MN*B
2026-01-08 00:04:55
5137文字
Public 二次創作
 

無二夢に随に(むにむにまにまに)【偏ヒロ二次】

END2後。ヒーロー視点。ゲーム主人公が喋ります。
2ページ目は趣味の呟きです。カ二バ要素あり。

俺が世界から断絶させられてから、一体どれだけの時間が経ったんだろう。
分からない。だけど、もう耐えられない。――うんざりだ。

「いい加減にしてくれ……
「何?」
「いい加減にしろって言ってるんだ! 俺に何も求めないでくれよ!! ――俺に価値なんてない!!」

ヒーローは。ヒーローなら。ヒーローであれば。ヒーローらしく。ヒーローは、ヒーローは……そんなこと、〝俺〟に言わないでくれ!!

「世界を救ったことに価値があっても、それは俺にしか出来なかったからだ!」

目の前にいる男が「そうだよ、君はヒーローだから」と口を開く。だけど、そうじゃない!!

「〝俺じゃなくても良かった〟! そうだろ!? 俺以外に居なくなったんだ!! それだけなんだよ……!」
「そんなこと言わないでよ、ヒーローなら」
「うるさい!! 今の俺を見ろ! 俺を見てくれ!!」

俺のどこがヒーローなんだよ! なあ! なあ!?
どこか分からない場所に閉じ込められ、ヒーローらしくない行動も言動も思想も咎められる。それが世間の言う〝ヒーロー〟なのか!?
俺だって元々ヒーローなんて柄じゃなかったんだ。なのに、なんでこうなったんだ。

「俺を見てくれる人はもう誰もいない! でも、その人達の為に! ただそれだけで、俺は……!!」

世界を救いたかったんじゃない。愛してる人達の願いを叶えただけだ。

「ヒーローは君だ、そうなんだ。君がヒーローだ。世界もそう言ってるんだから」
「世界がどうこう言い訳するな! お前が俺をヒーローだと思い込みたいだけだ!!」
「でも、ヒーローになったのは君じゃないか」
「ちがう!!」

俺は頭を抱えて叫ぶ。その手を解いて、相手に向けて指をさす。

「お前は誰だっていいんだ! お前は〝俺じゃなくたって〟いいんだよ!! お前の理想をヒトに押し付けるなよ!!」

俺はお前のヒーローじゃない。

「だってお前が求めているのはヒーローなんだろ、俺じゃない!」

喚いて、呼吸が荒くなって、世界がグラつく。
酸素が薄くなった心地になり、床に膝から崩れ落ちる。そのまま膝を抱えて、何も見ないことにした。
しばらくして、人の気配がなくなったのに気がつく。俺は身動きもしないで、それなのにまた眩暈がした。

・・・
・・


……俺が怒鳴り散らしてから、どれくらいが経ったんだろう。
ここには時計もなくて、俺も『祈り』の名残で飢えや疲労から遠ざかっているから、何も当てにならない。
無為に時間が過ぎ去っていく。その最中、不意に、また人の気配がした。

こつりと、靴が床を叩く音が俺の前で止まる。顔は上げなかった。

「あの人はもう、ここには来ませんよ」

……知らない声だ。
少し頭を動かすだけでも、身体は錆びついたみたいに軋む。垂れ下がったままの前髪の間から見えたのは、久しぶりに目にする、あの男以外の人間だった。
俺は唇を動かして、「なんで」と喋ったつもりだったけど、声になったか自信がない。だけど相手は聞き取れたみたいだった。

「なんでって……気になるんですか? 貴方を監禁してた相手ですけど」

その人物はさも当然そうに俺に問いかけた。
コイツ……俺の見間違えや記憶違いじゃなければ、俺の戦いを後ろで見てた奴じゃないだろうか。
俺が尋ねたりする前に、相手は俺にまた問いを投げかける。

