く。
師弟関係となってからまだ半年、従者の頃を含めても一年に満たない。
それなのに、もうこんなに心囚われていては今後どうなってしまうのか。
彼はいずれ日本に帰る身。快く送り出せないなど師失格だ。
許されない罪を犯したのだから、せめて師としては正しくありたい。
決意をあらたに、目を閉じた。
悪魔との再会からひと月ほど経った。
亜双義はこのところ、バンジークスから距離を取られている気がしていた。
職務態度も、会話の様子も変化はない。問題は、身体の距離だ。
今までベタベタと触れ合っていたわけではない。
同じ書類を見る際に顔を寄せる、段差のある場所でどちらかが手を差し出す、
狭い馬車に乗れば肩が触れる、そんな程度の接触はあった。
それが最近は常に少し離れた位置にいる。近寄ると一歩下がられる。
亜双義としてはあのディナーの日、身心ともに近づいたと思っていたが、
バンジークスはそうではなかったのだろうか。
すぐにでも次のディナーか晩酌の誘いがありそうな雰囲気だったのに
そんな気配もない(料理人手製のランチボックスの差し入れは増えたが)
現状、弟子として何か困るわけではない。だがなぜこんなにも気になるのだろう。
何も変わらぬ風な顔で仕事をこなす師を、首をひねりながら眺める。
あの夜、再びバンジークスの前に現れた悪魔はそれから
頻繁に姿を見せるようになっていた。
うたた寝から目覚めれば、膝の上に乗って体を預けてくる。
成歩堂たちへの手紙の返事を書いていれば、デスク越しに手元をのぞき込んでくる。
晩酌のグラスを掲げれば、その向こうに佇んで微笑んでいる。
今夜は風呂からあがるとベッドに横たわっていた。
思い切り渋い顔で睨みつけると、悪魔はけたけた笑う。本人の声では聞いたことのない
高笑いに耳が慣れてきたことにうんざりする。
「失せよ。悪魔と共寝などしたくない」
「本物とはしたいんだろ?オレ相手なら遠慮いらないぞ」
小首をかしげて媚びるような目つきをする。さすが誘惑のための存在。
仕草も言葉も、心の奥の柔らかく弱いところを撫でてくる。
うかつに手を出した男の惨状を目の当たりにしていなければ
バンジークスとてどこかで心揺れていたかもしれない。
「まやかしなど空しいだけだ」
悪魔の手をひねり上げ、ベッドから追い出す。
いてて、とうめきながら宙に逃げ出した悪魔はバンジークスを見下ろして
口の端を上げた。
「その虚勢、いつまで持つか愉しみだ」
さっと姿を消した悪魔の笑い声の残響を振り払いながら、
温もりなど欠片も残っていない布団に体を滑り込ませる。
兄の姿で、本人が決してするはずのない言動や表情をされることに
腹が立っていたが、そのおかげで冷静になれたのも事実だ。
だが亜双義の姿でするそれらは、普段目にしているものとは違えど
決して彼がしないとは断言できない。
バンジークスの知る亜双義は、まだ断片的だ。
プライベートで親しい相手にどんな姿を見せるのかなど知らない。
知りたいと思うなんて、傲慢だ。
距離感を見誤るな、と自戒するほどに悪魔は楽しそうに心乱していく。
いっそ、恥を忍んで教会に相談に行くべきだろうか。
尽きぬ悩みを抱えながら、一人目を閉じる。
「もうディナーには誘ってくれないのか?」
仕事が終わり、帰り支度をするバンジークスへ亜双義が声をかけた。
変わらずとられる微妙な距離と気まずそうな態度にしびれを切らしたのだ。
バンジークスは視線を泳がせながら、言葉を探している。
「すまぬ。また招きたいと思ってはいるのだが
……
」
「何か不都合が?もしかして、悪魔と何かあったのか!?」
「何もしていない!」
「現れてはいるのか!また俺の姿で?」
一気に距離を詰めた亜双義は、バンジークスのマントの襟を掴んで
