Privatter+
Font
Serif
Sans Serif
Color
Light
Dark
auto
Font size
Large
Medium
Small
Language
Japanese
English
Sign in with Google
Sign in with ID and password
Account ID
Password
Sign in
Forgot password?
Create account
者
2026-01-03 18:05:10
3628文字
Public
紫白:短編
とても短いものまとめ2
帯に短し襷に長しでお話にも4コマにもならなかったものたちです。
1
2
3
4
また、次の機会に。(紫白)
ある日、紫鸞がぶらりと散歩をしていると、珍しく白鸞を見つけた。これまた珍しいことに白鸞はまだ紫鸞に気づいていない様子だったので、紫鸞はこっそりと後をつけることにした。少し早足だった白鸞は、大通りに出ると人々に歩を合わせた。のんびりと辺りを見回しながら歩いている。きっと機嫌のいい顔をしているのだろうな、と紫鸞は思った。白鸞は、人々が穏やかに日々を送っている様子を眺めるのが好きなのだと思う。確かに、ざわざわとした空気の中に笑い声が混じるのは、とてもいい。
そんなことを考えながら歩いていると、白鸞はほんの一瞬歩を止め、誰もそれに気づかないうちにまた歩き出した。気づかれたのだと悟り、紫鸞は諦めて白鸞に近づいた。挨拶をするでもなく隣に並ぶと、じろりと見られた。紫鸞はそれを笑う。それから二人でぶらぶらと街中を無言で歩いて、ふっと消えそうになった白鸞の腕を紫鸞が掴んだ。そのまま馴染みの飯店に行こうとしたが、たまたま中に韓当と甘寧が居るらしいことを察知し白鸞がものすごい顔をしたので、結局は紫鸞の屋敷へと向かった。
夕飯にはまだ早く、紫鸞の部屋で、白鸞は紫鸞が武器の手入れをする様子をぼんやりと眺めた。紫鸞は時々白鸞をちらりと見て、まだそこにいることを確認すると作業に戻る。西陽の差す部屋の中は見た目もなんだか暖かくて、窓の外では世界が太陽を惜しんでいた。微かな金属の音と、布の気配。その後ろに控える、油の匂い。夕べの終わりを告げる鳥の声が耳を撫でて、白鸞は一つあくびをした。紫鸞は、努めて白鸞から目を逸らした。このまま放っておけば、おそらく眠るだろう。衣擦れの音がした。きっと、頬杖をついたのだ。あと少し、あともう少し。
それからしばらくして、黙々と作業を続ける紫鸞の耳に、世の安寧を示す息の音が届いた。白鸞が眠りに落ちる時に剥がれ落ちる、警戒の欠片。ため息とは違う。ともすれば命が含まれてさえいそうな、静かな呼気。それがどのような形をしているのか、知っているのが自分だけであれば、どれほど誇らしいだろう。そんなことを考えるたび、記憶の中の朱和が笑う。そうだとも、この世の全てにおいて、紫鸞は彼女には敵わない。
紫鸞は、白鸞を振り返りそうになるのをなんとか踏みとどまって、彼の眠りが深くなるのを待った。今振り返っては、すぐに起きてしまう。あと百、いやせめて十数えてから。そう思ってぐっと耐えていると、廊下から足音がした。反射的に白鸞を振り返ると、ぱっちりと目が合う。落胆すべき事など何もないのに、少し肩が落ちてしまった。
「紫鸞どの、そろそろ夕飯
…
あれ、白鸞どの、いらしてたんですね。そろそろ夕飯の準備ができますよ」
ひょいと顔を覗かせた元化が、常と変わらない様子でそう告げて、そのまま廊下の奥へと消えていった。白鸞は、一つのびをして立ち上がる。紫鸞も、武器や道具を片付けた。夕飯を食べたら、白鸞は帰るのだろうと思う。でも、そろそろ、それを大変なことのように思わなくても良いのかもしれない。白鸞と会うことは、もう、以前ほどには難しくない。いつか訪れる最後の別れまでは。
「
…
言おうか迷っていたが」
部屋を出る段になって、白鸞がようやく口を開いた。紫鸞が先を促すと、白鸞は紫鸞に手を伸ばす。
「お前、ずっとこれがついていたぞ」
背中にそろりと触れられたかと思うと、白鸞は、どうやら紫鸞の服にくっついていたオナモミをつまみ取り、紫鸞に突き出した。三つほどあるそれを受け取るが、どこでくっついたのか、紫鸞には全く心当たりがない。
———
白鸞がつけたのか?
「違う。
…
私がやるならもっとたくさんつける。まあいい、元化に渡しておけ」
元化に渡せということは、これにもなんらかの薬効があるのだろう。あとで聞いておこう、と紫鸞は思った。もしそれが白鸞にも役に立つものならば、次は白鸞にオナモミをつけるのもいい。
「
…
変なことは考えるなよ」
紫鸞の様子から察したのか、白鸞は低い声でそう言い、さっさと廊下へと出ていった。その背を、オナモミを手にした紫鸞が追う。白鸞は待たない。紫鸞がすぐに追いつくと知っているのだ。紫鸞は、おとなしくオナモミを握った。手のひらがちくちくとして、これが夢ではないと告げている。
いつぞやの宴の席で、白鸞を酔い潰そうとした孫堅の気持ちが、ほんの少しだけわかるような気がした。
〜おわり〜
1
2
3
4
Reaction
If you make a mistake, you can cancel it by pressing the reaction.
Custom color
Reset color
広告非表示プランのご案内