「もしかして、――見放された、捨てられた。って、思いました?」

相手は、逃げようと思えば逃げられますもんね。と、周囲を見渡してみせる。
最低限整えられた部屋とその周りに広がっている建物は、ヒーローである俺であれば容易に突破できる設備でしかない。そう言いたいんだろう。
……そうする気力もないんだ。放っておいてくれよ。

俺の気持ちなんて汲み取る素振りも見せずに、相手は部屋の中をウロつく。

「なんだかんだ絆されてました? すっとくなんちゃらってやつで。それとも、どんな形であれ、必要とされていたかったんですか。まあ、どうでもいいですけど」

そう言い切って、部屋に唯一ある椅子に断りもなく座り、肘掛けに肘をつく。そして、何を考えているのか分からない無感情な目でこちらを見下ろした。

「自分にはよく分からないんですよね」

何がだよ。
勝手に喋り出した相手を、俺は前髪の隙間からじっと見つめる。

「救いや理想って、必要ですか」

ソイツはつまらなさそうに、いっそ無関心なまでに「ヒトは、何もなくたって生きていけるのに。何もなくたって死ねるのに」と呟く。

「結局、求めてるから苦しむことになるんですよ。見返りを欲するから諦めきれないで、希望も抱いてしまうんです」

淡々と「……世界は、勝手に生きて勝手に死にますよ。個々人の関与なんて気にも留めずに」なんて、ソイツは語った。

『ヒーローなんて居ても居なくても、世界は回る』……現に俺がこうして閉じ込められていたって、誰も探しに来なかった。
……じゃあなんでコイツはここに来た。

「何しに来たんだ」
「頼まれただけです」
……それだけなのか?」
「はい」
「無責任な奴だな……
「責任なんて持ちませんよ。たかだか下っ端の人間にできることなんてありませんし。仕事への責任を持つのは上司の仕事でしょう」

俺も大概無責任な奴だと思うけど、コイツはまた別種だ。種類が違ってもクズはクズだけどな。
そういえば、俺が戦っているところにもノコノコ出てきて死にかけてた。自分の命に対しても無責任そうだ。……俺が言えたことじゃないか。
相手も同じようなことを考えていたのか、「思えば、あの時もそうでしたね」と話し出す。

「自分は仕事をこなしました。そしてこれは責任の有無に関係なく、すべてを完璧に遂行したとは思ってません」

相手は何かを思い返すように、ゆっくりとまばたきをする。
それから「仕事の出来クオリティや失敗をカバーをする為にも上下というものはあるんですから。間違った判断をしたとはこれっぽっちも思ってないです」と話し、俺に向かって軽く両手を広げてみせる。
……何が言いたいんだ。
俺の困惑も余所に、相手は構わず話を続けた。

「それが自分の意思だったかと言われると、どうでもよくて……なぜって、まあそれが自分の仕事でしたから」
……俺の情報をバラまくことがか」
「ええ。〝貴方〟の情報を拡散しろとの仰せで。その割に、伏せたり明かしたり半端なことをさせられましたよ」

俺の〝ヒーローらしい〟姿だけが世間に知れ渡っているらしいことは、あの男の口振りから察していた。
きっと俺のことを、〝陽華優介としての姿〟を知っているのは、あの男と目の前の人物だけだ。
そんな俺の考えを肯定するみたいに、相手はこくりと頷く。

「だから、また半端に関わる羽目になっているわけです。こうして頼まれたから関わりに来ました」

相手はそう言うと大きく息を吐いて、椅子の上で姿勢を崩した。自分の役目は終わったとばかりに。
それから、またゆるりとこっちを向いた。

「で。どうします?」
「どうするって……?」
「こっちに訊かないでくださいよ、ご自分のことでしょう」

こちらへ手を差し伸べるでもなく、ただ俺に声をかける。それだけ。
ヒーローである俺にも、ヒーローじゃない俺にも、関心がない。相手は本当に、外部からの働きかけのみで頼まれたからここにいる。

言うなれば、ただ目的をこなす為だけに、その目に俺を映していた。