噛みつく勢いで問い詰める。
こんなに必死に聞きたくなるほど、最近の自分の行いは不自然だったのかと
バンジークスは反省した。うまく立ち回る能力は、法廷にのみ限られているらしい。
「ああ。
……
もし、酔って君を悪魔と間違えて迷惑をかけるなどあってはならない。
だから誘うことはできなかった」
くだらない、と亜双義は力なく呟いて襟から手を離す。
「全ては私の心が弱いせいだ。苛立たせてすまなかった。
もう気にしないでほしい」
淡々と告げる声に潜むものを探ろうと、亜双義はじっとバンジークスを見つめる。
その表情は、すぐに目深に被った帽子で隠されてしまった。
部屋に帰った亜双義は、何もする気が起きずそのままベッドに倒れ込んだ。
靴を脱いで床に放り、布団の上で大の字になる。
修繕の後が目立つ天井を眺めながらバンジークスとのやり取りを思い返した。
どうやら、彼がひとりでいる時に自分の姿をした悪魔が現れているらしい。
そしてそのせいで本物である自分は遠ざけられている。
「俺だって会いたいのに
……
」
怒りと悔しさでじわりと視界がにじむ。涙ぐむほど、あの人と過ごす時間を求めていたのか。
「会って何がしたいのだ。教えてごらん」
一人きりのはずの部屋に響く、自分ではない人の声。
今心に思い浮かべていた人そっくりだが、こんなに甘ったるい響きは知らない。
ぎょっとして声のした方を向けば、ベッドの縁にバンジークスが腰かけている。
亜双義はすぐに、それが変化した悪魔であることを察した。
「悪魔と契約をした覚えはないぞ」
起き上がって睨みつければ、相手はくしゃりと顔を歪ませる。
「契約は、命令をきいてやる約束ってだけだ。俺はどこにでも現れるし
どんな姿にだってなれる。会いたいと願う姿なら」
威厳をたたえた美しい顔が、品のない笑みを浮かべてる。
あの人はそんな表情をしない、と叫びたくなるのをこらえれば、
今の言葉にひっかかりを感じる。
「会いたいと願う姿に?なら今その姿なのは」
「お前がこいつに会いたいと願ったからだな」
バンジークスをこいつと呼んだことに突っかかっている場合ではない
「あの人の元に、俺の姿で現れるのは」
「そういうことだな」
よくできました、と悪魔が拍手をする。浮かべる笑顔は少しだけ、
気に入りの酒を飲んだ時の微笑みに似ていた。
悪魔と間違えて迷惑をかけたくない、とバンジークスは言っていた。
てっきり、きつい言葉をかけたり、手を跳ねのけたりすることだと解釈していたが
今の話を踏まえると、むしろ
……
。
急に黙ってしまってつまらないのか、悪魔は亜双義の顔をのぞき込む。
瞬間、かっと見開かれた眼光の鋭さに射抜かれた。
「今から会いに行く。キサマはバンジークスのところに現れて
俺が来ることを伝えろ。さすがにもう戸締りしてるだろうからな」
「悪魔をメッセンジャーにするのか!恐れ知らずめ」
「俺が何かするのを期待して顔を出したんだろ。応えてやるんだ。
そのくらいの役割は果たせ」
返事など待たずにベッドからおりて靴を履きジャケットを羽織る。
悪魔がこの後どうしようが、自分のやることは変わらない。
亜双義が飛び出しひとり残された悪魔は、顔を出したかいがあった、と
満足そうに呟いてから姿を消した。
屋敷の玄関へ駈け込んで来た亜双義を、寝間着にガウンを羽織った
バンジークスが出迎えた。悪魔はその来襲を教えてはくれたが
その目的については本人から聞けとしか言わなかった。
一体何事かと不安と混乱のまま、肩で息をする亜双義を私室へ連れて行く。
「俺と何がしたい。教えてくれ。全部叶えてやる」
部屋に入ると、バンジークスの肩を掴んで亜双義が叫ぶ。
「悪魔になんて頼る必要はない」
