もち粉
2026-01-01 00:38:19
12602文字
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千年先へのラブレター


カブミス ライシル
カブ33歳 ミスさんに対して、呼び捨て+タメ口
公私混同

ねえ、ミスルン。
いつか俺のもういない未来で、君は笑って言うよ。




人で溢れかえった謁見室は、静寂に満ちていた。誰かの衣擦れの音さえ、やけに大きく響く。

高窓から降り注ぐ光の筋が、冷たい空気に漂う塵をきらきらと輝かせた。
皆が固唾をのんで見守る中、現宰相ヤアドの声が響き渡り、後任としてカブルーの名が告げられた。

その瞬間、張り詰めていた空気が一変し、会場はどよめきに包まれた。誰もが驚きと興味の入り混じった目でカブルーに注目する。
彼はその視線を一身に浴びながらも、赤い絨毯の上を自信に満ちた足取りで、御前へと進み出た。

玉座に座すライオスは、王としての威厳をまといながらも、変わらぬ鷹揚な眼差しをカブルーに向ける。
王の承認を賜り、忠誠を誓うべく跪いた忠臣へ、ライオスが声を掛けた。

「カブルー、建国以来、ずっと支えてくれてありがとう。君がいなければ、俺は今ここにいられなかっただろう。
ヤアドの引退により、俺たちはますます大変になるけれど、君と力を合わせれば、必ず乗り越えられると信じてる。
これからも友として、そしてこれからは宰相としても、俺とメリニに力を貸してほしい」

飾り気のない言葉遣いは相変わらずだ。
だが、あのライオスに自信を持って「友」と呼ばれるほどには、カブルーは主君として、そして友として――長い年月をこの男と共に歩んできた。

ヤアドが盆に載せて差し出した黄金の印章を、ライオスが手に取り、カブルーに掲げた。
王権の象徴であり、宰相が発令するための法的根拠となる品だ。その意味を、カブルーは深く理解していた。

​「そなたに、メリニ国の印章を託す。この印章は、私の権威を代行し、国の未来を形作るための道具となる。決して私利私欲のために用いてはならない。
……心配はしていないけどね」

​両手で受け取った印章は、美しい細工が施された真鍮の小箱に納められており、真冬の石のようにずしりと冷たく重かった。カブルーはそれを捧げ持ち、再び深く頭を垂れた。

​窓の外から冬の陽光が射し込み、膝をついた絨毯の下からは石床の冷気がわずかに伝わってきた。

​「このカブルー、身命を賭して王とメリニの未来をお守りすることをお約束いたします」

​若き二代目宰相の誕生に、列席者たちから新時代の到来を予感する拍手が沸き起こる。
列席者の端には、誇らしげにこちらを見つめるミスルンの姿もあった。黒い瞳は歓声の中でも揺るがず、ただ一人、その男の誓いだけを見届けていた。


――カブルー三十三歳、新年のことである。