その言葉にバンジークスは青ざめた。悪魔がどうしてその姿になっているのか
彼に知られてしまったのだ。
睨むように見上げる亜双義の後ろに、同じ顔でにやにやしている悪魔がいる。
「つついたら面白そうだと思ったが、予想以上だったな」
悪魔という享楽的な存在。後先など考えるはずもない。
それが引き起こした全ては、人間であるバンジークスへ降りかかる。
さまざまな感情が押し寄せ気が遠くなり倒れそうだったが、
どうにか堪えて暖炉前のソファに体を沈める。
亜双義はソファのひじ掛けに腰をおろし、バンジークスの肩に頭を預けた。
サラサラと黒髪がバンジークスの頬を撫でる。
「で、俺の姿に何を願ったんだ?」
上目遣いで訪ねられ、バンジークスは困窮する。
向かい側、宙に浮かぶ悪魔も興味津々といった顔で答えをまっている。
自分の口で言うところが見たいらしい。
「何も願ってなどいない」
「でも、あいつが俺の姿で現れたからには、何か望みがあったんだろ?」
「
……
君の顔を見たいと、ふと思った程度だ」
何を白状させられているのか。大した理由もなく会いたくなるなど、
まるで彼に焦がれているようではないか。
恥ずかしさと恐ろしさで亜双義の顔を見ることができない。
「分かった。俺がここに住もう。そうすれば貴方が会いたい時いつでも顔を出せる。
悪魔の付け入る隙はない」
亜双義はぐいっとバンジークスの顔を掴み、自分の方を無理やり向かせた。
爛々とした瞳がバンジークスには眩しくて、その向こうにいる同じ顔をしたはずの
悪魔が霞んで見える。
勝手に決めるなと言い返したいが、この意志の強さは玄真譲り。
「無理に決めることはない。私が悪魔とどうあろうと、君には関係ないのでは?」
「貴方が俺に会いたいと思った時に会いたいのだ。本物の、俺が!」
偽物で満たされてたまるかと言い捨て、バンジークスの身体を抱きしめる。
「会うだけじゃない。貴方が俺としたいと願うことは全部したい。
まず何だ?また一緒に寝るか?」
「いったん落ち着きなさい。うちに住むのは構わない。
願いは
……
追い追い伝えよう」
返事を聞いた亜双義は振り返り、悪魔に勝ち誇った表情を見せる。
「もうキサマの出る幕はない。残念だったな」
「悪魔をダシに懇ろになるなんて、恐れ知らずどころか恐ろしい奴だ」
「それは光栄の至り」
バンジークスは亜双義に抱きしめられたままことの次第を眺めているしかなかった。
「今はそれでいいだろう。でもお前はそのうち国に帰るんだろ。
一人になったそいつのところに、お前の姿で誘ったらどうなるだろうな」
痛いところを突かれる。このまま関係を深めてしまえば、師として
快く見送ることなどできなくなるかもしれない。
それがバンジークスの葛藤のひとつだ。ぐっと眉間のヒビが深くなる。
「揺らぐな!俺の心は貴方を離すことはない。死が分かつまで
……
いや、死んだって貴方を離すものか」
「永遠を誓うのに、神じゃなくて
悪魔
オレ
の前でいいのか」
「大差ないだろ。大事なのは自分たちの意思だ。
誓いのキスでもしてみせようか」
亜双義がバンジークスの頬に手を添え、熱い視線を向ける。
死神の呪いから解き放たれたのもつかの間、今度は悪魔よりも
恐ろしいものに囚われてしまったらしい。
聞きなれた高笑いが響く中、バンジークスは、観念して目を閉じた。
その後
あれほど勢いづいていたのになかなか関係が進展しない二人を
悪魔がそれぞれの姿で誘惑して反応を愉しんだり
神出鬼没で変幻自在という悪魔の特性に目を付けた亜双義が
事件の捜査に利用したりと、奇妙な共存を続けている。
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